降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★校閲さ~ん!=「北海タイムス物語」を読む (98)

2016年05月11日 | 新聞
( 5月10日付の続きです )

小説新潮に、増田俊也さん(50)の「北海タイムス物語」が連載されている。
僕は以前、北海タイムスと提携していた「日刊スポーツ北海道」に知人がいたので、札幌の北海タイムスに何回か行ったことがあった。
というわけで、増田さんの青春物語@新聞記者編ともいえる同小説に注目した——の第98回。
(小説の時代設定や登場人物のほか、新聞編集でつかう「倍数」「CTS」などの用語は随時繰り返して説明します)

【 小説新潮2015年12月号=連載③371ページから 】
「あと一本来てない! 釧路の漁船沈没のやつ! 一時間以上も前に生原で出してる❶ぞ! どこかに紛れてないか!」
権藤さんが叫んだ。
「漁船沈没の生原稿! 校閲! 誰か見てないか!」
「見てない!」「俺も見てないぞ!」「誰か見てないか!」
校閲部の人たちが声を上げている
❷。
「知らん! 校閲には来てない!」
「来てないってどういうことだ!」
「来てないものは来てない!」
「コンベアに引っかかってないか!」
「いま見てきた! 何もない!」
権藤さんが僕を見た。
「おい、野々村。おまえ釧路の漁船沈没の原稿、出したか」
「あ……!」
「ばかやろう! 上行って探してこい!」
僕は制作局を飛び出して階段を駆け上がった。


❶生原で出してる
手書き原稿が、生原(なまげん)。
共同通信の配信モニターではなく、自社記者が書いた原稿(書き原=かきげん)を入力センターに出している、の意味。
社会面担(めんたん=紙面編集担当者)の権藤くんは、1時間以上も前に出稿していると叫んでいるから、確かに打ち返しが無いのはおかしい。

*打ち返し(うちかえし)
整理部が出した生原は入力センターで整えられてホストコンピューターに入る。
その後、モニターとなって整理や校閲の端末から出てくるのが、打ち返し。
(新聞社の製作システムによって工程は異なります)
入力に要する時間は、手慣れたパンチャーなら6行(13字詰め)30秒と聞いた。
だから、1時間は変。
コンベアのどこかに挟まったままか落ちたか……いずれにしても、こりゃ大変だ。


❷「見てない!……声を上げている
アレレ?と感じた箇所。
新聞社によっては、校閲態勢がいろいろある。
①はじめは全員初校
担当面にかかわらず、出てきたゲラ初校を部員全員でチェック
そして、降版時間が近づくと担当面のゲラをあらためて各面担が再校する
(複数の目で見るから見落としが少なくなる利点があるけど、ルビなど面の記事表記に統一がなくなる)
②はじめから面担校正
面担校閲が、はじめから担当面のゲラだけチェックする=自分の担当面しか見ない
(初校から再校まで1人で見るから、見落としが出るリスクあり。
さらに、掲載記事の本数によっては暇~な校閲さんと、てんてこ舞いな校閲さんが出るのでブツブツ言う人もいるwww)
——があった。
北タイ紙校閲は、①のやり方だったのだろうか。

————というわけで、続く。

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