Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

12年

2021-10-20 |  その他
It's so nice to see
All the folks you love together
Sittin' and talkin' 'bout
All the things that's been goin' down
It's been a long, long time
Since we had a chance to get together
Nobody knows the next time we see each other
Maybe years and years from now

と始まるオージェイズ"Family reunion"をこのところ仕事終わりに流していて、雲の絨毯の上を行くような心地よい音にエディ・リヴァートのエモーショナルな節回しが絡んで、この一年半人と会うことが少なかったせいか歌詞が身にしみます。

そうこうするうち、このブログを始めて今月で12年...だそうです。
長いような、長くないような。
12年と言えば、生まれた子供が小6に、小学校に入った子が高3という年月ですから子供にしたらすごく長いかも知れませんが、オジサンにはどうでしょう...
そう思い返すと、始めた頃は思いもしなかったことですが、懇意にしていた方が二人も亡くなってしまいました。
共にこの仕事では先輩で、それぞれ服がとても好きな方でした。



70代で亡くなったAさんは、60年代からの日本の男性の服に影響を与えた会社で実質的に製品を作ってきた人で、その後アメリカの仕立服からスタートしたブランドを日本に根付かせトラディショナルなスタイルを普及させた立役者のお一人でした。
毎年のようにアメリカへ出張していた頃、現地で仕立て職人の長をしていた人(有名なブルックリンのマーティン・グリーンフィールドの本のタイトルと同じように、ホロコーストから生還したという人でした)が、既製服を買っても身体に合わせる為ならバラすのも厭わない職人気質をよく語ってくれたものです。

90年代に入って仕立て服に近い作りのイタリアの既製服を知ると、その着心地とクラシックなフォルムが、アメリカンとかブリティッシュとか日本的にジャンル分けしなくても高いレベルの服がよく似ていることを知り、より質の高い製品作りにイメージを得て試作を繰り返し、大きな会社のメリットで予想よりずっと早く製品化させ、その直後に引退されました。

その先の方向性については現役中も引退されてからもお話したことはありませんが、気がつくと私が今やっていることは、その方が最終的にやりたかった形あるいは延長上にあるんじゃないかと最近感じます。

もう一人のBさんはまだ50代で一頃毎日のように顔を合わせていたので、今も最期の晩のことが思い出されます。
本当に良い人でしたが最後の一年はさらに仏さんのようで、それ以前のように戯れ言を言い合ったりしたのか思い出せません。

お二人が元気な頃は独立なんて話はしたことはなかったと思います。
先日、40年近く服への興味を持続され色々着てこられたという方が、出来上がった服の着心地や生地の選択に驚いたり喜んでくださたるのに接し、まだそういう余地があることにこちらの方が喜ばせて頂きました。

おそらく服が好きだったお二人も見たことがなかったものを試してもらえていたら、どんなコメントが返って来たかな(イタコさんなら何て言うだろう、やはり「ワシじゃ」から入るのかな)なんて思いながら服を作っているのが、この12年で一番変わったことでしょうか。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする