Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「時計館の殺人」綾辻行人著(双葉社)

2009-10-14 | 日本の作家
「時計館の殺人」綾辻行人(あやつじ ゆきと)著(双葉社)を読みました。
鎌倉の森の暗がりに建つ古い館、通称時計館。
そこで10年前に死んだ1人の少女。
館に関わる人々に次々起こる自殺、事故、病死。
そして10年後に時計館を訪れた9人の男女に、無差別殺人の恐怖が襲います。
第45回日本推理作家協会賞を受賞している作品です。
ラストについて少し触れますのでご注意ください。

綾辻さんの作品を読んだのはこれが初めて。
異形の建築を作り続けた建築家・中村青司が設計した独特な屋敷がまず、すごい。
時計の針の位置通りに部屋がある円い家、振り子の部屋まであって凝っていてとても面白いです。
館を埋めるのは108個の古時計のコレクション。
そのほかにも巨大な時計塔から小さな懐中時計まで。
屋敷の机も時計、天蓋も時計、庭の植え込みは日時計!

そして隔離された空間で続々と殺される人々。
こわい・・・。
推理作家・鹿谷門実こと島田清が謎に挑みます。
おどろおどろしい館で起こる連続殺人の謎、推理小説の王道ともいうべき作品。

私にはアリバイのトリック、見抜けませんでした。やられた。
最後の砂時計のシーンは、絵画的で圧巻でした。

自分の頭の中の願望を、その財力によって目に見える形にする。
そしてその歪んだ幻想の中で娘を育て、暮らしていく・・・。
それは本当に「娘のことを想って」の行為ではなく、古峨倫典の強迫観念がさせたこと。それに館中の人々が加担していた。
世にも奇妙なのは誠に、人の心なり。