隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1181.土を噛む女

2011年09月12日 | 短編集
土を噛む女
読 了 日 2011/09/06
著  者 松田美智子
出 版 社 光文社
形  態 文庫
ページ数 233
発 行 日 2001/05/20
ISBN 4-334-73153-8

 

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の松田美智子氏というのは故・松田優作氏の奥さんだったことがあるとか、そんなことをどこかで読んだか聞いたかしたが、定かではない。
まあ、どうでも良いことだ。この本を手に入れたのは著者が別名で書いたという「EMエンバーミング」を読んで、本名?松田美智子名義で他の作品も書いているということなので、読んでみようと思ったからである。
まったくミーハーのミーハーたるゆえんだ。
表題作を含め6篇が収録された短編集で、すべてに「女」がついたタイトルを集めてあるのか、あるいは初出誌の小説宝石に、「女」のシリーズとして連載されたものかどうか、それは分からない。

 

 

いずれも読み終わってしばらくしてから、じわじわと「女」の怖さが伝わってくるようなストーリーで、どちらかと言えば僕の好みからは外れる傾向の作品だが、読後感はそれほど悪くはない。
特に最初の「二人の女がついた嘘」は、二重、三重の謎が隠されてミステリー味を濃くしている。また、次の「虚無を愛した女」はドキュメンタリータッチの作品で、逆境に落ち込まない男の力強さや、それを愛する女の冷静さが暗い話になりがちなところを救っている。
僕はとりたててフェミニストでもないのだが、かといって女性蔑視という立場からは遠いところにいると思っていた。だが、女性作家が描くある種の鬱屈した女性や、狂気を秘めた女性に対して、ちょっとした嫌悪感を抱くのは女性はかくあるべきという思いがどこかにあるのだろうか?
優しく寛容な女性を求めているのだろうかと思うと、少し気を付けなければ。

 

 

察室を訪れる女」はあっさりとした終末で書かれているが、その後の怖さを思うと精神科医の男性が気の毒な感じも。
最後の表題作に登場する好奇心の旺盛すぎる主婦も味方によっては怖い存在だ。近所の整骨院に通う女性の話だが、女性がいつも主婦の家の前に駐車して通院していることから、いろいろと動き回る主婦の行動が描写される。
いずれもミステリーと言えないような内容だが、読み終わった後、全体としてミステリーを読んだという気にさせる不思議な感覚を得られる作品群である。

 

初出誌(小説宝石)
# タイトル 発行月・号
1 二人の女がついた嘘 1997年3月号
2 虚無を愛した女 1996年5月号
3 女の嘘にルールはない 2000年6月号
4 赤い糸の女 2000年9月号
5 診察室を訪れる女 1998年2月号
6 土を噛む女 2001年3月号

 

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