隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1175.駅路

2011年08月20日 | 短編集
駅路
読 了 日 2011/08/14
著  者 松本清張
出 版 社 新潮社
形  態 文庫
ページ数 416
発 行 日 1965/07/30
ISBN 4-10-110907-9

 

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作短編集(六)という副題のついた短編集で、推理小説短編集としては第2集ということだ。松本清張氏の作品は長編短編を問わず、一時期憑かれたように読み漁ったのだが、もともと忘れっぽい僕のことだから、一部を除いては記憶のかなただ。
この短編集も月に一度いすみ市を訪れた際に立ち寄る、“古書店あずま”で、見かけて購入したものだ。2009年4月11日、フジテレビで放送された、松本清張生誕100年記念ドラマ「駅路」が、頭にあって目についたのだろう。ドラマは録画してDVDに記録してあるが、まだ見てない。いずれ原作を読んでからゆっくりと見ようと思っていたので、これを読んだら見ようと思っている。
著者の作品ほど映像化されているものは他にはないだろう、と思われるほどその数は多い。だが、僕は正味1時間半ほどのドラマなら、短編の方が向いていると思っているので、まだまだ映像化されてない短編作品も多いだろうから、それらが映像化されるのも楽しみに待つことにしたい。

 

 

表題作の他にも、ここに収められた短編はおそらく全て映像化され、テレビドラマになっているのではないかと思う。そんなことからも特にこの短編集は映像向きなのかもしれない。
そのうちのいくつかは僕も見ているはずなのだが、記憶があいまいだ。優れた作品は時代や制作者の解釈の違いなどによって何度も映像化される。人間心理の弱さのようなものが描かれる清張氏の作品は、時代が代わっても読者の共感を得るから、繰り返しドラマ化もされるのだろう。
短編集は何冊か読んできたが、本書は特に粒よりの作品が収録されているような感じがする。昭和32年から37年にかけて書かれた作品は、一番執筆活動が盛んな時だったのか?名作ぞろいである。

 

 

に最後の作品「陸行水行」は、中編ともいえる長さで、邪馬台国をテーマとした作品で、考古学者や、歴史学者をはじめとして論争がされてきた課題だ。作家の間でもいろいろと邪馬台国がどこであったかという問題に、一つの解答を示唆するような内容の作品が多く発表されている。
「魏志倭人伝」から始まる邪馬台国への関心は、はるかに遠く悠久の時代を遡る、日本人のロマンか?
同様に、「万葉翡翠」も過ぎ去った古の時代に思いを馳せるストーリーで、殺人事件を掘り出すわけではないが、ある種のスリーピング・マーダーの変形と思わせるような物語だ。そう思いながら読み進めたせいか、「巻頭句の女」にしても「誤差」にしても、眠れる過去から謎を掘り起こすような感覚を呼び起こすストーリーに思えてくる。
ミステリーを読んだという満足感を得られる短編集である。

 

初出一覧
# タイトル 紙誌名 発行月・号
1 白い闇 小説新潮 昭和32年8月号
2 捜査圏外の条件 別冊文藝春秋 59号(昭和32年)
3 ある小官僚の抹殺 別冊文藝春秋 62号(昭和33年)
4 巻頭句の女 小説新潮 昭和33年7月号
5 駅路 サンデー毎日 1960年8月7日号
6 誤差 サンデー毎日 1960年特別号
7 万葉翡翠 婦人公論 昭和36年2月号(影の車)
8 薄化粧の男 婦人公論 昭和36年3月号
9 偶数 小説新潮 昭和36年2月号
10 陸行水行 週刊文春 昭和37年11/25~38年1/6号

 

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