降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★「北海タイムス物語」を読む ⑰

2015年12月17日 | 新聞

( きのう12月16日付の続きです )

小説新潮に、増田俊也さん(50)の「北海タイムス物語」が連載されている。
僕は以前、北海タイムスと提携していた「日刊スポーツ北海道」に知人デスクがいたので、札幌の北海タイムスに何回か行ったことがあった。
というわけで、増田さんの青春物語社会人編ともいえる同小説に注目した――の第⑰回。


( 小説新潮2015年11月号 285ページから )
店内にはタイムス以外の客も大勢いたが、タイムス関係者のほうが薄汚れて見えた。
それは松田さんと猪之村さんというラフな東大二人組がいるからというだけではなく、夜勤が多く、着替える暇がない❶というのもあるのだろう。
「いやあ参った。いま組合の連中とまた喧嘩してきたんだけど、ほんとに参るよ、あのバケツの砂事件❷には」
町村総務局長が言った。
社員たちが、みなその話に加わった。どうやら入社式のときに組合幹部と思える人間と町村さんが言い争いになった件のようだ。
昨日の昼、札幌本社一階の女子トイレの個室で、砂がめいっぱい詰まったブリキ製のバケツが見つかったのだという。
そのバケツにはノートを破った紙が貼ってあり、赤いサインペンで
《 闘争用。この砂を撒け 》
と書いてあった。
会社支給品の赤いサインペンが使われていたことから、犯人は普段青いサインペンを使う社会部などの報道部系ではなく、整理部か校閲部の記者のいずれかではないか❸とささやかれているらしい。
しかしバケツが置かれていたのは女子トイレだから犯人は女子なのかというとそんなことはわからない。
赤いサインペンで書いてあるのも陽動攪乱だろうと言われているようだった。



❶夜勤が多く、着替える暇がない
朝刊発行だから夜勤が多いのだけど、「着替える暇がない」は、ちょっと……?
編集局内での「服装がキチンとしている度数」は、
①出稿部★★★★☆=報道部。取材などで人に会う機会が多いためだろう。髪も整え、白ワイシャツにネクタイのほか、ジャケットも着用している(もちろん、例外もいますけど)。
②校閲部★★★☆☆=意外(←失礼だな)だけど、白いシャツにネクタイ着用で、みぎれいにしている人が多い。
③整理部★★☆☆☆=社外の人に会う機会がまったくなく、勤務は内勤なので社内で完結している。あまり着るものにかまわない人が多い。
早い話、夏はTシャツorランニング一丁でもいいみたい(笑)。
*事実、僕の整理部先輩は、夏のころにサンダル、チノパン、Tシャツにコンビニ袋をさげて出社していた。後日、編集局長経由で整理部長に怒られていたけど(笑)。

❷あのバケツの砂事件
小説新潮の連載第1回にいきなり出てきた「バケツの砂事件」=11月26日付❹回見てね!
やっぱり、アレ系だった。

❸会社支給品の赤いサインペン……いずれかではないか
砂の入ったバケツ=写真
▽会社支給品の赤いサインペン=ぺんてるのサインペンか、ラッションペン。ほかにボールぺんてる、油性ボールペン、油性マジックインク(*)などと庶務課が大量購入している。
一時期、ペン軸に「◯◯新聞」と社名入りだったけど、最近は面倒なのか(笑)なくなった。
*おっと~「マジックインク」は登録商標。だから
マジック(インク、ペン)→フェルトペン
に言い換えましょう、と新聞用字用語集「記者ハンドブック」。

▽青いサインペン、赤いサインペン=小説の記述とおり、
出稿部=青色サインペン・ボールペン
整理・校閲部=赤色サインペン・ボールペン
でゲラに手を入れることになっているが、厳密ではない。字が分かれば何色でもいいので、
「赤いサインペンで書いてあるのも陽動攪乱」
につながるのだろう。
*「ノートを破った紙」がポイントか。
ふだん、整理部・校閲部は取材ノートは持ち歩かないのだ。


―――というわけで、続く。