【日本市況】債券下落、短観改善-円は対ユーロで最安値、株戻り高値
山中英典、酒井大輔、佐野日出之
2024年7月1日 14:43 JST 更新日時 2024年7月1日 15:59 JST
1日の日本市場では債券が下落。先週末の米国長期金利の上昇に加え、日本銀行の企業短期経済観測調査(日銀短観、6月調査)で大企業製造業の景況感が改善したことが売り材料となった。 円相場はフランス国民議会選挙の第1回投票を受けて対ユーロで過去最安値を更新し、対ドルでも一時約38年ぶり安値付近まで下落。株式相場は投資家心理の改善を背景に、東証株価指数(TOPIX)が3カ月ぶりに終値ベースでバブル崩壊後の戻り高値を更新した。 6月の日銀短観によると、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス13と前回3月調査のプラス11から改善した。全国信用協同組合連合会の資金運用部の山下周チーフエコノミストは、日銀の追加利上げにとっては追い風となる内容で、「中小企業の価格判断が先行きを含めて上がり、物価安定目標の2%達成の確度が高まったと言っていいのではないか」と話した。
大企業製造業景況感が2期ぶり改善、7月利上げ観測維持へ-日銀短観
一方、6月30日に投開票されたフランス国民議会選挙の第1回投票は、極右政党「国民連合(RN)」が得票率で首位ながら、他勢力との差が事前の一部世論調査より小幅の見込みとなった。これを受け、ユーロには早朝から買い戻しが先行。ユーロ・ストックス50指数先物は2%近く上昇し、フランス債先物はじり高となった。
ユーロが対ドルで上昇、極右RNは絶対多数に届かないとの見方
1日の国内債券・為替・株式相場の動き
長期国債先物9月物は終値は前週末比21銭安の142円65銭
新発10年債利回りは2.5ベーシスポイント(bp)高い1.065%、一時1.08%に上昇
円は対ドルで0.1%安の161円01銭。一時161円19銭まで下落-午後3時36分時点
円は対ユーロで一時0.6%安の173円47銭と1999年のユーロ導入以来の最安値
TOPIXの終値は0.5%高の2824.28
日経平均株価は0.1%高の3万9631円06銭
債券
債券相場は下落。日銀による国債買い入れ減額と追加利上げへの警戒感が強い中、短観で大企業製造業の景況感が改善したことで売りが優勢になった。
岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、債券相場は前週末の米金利上昇を嫌気し、2日の10年国債入札への警戒感から軟調な展開と指摘。9、10日の債券市場参加者会合を控え、国債買い入れの減額に対する警戒感から上値は重いとし、「投資家も動けない状況だ」と述べた。
先物中心限月の推移
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
0.355% 0.595% 1.065% 1.895% 2.245% 2.395%
前週末比 +0.5bp +1.5bp +2.5bp +3.0bp +1.5bp +1.5bp
為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=161円ちょうど付近。仏下院選挙を受けたユーロ買い・円売りや、月初のドル買い・円売り需要を背景に、一時先週末に付けた1986年以来の安値(161円27銭)に接近した。
スタンダードチャータード銀行の江沢福紘フィナンシャルマーケッツ本部長は「月初ということで仲値にかけ、まとめてドルを買う動きが入ったのだろう」と指摘。加えて、仏下院選で極右政党が絶対多数に届かないとの見方でユーロの買い戻しが対円でも広がったことが、ドル高・円安に寄与したと述べた。
円は週明けの取引で対ユーロで最安値を更新し、対ポンドで204円台と2008年8月以来、オーストラリアドルとカナダドルに対し07年11月以来の安値を付けた。
米商品先物取引委員会(CFTC)によると、アセットマネジャーとレバレッジファンドの同25日時点の円の対ドルポジションは計21万枚規模の売り越しで、円先安観が強まっている。江沢氏は、円が再び160円台に下落し、
「水準で介入を実施しているわけではないことが確認できたため、どこで介入があるかを恐る恐る試していく展開だ」と語った。
先週末からのドル・円相場の推移
株式
東京株式相場はTOPIXがバブル崩壊後の戻り高値を更新して終えた。米国のインフレ沈静化の兆しや日本短観の堅調な結果を受けて、投資家心理が上向いたほか、フランス国民議会選挙の第1回投票がほぼ予想通りの結果と受け止められたこともプラス材料となった。
TOPIXは金融や商社、海運などバリュー(割安)株主導で一時2838.67ポイントまで上昇し、1989年に記録した史上最高値まで2%未満に迫った。金利上昇を受け保険業指数が過去最高値、銀行業指数が07年来の高値を更新した。売買代金上位では、通期営業利益予想を上方修正したJ.フロントリテイリングが6年超ぶり高値。一方、最高財務責任者(CFO)が交代するレーザーテックは反落。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は短観について、企業マインドが強く、製造業のコスト転嫁でインフレ傾向の定着が確認されたと指摘。企業の為替前提は業績が上方修正される可能性が高いことを示唆しており、大きなサプライズではないが、市場にとってはポジティブとの見方を示した。 もっとも、指数は朝高後伸び悩んだ。日経平均は心理的に重要な4万円の大台に近づいた後失速し、午後には小幅安に転じる場面もあった。
T&Dアセットマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダーは「個人投資家も直近数週間下値で買っていることから、ある程度上がったところでは機動的に売ってきている」とみていた。TOPIXの日中チャート
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