Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」J・K・ローリング著(松岡佑子訳)静山社

2008-10-07 | 児童書・ヤングアダルト
「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」J・K・ローリング著(松岡佑子訳)静山社を再読しました。

思春期に差し掛かったハリーは常にいらだっていることが多く、家にとじこめられたシリウスのいらだちともあいまって全体的にナーバスな雰囲気の巻。
チョウとの初恋も天国と地獄をくりかえしなかなかハリーの心には平穏が訪れません。前巻ではハーマイオニー、今巻ではハリー、次巻ではロンと、順番に恋の話が訪れるのも面白い。ハーマイオニーは女の子だけあって、今回は少しお姉さん的にハリーにアドバイスをします。

そして今回登場するアンブリッジは最低最強の女。
ダーズリー一家を超える最低キャラがいようとは・・・。
ハリーに血で書き取りをさせ、磔の呪文を使おうとするなんて最低も最低。
しかしアンブリッジにきぜんとした姿勢で立ち向かうマグゴナガル先生はかっこいい。ふたごの沼の魔法を少しだけ残したフリットウィック先生といい、ホグワーツの先生は生徒に対して愛情深い先生が多いですね。

ネビルが聖マンゴ病院でハリーたちとばったり会う場面はもらい泣きしてしまいました。特にネビルのお母さんがお菓子の包み紙をネビルに渡し、それをそっと自分のポケットにしまう場面。病床にいる両親の姿を生まれてからずっと見続けていたネビル、辛いだろうなあ・・・。
今巻ではハリー以上にネビルの成長が著しく思えました。あと、ジニーも。

そして今巻は初めてのスネイプ先生とハリーの個人授業もあります。
ハリーがいじめられてきた過去をのぞいたスネイプ先生はどんな気持ちだったのか。セドリックが死んだ場面を実際にのぞいたスネイプ先生はいつもより感情的になります。きっと15歳にしてすでに背負っているハリーの重い試練を再認識したのではないでしょうか。
ハリーは今までもこれからも、誰も歩んだことのない運命を生きている。
それは死食い人であったけれどダンブルドアに与した唯一の人間であるスネイプ先生も同じことかも。

しかし、憂いの篩でのぞいたジェームズとシリウスがみんなの面前でスネイプ先生をつるし上げにした場面は本当にかわいそう。しかもリリーにかばわれることになって、みっともないパンツ見られて・・・どれだけみじめな想いだったのかと思うと胸が痛かったです。

今回胸がすいたのはロンが優勝杯をとったところと、ふたごが去った場面!
かっこよかった。

最後聖マンゴ病院から帰ってきたマグゴナガル先生に勢いよくすすみ出たスネイプ先生の姿がなんだか可愛いかった。
自分が学生時代に教わった先生は今は同僚という立場であっても、いつまでも頭の上がらない頼もしい恩師なのでしょう。
そんなマグゴナガル先生の信頼を失う立場にたたされることになったスネイプ先生、これはまた次巻へつづく・・・。



「魔女の鉄鎚」ジェーン・S・ヒッチコック著(浅羽莢子訳)角川書店

2008-10-03 | 外国の作家
「魔女の鉄鎚(てっつい)」ジェーン・S・ヒッチコック著(浅羽莢子(あさばさやこ)訳)角川書店を読みました。
恩田陸さんが「「ダ・ヴィンチ・コード」のような歴史と宗教をめぐるミステリー」とおすすめしていたので、興味をもって読んでみました。
老外科医オコンネル博士は殺害され、稀覯本『魔法の書』が消えていました。
謎に満ちた父の死の真相究明を決意したビアトリスは、十五世紀に実在した魔女裁判の実践書『魔女の鉄鎚(てっつい)』に遭遇します。彼女の身辺に忍び寄るさまざまな影。魔女、教会、都市のカルト教団、ヴァチカンの秘密図書館。
やがて、ビアトリスは身の毛もよだつような真実に近づいていきます。
原題は「マレウス・マレフィカールム」。意味するところは「魔女への鉄鎚」。実在する本であり、その名のとおり、中世では魔女を見つける手引書、そして魔女をどのように裁くかの法律書でもありました。
私は「ダ・ヴィンチ・コード」よりは黒魔術の古書をめぐる殺人という意味で「ナインスゲート」を連想しました。

本は黒魔術の内容とは別に新たな秘密をかくしているのですが・・・これは読んでのお楽しみ。
ビアトリスと元夫のスティーブンスが取り交わす男女の性の違いの会話など、あらすじ以外にもふむふむとうなずいてしまう考察もあります。
協会の真の姿が現される場面、もしこれが自分の身に起こったら・・・と思うと本当にこわかったです。
しかしビアトリスは謎を追ってどんどんたくましくなっていきます。
やっぱり・・・あらゆる女性はみんな、魔女なのかも・・・。