Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「森の生活(上)」H・D・ソロー(飯田実訳)岩波書店

2005-10-31 | 柴田元幸
「森の生活(上)」H・D・ソロー(飯田実訳)岩波書店を読みました。
ウォールデン湖畔の森の中に自らの手で小屋を建て、自給自足の生活を営んだソロー。湖水と四季の移り変りや動植物の生態、読書と思索の日々が、「詩人博物学者」の清純な感覚で綴られる、もはやアメリカの古典文学。
私の大好きなポール・オースターが小説の中でよくとりあげているので、興味をもって読んでみました。
哲学的な思索だけでなく、文章の中にはかかった費用の内訳なども書かれ、生活者としての面も強く感じられます。
一日の湖の色彩の移り変わり、鳥の鳴き声の違い、野生の木の実など自然の描写が鮮やか。隠者としての生活ぶりだけでなく、「訪問者たち」の項の近隣の人々の描写も面白いです。
自然へのかかわり、現代社会への警鐘など、筆者の持論はとても面白いのですが、ちょっと文章全体の起伏が足りないかなあ・・・と思い下巻までは進めませんでした。残念。