Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

The Gray Flannel

2020-12-27 | 生地
勤めていた頃、ある日きれいなシルバーの髪の穏やかな感じの方が見えました。
チャコールグレー無地のスーツを急ぎで必要とのご要望にお応えしたのをきっかけに、毎シーズンご利用頂くようになります。
たいていは作りましたが急なご用はその後もあって、シーズン終盤など既製品のサイズが切れてお役に立てなかったのは、チャコール無地以外お召しにならなかったからです。

しばらくして、その方がある金融機関の立て直しを担っている方だと分かりました。
何故チャコールグレーの無地しかお召しにならないのか直接伺う機会を逸しましたが、もしかするとアメリカの銀行に赴任経験がお有りで、その時お手本となるイメージの方に出会われたのかもと後から想像しました。
グレーに対するイメージが、日本と海外のビジネスの場ではそれくらい違うように思います。

                   * * *

「自分が立派な服を着られる身分になったときには彼も、アメリカ最高の仕立屋はどこかをすでに知っていた。
そしてこの日の夕方彼が着ていたスーツは、まさにその最高の仕立屋が仕立てたものであった。
彼は、彼の母校の大学が、他の大学とはっきり違う独自の特色として持っている、あの万事に地味をよしとする嗜好、あの感覚をすでに身につけていた。
彼はそうした態度が自分にとって有利なことに気付き、意識してそれを習得してきたのである。
服装にしろ態度にしろ、無造作であるためには、慎重に意を用いる場合よりもはるかに大きな自信の裏打ちを必要とすることを、彼は承知していた」野崎孝訳 F. S. フィッツジェラルド「冬の夢」(初出1922年)

以前も引用した「冬の夢」の一節を思い出すと、主人公が着ていたのはグレーフランネルのイメージで、同時にこういうタイプの人々が息子に最初のスーツとして薦めるなら、グレー無地の印象があります。
若者から映画「大逆転」のデューク兄弟やアニェッリのような年配者まで、それぞれ合わせ方が変わるだけで、着こなしが楽しめるのも紺のブレザー同様こうしたオーソドックスなものの良さです。

その中でも一番重いFox Brothersのフランネルでのご注文で、出来上がりのコーディネート例をリクエストいただきました。


F.アステアは映画の中でもしばしばグレーフランネルを着ています。紺に白のストライプというタイもよく使っていますが、レップのがなかったのでシャンタンで代用してます。


ボルドー、バーガンディ、エンジ...も相性の良い色です。


以下4つはピンドットですが、プリントでもジャカードでも、ドットでなくても構いません。ただシルクプリントの場合、ドットやペイズリー、小紋等の古典柄以外は、チャールズにお任せしておくのが得策です。






こういう感じのジオメトリックと総称される柄でも、


ある程度年齢を重ねた方がされるとまた趣きが違います。


時には、様々なチェックという選択肢も。




「番外編」

ちょっと駆け足で、あり合わせのものでコーディネートしましたが、仮に色柄がハズれていても何か意図があるんじゃないかと忖度していただけるような素材ですから、極端な話何を合わせてもたいてい大丈夫です。
また時間の都合で使っておりませんが、シャツは他のブルー系ストライプや淡いピンクを持ってくると更に合わせが広がります。
色々楽しんで頂けることと思います。

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