Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

思いもよらぬ方向に.......

2011-12-01 | Others
 新潮文庫の伊丹十三「女たちよ!」の解説は、池澤夏樹さんが書いています。

「最初に刊行された1968年にはこれはまったく新しい、挑発的な、驚くべき本だった。ぼくたちは一種まぶしいものを見るような思いでこの本を手にした。笑って読み、膝を打ち、あこがれ、勇気づけられた。
何がそんなに新しかったのか?まずは自信に満ちた個人主義、趣味を中心に据える人生観、食物や酒や車についての粋なセンス、(つまりは)消費の喜び、ヨーロッパを基点にしたホンモノ指向」

「四十年ちかい歳月の間に自分とこの国の人々が辿った道を振り返ってみて、ぼくはこの本の価値を再認識した。思えばぼくはこの本の教えるままに自分の好みを重視し、料理を覚え、自分の人生から偽物を排除しようと努力して、今に至った。そして今は自ら選んでヨーロッパで暮らしている」



世界各地に派遣されて、価値観の一元化を地ならしする先兵ともなった宣教師のように、事態は伊丹さんが思いもよらぬ方向に舵をきります。

「今になってこの本に感じる悲しみのもう一つの理由は、彼の啓蒙がおおかた達成されたにもかかわらず、あるいはその結果として、この国がこんな風になってしまったことだ。
これはもう悪い冗談みたいなもの。ルイ・ヴィトンはよいブランドだが、だからといって誰も彼もがあのバッグを持てばいいというものでもないだろう。日本の消費者は付和雷同という点では前よりももっと日本的にふるまっている」

とここ数十年の傾向を、池澤さんは分かり易く解いてくれます。

少し前に目を通した村上香住子さんという人の「のんしゃらん」という本に、
「ヴィトンのバッグの流行は、『anan』が火付け役だったし、エルメスのケリーも、マガジンハウスに端を発していたと思う。殆んどの女性編集者は、ヴィトンやケリーを持っていた、といっても過言ではない」

という一節があったので、伊丹さんの発言からブランド志向パンデミックみたいな状態へ上りつめるには、そうしたもう一段の後押しがあったのは間違いないところでしょう。

そして池澤さんの言葉どおり、伊丹さんもまさかこんな世の中になるとは思いもよらなかったはずです。

また村上さんの言うとおりなら、マガジンハウスはフランス経済に大きく寄与したかどで、フランス政府から表彰されていたとしても不思議ではないですね。今日に至るまで、永年月の莫大な売上を誘導したわけですから。
そして肥大したブランド志向の因子は、今は韓国・中国に伝播し日本をなぞってコンスタントな売上を本国に計上しています。

Comment (1)
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