HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

コートは助け合いのためにある。

2011-10-30 08:05:43 | Weblog
 先日のコラム、「節操がないファッションイベント」の大反響は予想だにしていなかった。ライターとして行政とイベント業者の蜜月、公金利用の問題点、事業目的の不明確さに警鐘を鳴らしたつもりだったが、ツイートしていただいた方々の多くは宮崎やTGC、東国原元知事そのものに関心を示されたようだ。

 不思議な巡り合わせだが、東国原氏の元妻、かとうかず子氏がかつて出演した三陽商会の広告がある。同社はもともとコート専業メーカーで、80年代まではそのプロモーションに力を入れ、彼女が出演したのも「サンヨーコート」の広告だった。
 テレビCMはセットを組んだ電車の停車場にコートを着た彼女が佇む映画女優風のシーン。ところが、新聞広告は確か俳優藤達也との共演で、これが実に意味深なつくりになっていた。キャッチコピーは「見せたいからコートを着る。隠したいからコートを着る。コートはしのび逢いのためにある」と記憶している。コートを「逢瀬」の道具として表現する。それが制作者の意図だったようだ。

 それほど三陽商会はコートに力を入れていたのだが、会計士出身の中瀬雅通氏が社長になってからは経営効率の追求で、多くの売上げが望めるウエアに資源を集中。コートについてはオリジナルを企画するどころか、バーバリーのライセンスを手っ取り早く拡販する戦略に変わってしまった。それも2020年までの契約から、15年に短縮されたが。
 そんな三陽商会のニューヨーク法人が限定のトレンチコートを企画したとのニュースが舞い込んできた。東日本大震災の復興支援を目的としたもので、米沢産シルクを使用し同社系列の青森工場で縫製。 内側の胸元には金糸で「希望」の文字が刺繍されている。また、ニューヨーク在住のグラフィックデザイナー、ウィリアム・タイ氏のイラストに「希望HOPE」などの文字も入り、生産地や意図を説明した特製タグも付く。まさに正真正銘のサンヨーコートだ。

 今年4月、ニューヨーク法人がサックス5th Ave.に震災復興を話しを持ちかけたところ、同店が共鳴して復興支援コート発売に相成ったそうだ。サックスはニューヨークでは最もファッションが売りの百貨店だが、キリスト教的な博愛精神を打ち出すところはいかにも米国の商業界らしい。
 ただ、筆者が目を見張ったのはサックスより三陽商会の方だ。同社の中にコート専業メーカーのDNAがずっと生き続けていたからである。ライセンス販売なんかのイージー路線に走るのではなく、カッコいいコートをもっと企画してほしいものだ。
 復興コートの価格は795$と日本製オリジナルにしては値ごろ感がある。10月24日からサックスの店頭、さらに同法人のWebサイトでも「ホープ・フォー・ジャパンコート」として販売をスタート。初期目標は56着で、売上げのほぼ全額がジャパンソサエティーの日本大震災復興基金に寄付されるという。

 マンハッタンは初冬を迎え、摩天楼の間を縫う風は冷たい。街中を足早に行き交うニューヨーカーにとって、コートが重宝する季節だ。ただ、 彼らが見せたいからコートを着ようと、隠したいからコートを着ようと、そんなのはどうでもいい。このコートは「助け合いのためにある」とコートを売り、着てくれるニューヨーカーに、一日本人として感謝の意を表したい。Thanks !

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