「ナイフ投げ師」スティーヴン・ミルハウザー著(柴田元幸訳)白水社を読みました。
緻密な描写で魔法のように風景を切り取るミルハウザー。
そんな彼が描く、さまざまな物語の味が楽しめる12の短篇集です。
表題作は評判のナイフ投げ師ヘンシュの話。
彼は「ぎりぎりのところで傷をつける」新しい技を見世物にしています。
彼のショー、黒魔術の儀式みたいでこわいけれどちょっと見てみたい・・・。
それから私の印象に残ったのは「ある訪問」。
友人の奥さんはカエル??
ミルハウザーには珍しい、突拍子もない設定が面白いです。
「私」の語る日々の暮らしについての文章にも思わず共感。
「あと一歩のところまで行った結婚話、刺激を欠いた友達付き合い、何かしらを欠いた女友達、やりがいのある、でもあのころ求めていたのとはなんとなく違う仕事のこと、物事はうまく行っているのだけれどさりとてこれで完璧とは思えない気持ちのこと、自分が不幸ではないけれど真に幸福でもなく、その中間のどこかに囚われていて幸福・不幸の両方を眺めていることを私は彼に話した。」
それから「月の光」は描写がとても美しくて、丹念に文章を読む楽しみを味わいました。
「空気は月の光の濃度をどんどん増していって、足はスポンジのように濃い空気を踏んでいる気がした。奇妙な浮揚感を僕は感じ、ふと足下を見ると、僕は歩道のわずか上を歩いていた。(中略)
月に照らされた木の葉の群れを僕は見下ろし、街灯のてっぺんを、木々の下で白いはしごみたいに傾いでいる幾筋かの月光を見下ろした。僕はそこからさらに高くのぼっていって、とうとうそよ風を捉えた僕は、自分の体が夜の青い国々へ運ばれていくのを感じた。」
ミルハウザーの作品はどれも本当に体験したかのような「触感」を感じさせてくれるのが不思議です。
緻密な描写で魔法のように風景を切り取るミルハウザー。
そんな彼が描く、さまざまな物語の味が楽しめる12の短篇集です。
表題作は評判のナイフ投げ師ヘンシュの話。
彼は「ぎりぎりのところで傷をつける」新しい技を見世物にしています。
彼のショー、黒魔術の儀式みたいでこわいけれどちょっと見てみたい・・・。
それから私の印象に残ったのは「ある訪問」。
友人の奥さんはカエル??
ミルハウザーには珍しい、突拍子もない設定が面白いです。
「私」の語る日々の暮らしについての文章にも思わず共感。
「あと一歩のところまで行った結婚話、刺激を欠いた友達付き合い、何かしらを欠いた女友達、やりがいのある、でもあのころ求めていたのとはなんとなく違う仕事のこと、物事はうまく行っているのだけれどさりとてこれで完璧とは思えない気持ちのこと、自分が不幸ではないけれど真に幸福でもなく、その中間のどこかに囚われていて幸福・不幸の両方を眺めていることを私は彼に話した。」
それから「月の光」は描写がとても美しくて、丹念に文章を読む楽しみを味わいました。
「空気は月の光の濃度をどんどん増していって、足はスポンジのように濃い空気を踏んでいる気がした。奇妙な浮揚感を僕は感じ、ふと足下を見ると、僕は歩道のわずか上を歩いていた。(中略)
月に照らされた木の葉の群れを僕は見下ろし、街灯のてっぺんを、木々の下で白いはしごみたいに傾いでいる幾筋かの月光を見下ろした。僕はそこからさらに高くのぼっていって、とうとうそよ風を捉えた僕は、自分の体が夜の青い国々へ運ばれていくのを感じた。」
ミルハウザーの作品はどれも本当に体験したかのような「触感」を感じさせてくれるのが不思議です。