降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★小僧!貸せ!=「北海タイムス物語」を読む (99)

2016年05月12日 | 新聞

( 5月11日付の続きです。
写真は、本文と関係ありません。中門補修工事に入った、奈良県斑鳩の法隆寺)

小説新潮に、増田俊也さん(50)の「北海タイムス物語」が連載されている。
僕は以前、北海タイムスと提携していた「日刊スポーツ北海道」に知人がいたので、札幌の北海タイムスに何回か行ったことがあった。
というわけで、増田さんの青春物語@新聞記者編ともいえる同小説に注目した——の第99回。
(小説の時代設定や登場人物のほか、新聞編集でつかう「倍数」「CTS」などの用語は随時繰り返して説明します)

【 小説新潮2015年12月号=連載③371ページから 】
権藤さんが僕を見た。
「おい、野々村。おまえ釧路の漁船沈没の原稿、出したか」
「あ……!」
「ばかやろう! 上行って探してこい!」
僕は制作局を飛び出して階段を駆け上がった❶。
編集局に飛び込み、整理部の机のところまで走って自分が座っていた机の上に散乱している紙をかきわけた。
あった——。
それをつかんで四階へ走った。
制作局に飛び込んだ。
社会面を組んでいる机に人だかり❷ができていた。
「ありました!」と叫んだ。
制作の人が「小僧、貸せ!」と怒鳴って僕から奪い取り、奥へ走った❸。
「もう遅い! 生原が間に合うわけないだろ!」
権藤さんが蒼白になって大声を上げた。



❶制作局を飛び出して……駆け上がった
小説主人公の野々村くんがいったん4階の廊下に出て、編集局の5階まで駆けていった——のだけど、こういう場合はやはり編集局と制作局を結ぶ螺旋階段があれば便利だねぇ(➡︎4月29日付第91回の❶参照してね)。
急降下螺旋階段。古いタイプの新聞社屋なら、必ず設置されていた。
小説当時(1990年)の北海タイムスビルは建て替えたようだ。

❷社会面を組んでいる机に人だかり
社会面を組んでいる大貼り台の周囲には、きっと下記の人たちが集まって騒然としていたのだろう。
▽整理部デスク(本来なら指揮をとるはずだけど、小説に言及がないので、当時の北タイにはいなかったのかも)
▽校閲担当者=ウロウロ……
▽制作局大貼り担当者=組み替え考慮中
▽制作局大貼りスタッフ=ウロウロ……
▽制作局デスク=カッカしている!
▽印刷局デスク=カッカしている!
▽紙型どりスタッフ=こりゃダメだと絶句
▽制作工程管理委員会のおじさん=激怒!
▽様子を見に来た印刷局スタッフ=激怒!
▽配送部のおじさん=こりゃダメだと絶句
……なんと10人以上が集まっていた、と思われる。

*あゝうるさい制作工程管理委員会
ニュースが入ったため、僕も降版が大幅に遅れたことがある。
注視のなか冷や汗をかきながら周りを見渡したら、10人ぐらいがいた。
船頭多くして何とやら。
「早く組めっ」
「なんか穴埋め記事ないのかっ」
「白いとこがあったって降ろせっ」
「整理部長はどーしたっ」
大声張り上げるばかりで、むしろ邪魔なんだよね(特に、制作工程管理委は!www)。


❸制作の人が……奥へ走った
「小僧」と言ったのは、かなりの年配者か。
野々村くんが持ってきた生原(なまげん=自社記者の手書き原稿)をつかみ、おそらく入力センターに走っていったのだろう。
20~30行ぐらいだったら(ベテランパンチャーが)2分あれば活字化できるけど、とにかく急ごう!


———というわけで、続く。

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