降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★『トリダシ』の新聞社を読む❹

2015年07月11日 | 新聞

(きのう7月10日付の続きです)
スポーツ新聞社の舞台裏を活写した、本城雅人さん(49)の最新小説『トリダシ』(文藝春秋6日発売、本体1,750円)=写真

『トリダシ』は、
〝とりあえずニュース出せ!〟
を口癖にしている、東西スポーツ・鳥飼義伸(とりかい・よしのぶ=44歳)デスクが主人公の連作集。
鳥飼は部下に厳しいが、編集上層部にも平然と楯突くため煙たがれていた。
また、球団人事など数々の大スクープをものにしていたので、他紙からは〝影のGM〟とも言われていた。
(小説の舞台となっている東西スポーツは、同じ社屋の別フロアに一般紙「東西新聞」がある設定なので、アノ新聞社がイメージかも、笑)
第1話「スクープ」から、編集局描写に注目してみた——(太字は同書本文から引用しました)。


去年の暮れに親会社の東西新聞の社会部から出向してきた❶工藤は、スポーツ取材の経験もないのに、いきなりスポーツ新聞の花形である東都ジェッツ担当のキャップに抜擢された。
(中略)
だがいくら人柄が良くても、一面を埋められなければ評価されない❷のがスポーツ紙である。ジェッツの優勝の望みが断たれた九月に入ってからは「おまえが悠長なことを言ってる間に全部決まっちまうぞ」と毎日のようにデスクからプレッシャーをかけられている。
「工藤が言うもう一人って、うちの評論家じゃないよな?」
大渡が聞いた。
「違うます」
「なら潰れようが知ったこっちゃねえだろ」
「今朝のスポジャパよりビッグネームか?」
今度は整理部長が
❸会話に入った。

(12ページから。僕注・大渡=編集局長)


❶親会社の東西新聞……出向してきた
この『トリダシ』の底流には
「スポーツ新聞をなめんじゃねぇ!
お上品に天下国家を論じる一般紙より、はるかに読まれているぜ、俺たちは!」
という反骨イズムが流れている(気がする)。
新聞ヒエラルキーは、あると思う。特に、一般紙とスポーツ紙を同時に発行している新聞社では……(➡︎この格差問題をズバリ取り扱ったのは、第四話。後日、書こうかな、と)。

❷一面が……評価されない
一面は〝フロント1面〟のこと。
これは、整理部にも同じことが言える。
(大きな声では言えないけれど、他紙に移籍しよーと考えている、あなた!
だいたい面接前に人事部長や整理部長から
「あなたのつくった紙面のコピーをお持ちください。フロント1面なんかあれば、数枚お願いいたしますね」
と言われることがなきにしもあらずです!
将来、転社希望の整理記者は少しずつ自信作のコピーを、社の大型コピー機で取っておきましょうね、笑)

❸「今朝のスポジャパ……整理部長が
他紙よりビッグネームか? と聞いたのは整理部らしいところ。
本城さん、表現が細かい。
整理部は、フロント1面の右最上段を〝一等地〟としているので、インパクトのある文字が躍っていれば、それだけで即売売り上げアップなのだ。