Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「蟋蟀(こおろぎ)」栗田有起著(筑摩書房)

2008-10-15 | 日本の作家
「蟋蟀(こおろぎ)」栗田有起著(筑摩書房)を読みました。
生き物を表題にした10の短編集です。
手を握ったひとの未来が見える占い師「サラブレッド」。
研究室に大きな水槽を持ち込んだ優秀な秘書「あほろーとる」。
夫の出世で住むことになった社宅の不思議なサークル活動「猫語教室」。
栗田さんらしい、風変わりで独特のユーモアがある作品が集まっています。

今までの栗田さんの作品は「ありえないけど、あったらいい」という奇妙なお仕事を描いた作品が多かったと思います。でも本作は今までより、より現実的、現実にあるかも?と思える作品が多かったです。
その分ちょっと独特の「ぶっとぶ感覚」には欠けるかも。

その中でも私が面白いと思ったのは「さるのこしかけ」。
雷に打たれて死のう!と山伏のコスプレまでして山に出かける主人公、笑える。そして最後は胸にぐっときます。
ちょっと村上春樹さんの「品川猿」を思い出しました。

それから「鮫島夫人」。
主人公と鮫島くんのふたりの友情に包まれた結婚生活。鮫島くんの乙女っぷりがよい。奇妙な人間関係なのですが、なんだかほのぼのとした読後感の作品でした。

「いのしし年」は同じ女性としてなんだか身につまされました。
特に「私に課せられたのは、上に登るためではなく、なるたけ下へ落ちないための、努力だけだ。」というくだり。
それにしてもあの美しい女性はなんだったのかなあ・・・。



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