Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「奇跡のリンゴ」石川拓治著(幻冬社)

2009-10-20 | エッセイ・実用書・その他
「奇跡のリンゴ」石川拓治著(幻冬社)を読みました。
絶対不可能と言われたリンゴの無農薬・無肥料栽培を成功させた木村秋則(あきのり)さんをノンフィクションライターの著者が取材したもの。
「奇跡のリンゴ」が実るまでの苦難の歴史が語られています。

今朝の新聞でサントリーが開発した青いバラの記事がのっており、青いバラの努力ももちろんすごいことだけれど、木村さんが企業のバックアップもなく、自分の家の畑をつかって、一家困窮を極め周囲の非難を浴びながらなしとげた偉業は、本当にすばらしいことだなと改めて思いました。
全部葉をおとしたりんご畑が再び葉をつけるまで8年!
私だったらきっと3年つづけばいいほう・・・。腹の据わり方が違います。

進退窮まったときに見た山の中のドングリの木は神の啓示のようです。
その後さらに数年たち、リンゴが満開の花をつけたところはちょっと泣けてしまいました。これがドラマではなく実話なんですから。

私たちは体は「今」に在りながら心は「過去」か「未来」に飛んでいることがよくあると思います。でも木村さんはただただ「今」目の前にあるリンゴに真剣勝負で挑んでいる。

今まで常識ではありえないと思われてきた桜の木の剪定に成功し、樹齢を重ねている弘前の桜も連想しました。常識にとらわれない青森の人の底力はすごい。

本の中では、木村さんの農業法は成功した今でも、多くのリンゴ農家が反発していると書かれていました。「なぜ無農薬でもリンゴが作れるのに、農薬を使うのか」と今までの自分たちのやり方が糾弾されているように感じるのだと。
その気持ちはわかるけれど・・・でもやっぱり私は無農薬のリンゴが食べたい。
木村さんのリンゴ畑に追随する農家が増えてくれるとうれしい。
その後のリポートも知りたいです!