Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「人生のちょっとした煩い」グレイス・ペイリー(村上春樹訳)文藝春秋

2005-10-20 | 柴田元幸
「人生のちょっとした煩い」グレイス・ペイリー(村上春樹訳)文藝春秋を読みました。
三冊しか短編集を出版していないという寡作ぶりだが、アメリカでは留保ない尊敬を勝ち得ているという、稀有な作家の処女短編集。
ユーモラスな人物がいろいろ登場します。
「変更することのできない直径」の過保護な両親が戯画的で面白い。裁判で争うことになるチャールズは有罪になりかねないのに、どこかひとごとのようにとぼけていて面白いです。
「若くても、若くなくても、女性というものは」では13歳の少女が兵隊にプロポーズしたり、「そのとき私たちはみんな、一匹の猿になってしまった」では、父親と猿の間にできた子供を兄として(信じて)いる少年が登場したりします。
どれも風変わりな話なのに、語り口はごく当たり前の出来事のようで不思議な風合いの作品ばかりです。
三作目の「その日、もっとあとで」も村上春樹さんが翻訳する予定だそうです。今から楽しみです。