Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「ウェイクフィールド/ウェイクフィールドの妻」N・ホーソーン/E・ベルティ著

2006-02-02 | 柴田元幸
「ウェイクフィールド/ウェイクフィールドの妻」N・ホーソーン/E・ベルティ著(柴田元幸/青木健史訳)新潮社を読みました。
「ウェイクフィールド」は19世紀の作家ホーソーンの有名な短編。
何の理由もなく妻を残して家を出、20年間隣の通りに住み続けた夫。
そしてまたふらりと妻の待つ家に帰ってきたウェイクフィールドという男の話です。
その短篇を元に、妻の視点から物語を描いたのがE・ベルティの「ウェイクフィールドの妻」です。
結論から言うとどっちも面白い!!
元小説のウェイクフィールドも、自分が主導権を握って妻を観察しているはずが、自分自身の生活がなくなり、大切なものをなくし大切な人を失望させ、自分でもなぜこんな生活を続けているのかわからない・・・という不条理さが面白いです。
この小説はオースターの「幽霊たち」にも影響を与えたそうです。
「ウェイクフィールドの妻」は妻の含蓄のある日記の言葉がよい。
「人は誰しも親(庇護する側)か子供(守られたい側)なのだ」などなど。
でも夫がいる身とはいえ、家を出て行ってしまったのにかたくなに牧師のプロポーズを受けないくだりはちょっと疑問でした。夫が死んでいる確信がない限り二夫にまみえずという時代だったのかな。
なんだか夫も妻もどちらも可哀想に感じました。