隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1012.告白

2009年08月03日 | サスペンス
告白
読 了 日 2009/08/03
著  者 湊かな え
出 版 社 双葉社
形  態 単行本
ページ数 268
発 行 日 2008/08/10
ISBN 978-4-575-23628-6

 

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の読書スタイル(というほどのものではないが)は、乱読だという事を前に書いた。 結果的には手当たりしだいということになるのだが、それでも大体は1冊読み終わるたびに、次に何を読 もうかと考える。
手元に本がないわけではない。
書店を訪れるたびに-大半は古書店だが-読みたいと思う本を探しては買ってくるから、未読の本がざ っと200冊以上はあるだろう。
ところが、全て読みたいと思って買ってきたにもかかわらず、あり過ぎると迷うのだ。
そうしては、またぞろ古書店を歩いて、新たに目に付いた本を買うという馬鹿なことを今までに何度も している。

反対に、読みたい本が次々と決まって、手持ちの本がスムーズに消化されることもあり、そうした時を 僕は、読み時と考えている。
今がまさにその時で、ここ1-2ヶ月余りは、読もうと思う本が目白押しで、読書の楽しさを満喫してい る。
これは、臨時収入のおかげで何冊か新刊本を買ったことも影響しているのかもしれない。

 

 

といった ところで、今回はその新刊本の1冊、先年本屋大賞を受賞したという連作短編集だ。
連作短編集なのだが、目次には第1章から6章までと長編のような体裁を整えている。下の初出一覧で わかるように、双葉社のミステリー誌「小説推理」に掲載された3篇に、3篇の書下ろしを加えた構成 で、一貫性を保っている。

「聖職者」
ある中学校でのホームルームの時間。
若い女生教師は学校のプールで水死体となって発見された自分の娘の話を始める。警察が事故死として 処理した事件は、実は事故ではなく故意に殺されたのだという。文字通り、告白であるかのような女性 教師の話は生徒たちに衝撃を与えるのだが・・・。
この最初の1篇で、本書のストーリーの先行きが予測される。なにか割り切れないような、あるいはのど に引っかかった小骨のように、気持ちの悪さ、後味の悪い余韻を残して、次のストーリーへと繋がる。
その女性教師への反論のような形で、一人の女子生徒の告白が、「殉教者」というストーリー。
そしてさらに・・・。

 

 

き下ろし部分の4話目(4章)からは一人称ながら、途中途中に小見出しのようなもの が入り、前3話とは多少違った印象を受ける。
1話ずつこうだ、という風に書けないのは次々と告 白する人物の繋がりにも、多少のミステリーが被さっているから、ネタバラシになる恐れがあるのだ。
告白というからには、大小の差はあれ罪の告白というくらいで、必然的に後味の良くない話になるのか ?
犯罪加害者の独りよがりや、被害者の屈折した心理は、誰でもが持ち合わせているのだろうが、このよ うな形で、見せ付けられると、いささか引いてしまう。
毎日のようにテレビや新聞紙上に現れる現実の犯罪事件に対しての、感覚が麻痺したような我々に警鐘 を与えているのか?
事件を少し角度を変えた裏側からみた物語か?

それにしてもせっかくの新刊本の話題作が、僕の好みから外れていたのはちょっと残念!

 

初出
(小説推理:双葉社)
# タイトル 発行月号
1 聖職者 '07年8月号
2 殉教者 '07年12月号
3 慈愛者 '08年3月号
4 求道者 書き下ろし
5 信奉者 書き下ろし
6 伝道者 書き下ろし

 

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