降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★『トリダシ』の新聞社を読む❻

2015年07月14日 | 新聞

(きのう7月13日付の続きです)
スポーツ新聞社の舞台裏を活写した、本城雅人さん(49)の最新小説『トリダシ』(文藝春秋6日発売、本体1,750円=写真)。

『トリダシ』は、
〝とりあえずニュース出せ〟
を口癖にしている、東西スポーツ・鳥飼義伸(とりかい・よしのぶ=44歳)デスクが主人公の連作集。
鳥飼は上からの圧力や取材妨害から
「俺たちデスクは、部下を守るのが仕事だ」(234ページ)
と男気のある人物に設定されているが、風体、勤務態度はあまりよろしくないよーで……。
第1話「スクープ」から、編集局描写に注目してみた(太字は同書本文から引用しました)。


社に上がってきた記者はまず当番デスク❶に内容を報告し、行数の指示を仰ぐ。
石丸は、「早めに頼むな」と言って、二人に行数を告げた。
当番デスクの向かい側、サブデスク席には鳥飼義伸が座っている。
鳥飼は当番デスクの日以外は、報告に来る記者には興味も示さず、机の上に足を載せ、夕刊紙❷を読み耽っている。社内でこんな偉そうにしているのはこの男くらいだ。
ベテラン記者に言わせると、昔の新聞社は鳥飼みたいな非常識な記者ばかりだったという。
足を机の上に載せるどころか、机の上の原稿用紙❸に燃え移ったら大変だと、タバコを吸っても机の灰皿は使わず、床に捨てて消す❹のが当たり前だったそうだ。

(9ページから)


❶社に上がってきた記者はまず当番デスク
以前も書いたけど、翌日の紙面編成をする「編集長」「メーンデスク」「プロデスク」のこと(社によって呼び方さまざま)。
サンスポ……ではなく「東西スポーツ」では、当番と称しているよーだ。

❷机の上に足を載せ、夕刊紙
「夕刊紙」は社内ガラ刷りの夕刊フジ(かな、笑)。
もちろん東スポ、ゲンダイもチェックしているはずで、ストーブの時期はベタ記事に意外なネタがある。

❸机の上の原稿用紙
パソコン入稿・編集になっても、ザラ紙をつかった原稿(出稿)用紙は必需。
大量につくって余ってしまった、以前の15~13字どりのマス目が入った原稿用紙なのかもしれないね。

❹机の灰皿は使わず、床に捨てて消す
同じこと、僕も聞いたことがある。
コンピューター編集(CTS)になる以前は社内喫煙全面可だったので、整理部を含め各机にはアルミ製のペラペラ灰皿がおいてあった(ただし、局長席はガラス製だった)。
当時は、出稿・見出しなどすべて紙伝票だったため、タバコの火の消し忘れからゲラなどに燃えうつることがあった。
だから、古手の記者は床に捨てていたのじゃ。わはははは、いい時代じゃったのぉ——と局の古老に聞いた(笑)。
まるで、バーでピーナツの殻を床に捨てていたのと同じだったよーだ。
(ちなみに、CTS以前は編集局の大きな柱のそばには必ず水がたぷたぷ入ったペンキ缶がドーンとおいてあり、吸い殻がたまった灰皿を各自で捨てていた、という)