Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「ミスター・ヴァーティゴ」ポール・オースター著(柴田元幸訳)新潮社

2005-10-27 | 柴田元幸
「ミスター・ヴァーティゴ」ポール・オースター著(柴田元幸訳)新潮社を読みました。
けだもの同然の主人公が師匠に拾われ、空を飛ぶ術を覚えます。"空飛ぶ少年"の飛翔と落下の半生を描く、ポール・オースターのアメリカン・ファンタジーです。
主人公が空を飛ぶことを覚え、その術を磨いていく過程がとても楽しく、ぐんぐん読み進んでしまいます。
師匠やマザー・スー、ミセス・ウィザースプーン、イソップなどまわりのひとびとのキャラクターや主人公とのかかわりの変化もとても面白いです。
後半からは「後日談」的ですが、むしろ空を飛ぶ男が地面におりてきて、最後は自分が師匠になる予感をさせて終わるあたり、好きな展開です。
ポール・オースターは著書で(「ムーン・パレス」だったかな?)「小説にはラストがあっても、人生にラストはない。好むと好まざるとにかかわらず人生は続いていく」という意味の文章を書いていますが、この作品はまさにそのとおり。
人生の華やかな部分が終わっても人生は続いていく。自分の知らないところで他人の人生も続いている。そんなことも感じさせられる作品でした。