降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★『トリダシ』の新聞社を読む( 13 )

2015年07月30日 | 新聞

(7月25日付の続きです)
スポーツ新聞社の舞台裏を活写した、本城雅人さん(49)の最新小説『トリダシ』(文藝春秋、本体1,750円)=写真

◆本城雅人(ほんじょう・まさと)さん
1965年、神奈川県生まれ。
明治学院大経済学部卒業後、産經新聞社に入社。産經新聞・事件担当を経て、サンケイスポーツ紙でプロ野球ヤクルト番→巨人番→競馬記者など20年スポーツ記者生活。
米留学でスポーツマネジメントを学び帰国後、野球報道デスク、競馬雑誌編集長を歴任。
退職後は文筆業に専念、2009年『ノーバディノウズ』が第16回松本清張賞候補になり、選考委員の称賛により刊行された。
2010年、同作で「サムライジャパン野球文学賞」大賞受賞。
『スカウト・デイズ』(PHP文芸文庫)、『ビーンボール/スポーツ代理人・善場圭一の事件簿』『球界消滅』(文春文庫)、『嗤うエース』(幻冬舎文庫)、『贅沢のススメ』(講談社)など多数。
同小説は、
「四の五の言ってねぇで、とりあえずニュース出せ!」
を口癖にしている、東西スポーツ・鳥飼義伸(とりかい・よしのぶ=44歳)野球部デスクが主人公の連作集。
第2話「コーチ人事」から、編集局や整理部に関係する描写に注目してみた(下記、太字は同書本文から引用しました)


江田島はデスク席に立てかけてあるクリアファイル❶を取り出した。そこには三人のデスクの当番表が挟まれている。
「当」が当番デスク、「S」はサブデスク、「早」は早版、「休」は休み❷……やはりこの日は石丸のところに「当」と書かれている。
ここ数年、江田島にもっとも目をかけてくれているデスクが石丸❸だった。さすがにきょう、三塚のネタを書けるだけの材料を持っていなかった。明日、明後日は皆川という一番若いデスクで、その翌日からは鳥飼が二日間連続になっている。書くとしたら明後日が期限のようなものだ。
「なにコソコソしてんだ」
背後から声がして、体が跳ね上がった。

(69ページから)


❶デスク席に立てかけてあるクリアファイル
一般紙、スポーツ紙問わず、どこの新聞社編集局も同じ(笑)。
整理部の場合は、面担(紙面担当)を記載したローテ表を〝整理部連絡帳〟(←なんだか小学生みたい)に添付して各自がコピーしている。
ローテ表を出しても、休みはいつなのか何面を担当なのか忘れてしまうアッパラパーなヤツ……ではなく、たまに失念する部員がいるので、
製作局と共有する翌日付紙面割ボードに、重ねて
「◯面担当=安倍晋三」(仮称)
を記載する。
*お断り=ローテ表などは新聞社によって異なります。
*紙面割ボード=面担のほか、広告段数も記入してある。
翌勤務日の紙面を確認した部員が、
「ひゃあ~、明日はノーズロかよぉ~!ひぇ~!」(ノーズロ=広告ゼロ段。広告なし)
と悲鳴を耳にするけど、ローテ・デスクは気にしません(笑)。

❷「当」が当番デスク……「休」は休み
以前も書いたとおり、新聞社によって多少異なるけど、だいたい下記の感じ。
▽当番デスク=出稿部メーンデスク。プロ・デスクとも。
フロントから最終面までの記事出稿メニューをチェックし、紙面構成を考える(翌日付の)編集長。
▽サブデスク=出稿部のサブデスクで、スポーツ紙の場合、メーンデスクが1~4、5面(プロ野球など)あたりが守備範囲で、
アマチュアスポーツなどをサブが担当する場合が多い。
▽早版デスク=ギャンブル出稿デスク、ゴルフ出稿デスクらのことかな。
早版だから帰れると思ったら大間違いで(笑)、だいたいナンダカンダで午前0時ごろまでは在社しているよーだ。

❸ここ数年……石丸
この小説の舞台となっているサンスポ……じゃなくて「東西スポーツ」の常識人的&真っ当なデスクに設定されている。
一方、「鳥飼」のモデルは1人ではなく、2人の実在したサンスポデスクの合体イメージという。