隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0565.新・事件 海辺の家族

2005年03月15日 | 脚本

 

新・事件
海辺の家族
読 了 日 2005/03/15
著  者 早坂暁
出 版 社 大和書房
形  態 単行本
ページ数 238
発 行 :日 1982/08/10
ISBN 4-479-54002-4

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

HKドラマ人間模様・事件シリーズの第1作の脚本。
このシリーズの脚本5本が5冊の本になり刊行されたのを買って、僕は2回くらいずつ読んだ。
以前買った本はミステリーの文献などを除くと大半は手放してしまったのだが、ドラマの再放送も望めなかったので、このシリーズは手元に取っておいたのだ。
しかし最近になって、NHKのBSとスカパーの362ch(ホームドラマチャンネル)で4作目の「ドクター・ストップ」を除く4作が放送された。今回は逃さず録画した上で、DVDにも焼いて残した。

 

 

さて、本作は、東京湾に面した浦安の漁業一家の物語で、当時湾岸道路建設等のための海岸の埋め立てに伴い漁業権を放棄した漁業従事者に多額の保証金が支払われた。
その金を目当てにバーやキャバレーなどの風俗営業が林立して、ホステスの女性たちも各所から集まった。
そのホステスに一家の主が入れあげたことが発端となり事件が発生する。
多分この当時は似たような事件は日常茶飯として発生していたのではないかと思われる。
このシリーズのドラマは、世相を色濃く反映したものが多く、そのためにビデオ化もDVD化もされなかったのではないかと思っている。唯一、世相とはあまり関係のない題材で作られたのが、「ドクター・ストップ」だった。
この作品だけは、出演者に人気俳優松田優作氏が入っていることもあってか、かなり前にビデオになってレンタル店にも並び、最近になってDVDも作られたようだ。

 

 

台となった千葉県の浦安は昔から東京湾に面した漁業の村として、山本周五郎氏の「青べか物語」にも描かれているが、馴染みのない人も多いことだろう。
細々と漁業を生業として、肩を寄せ合って海辺で暮らす家族。貧しいながらも幸せな毎日を送っていた人々が、近代化という波に押し流されて、一転してどん底に陥れられるという悲劇を描いたのがこの作品だ。
早坂氏の脚本の良さに上回る演技を示していたのが、祖父役の今は亡き笠智衆氏や、母親に扮した中村玉緒氏だった。このシリーズドラマでは、本作以外にも多くのバイプレーヤーが登場して、いぶし銀のような演技を見せていることも見逃せない。
どちらがどちらとは言い切れないが、そうした演技を引き出してもいる早坂氏の練られた脚本を改めて味わう。

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

最新の画像もっと見る

コメントを投稿