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「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★整理部野球大会なのだ=「北海タイムス物語」を読む(142)

2016年07月21日 | 新聞

(7月18日付の続きです。写真は、本文と直接関係ありません)

小説新潮に、増田俊也さん(50)の「北海タイムス物語」が連載されている。
僕は以前、北海タイムスと提携していた「日刊スポーツ北海道」に知人がいたので、札幌の北海タイムスに何回か行ったことがあった。
というわけで、増田さんの青春物語@新聞記者編ともいえる同小説に注目——の第142回。

【小説「北海タイムス物語」時代設定と、主な登場人物】
1990(平成2)年4月中旬。北海タイムス札幌本社ビル。
▼僕=北海タイムス新入社員・野々村巡洋(ののむら・じゅんよう)。東京出身、早大卒23歳。整理部勤務
▼萬田恭介(まんだ・きょうすけ)=北海タイムス編集局次長兼整理部長。青学英文科卒45歳
▼秋馬(あきば)=眼鏡をかけたガニ股男。空手を愛する北海タイムス整理部の武闘派


【 以下、小説新潮2016年2月号=連載⑤ 341〜342ページから 】
秋馬さんが険しい顔でノブを握っていた。
「てめえ、なんで早く開けねえんだ」
横から誰かの手が伸びてきて、ドアが大きく開かれた。
もじゃ頭の金巻デスクが笑顔で立っていた。
「おはよう。六社対抗❶朝野球の開幕戦なのだ❷」
そういえば昨日言っていた。
「あ、僕は……」
「若いやつは全員参加なのだ❷」
「でも……」
秋馬さんが腕を引っ張った。

(中略)
これでは拉致だ。
整理の仕事だけでもうんざりしてるのに、どうして遊びにまで付き合わなければならないのか。
タイムスの人たちに巻き込まれ、最悪のシナリオに引きずり込まれていく……。
早朝の札幌は凍えるほど寒かった。玄関前に見たことがないような古い小型セダンが停まっている❸。
金巻さんがぐふふと笑いながら
「開幕ダッシュだ、五倍ゴチ。
古豪復活、脇見出し。
タイムス十四年ぶりの胴上げだ。急げよ急げ、六倍ゴチ」
とわけのわからないことを言いながら運転席に乗り込んだ。パタンと安っぽい音でドアが閉められた。



❶六社対抗
在札幌の日刊6紙の整理部対抗野球リーグ。
▽北海道新聞
▽道新スポーツ
▽北海タイムス
▽朝日新聞
▽読売新聞
▽毎日新聞
……「6紙」?「6社」? 道新と道スポは別会社だったのかしらん。

❷開幕戦なのだ/全員参加なのだ
「ナニナニなのだ」。
僕は椎名誠さん(72)が初期に書いていた昭和軽薄体から来ていると思ったけど、やはり「天才バカボン」のパパからなのだろーか、なのだ。
*椎名誠さんの「のだ」
『哀愁の街に霧が降るのだ』『かつをぶしの時代なのだ』(1981年)——このころけっこう流行ったのだ。

❸停まっている
校閲部の要確認センサーが鳴るところ。
新聞社のルールブック「記者ハンドブック・新聞用字用語集第13版」では〈停〉は漢字表にない音訓。

とまる・とめる
=停→止(一般用語。停止)足止め、息を止める、射止める、受け止める…………

漢字「止」か、平仮名にしましょう、としているけど、著作物なのでこのまま行ってください。

————というわけで、続く。

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