世界短編傑作集5 GREAT SHORT STORIES OF DETECTION |
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読了日 | 2008/9/17 | |
編者 | 江戸川乱歩 | |
出版社 | 東京創元社 | |
形態 | 文庫 | |
ページ数 | 372 | |
発行日 | 1961/5/12 | |
ISBN | 4-488-10005-8 |
戸川乱歩氏が世界中のミステリーの中から選びだした短編傑作を文庫5冊にまとめた中の1冊。順序から行けば第1巻から読むのが普通なのだが、僕の気まぐれと、他の理由から最初に5巻を選んだ。
前にも何度か書いてきたが、僕はアンソロジーは余り好んでは読まなかった。短編集なら一人の作家の短編集だけを読んできた。
ところがこうして目標を掲げてミステリーを読むようになってから、アンソロジーの利用価値が誠に遅まきながら判ってきたようだ。
ある意図の下に編まれたアンソロジーは、それまで知らなかった作家の作品を読むことによって、自分好みの作品が見つかることがある。
ということで、本書については、そのほかにベン・ヘクト氏の「十五人の殺人者たち Fifteen Murderers」が、他の所で紹介されているのを見て、読んでみたかったのである。収録されている9編のストーリーと、エラリー・クイーンの選んだ長・短編それぞれ10篇の解説の内、僕にとって初めての作家がそのベン・ヘクト氏を始め5人いる。いずれも巨匠の選び出した古典の名作だから味わって読んだ。
それでも好みから言えば、目的の「十五人の殺人者たち」と、レックス・スタウト氏の「証拠のかわりに Instead of Evidence」は群を抜いて興味深く読んだ。両方共に安楽椅子探偵だ。
特にベン・ヘクトの短編は、医学ミステリーで、その点では二重に僕の興味をそそる作品だ。十五人の殺人者というのは、いわゆる通常の殺人事件の犯人ということではなく、ニューヨーク市で秘密裡に開かれている医学の大家たちの、彼らがXクラブと自称する会合で、誤診などの医学的過誤で患者を死なせた事例が一人ずつ語られることを、称して殺人者と呼んでいるのである。 そうした内容にもかかわらず、ちょっとしたトリックと、後味の爽やかさが感動を呼ぶ。
もう一つの「証拠のかわりに」は、お馴染みの安楽椅子探偵ネロ・ウルフの事件簿だ(ネロ・ウルフとして多くに知られている探偵が、本作ではニーロ・ウルフと表記されているが)。
この作品は、収録作中一番長く90余ページを費やしているから中篇といってもいいだろう。
大人向けの玩具を製造販売している会社を経営している男とその妻が、ウルフの事務所にやってくる。男は共同経営者が自分を追い出そうとして、命を狙っているので、万一自分が命を落としたら、共同経営者の仕業であることを証明して告発してほしい、というのが依頼の内容だった。ウルフにとって気の乗らない依頼だったが、間をおかずに依頼人は葉巻に仕掛けられた爆薬で顔を吹き飛ばされるという無残な死に方をする。
美食家で、蘭を愛でる巨漢のニーロ・ウルフの仕事振りは・・・・。
最後に収録されたエラリー・クイーン氏の「黄金の二十」は、先に書いたように世界のミステリーから、書誌学者としても造詣の深いクイーン氏が選んだ長編10篇、短編10篇の解説は、ミステリーファンとして一度は読んでおきたい作品だ。
7月から取り掛かっていた自分のブログのデータ化は、目鼻がついたと思ってから2ヶ月もかかってようやく終わった。90%終わった時点で、少しずつ学習していたHTMLで、テーブルタグを使えば、少しは見栄えのするページが出来ることを知って、著者名一覧や、著者別作品一覧を、表組みに変えたりしたものだから、思いのほか時間や手間が掛かった。
実を言うと、その上に各記事の最後に表示してある著者名索引へのリンクを、画像を使ってボタンにする作業が残っているのだが、これはそのままでも用は足りるから、のんびりとやってゆこう。
これらのことは、僕の記事を読んでくれる方よりも、自分のためというほうが6割ぐらいの比重が掛かっている、のではないかと思っているが・・・。
# | タイトル・原題 | 著者 |
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1 | 黄色いなめくじ The Yellow Slug |
H・C・ベイリー |
2 | 見知らぬ部屋の犯罪 The Crime in Nobody’s Room |
カーター・ディクスン |
3 | クリスマスに帰る Back for Christmas |
ジョン・コリー |
4 | 爪 The Fingernail |
ウイリアム・アイリッシュ |
5 | ある殺人者の肖像 Portrait of Murderer |
Q・パトリック |
6 | 十五人の殺人者たち Fifteen Murderers |
ベン・ヘクト |
7 | 危険な連中 Dangerous Peaple |
フレドリック・ブラウン |
8 | 証拠のかわりに Instead of Evidence |
レックス・スタウト |
9 | 悪夢 Nightmare |
D・C・クック |
10 | 黄金の二十 The Golden Twenty |
エラリー・クイーン |
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