HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

何を根拠に成功なのか。

2015-08-26 09:28:21 | Weblog
 先日、7月末に開催された「福岡アジアファッション拠点推進フォーラム」の報告書が発表された。

 今年は会場が昨年までのホテルの大広間から、福岡天神の文化ホールとなった。収容人数のキャパも250名程度だったことから、参加者数は160名と昨年の半分くらいに減少している。

 と言っても、参加者について主催者側の福岡アジアファッション拠点推進会議は、昨年同様に「地元アパレル関係者、専門学校、行政など」と発表している。

 しかし、内訳が全く書かれていない。アパレル関係者といってもフォーラムの当事者でもあるわけで、夏休み期間中で専門学校生の強制参加が計画され、行政担当者が利害関係者の中にいることは想像に難くない。

 一般参加がどれほどあったのかは全くわからないし、主催者側の水増しということは疑う余地がないようだ。

 推進会議は事業予算の削減から経費がかからない会場を選択したわけだろうし、会場のキャパが減ると企画運営委員長が部長を務める専門学校の学生他に、「やらせ動員」させる手間も省けたことだけは間違いない。

 それはそうと、問題は昨年度の事業の結果報告である。年度末から5ヵ月以上経過し、なおかつフォーラム実施から3週間も経っているのに、報告書はたったレポート用紙2枚程度の薄っぺらいものでしかない。

 まず、冒頭から「今年3月に実施した福岡アジアコレクション(FACo)が成功裏に終了した」が強調されている。

 FACoは2009年の初回から実質的にRKB毎日放送の「収益事業」であり、東京から三文タレントを呼ぶ「客寄せ興行」に過ぎない。地場ファッション産業にとってほとんど影響はなく、事業予算獲得のために行政から資金を引き出すための冠イベントだ。

 スポンサー集めやチケット販売などを含めプロデュースにあたるRKB、タレントのブッキングやショーの構成・運営、会場設備を委託され、同じノウハウの神戸コレクションも手がける制作会社アイグリッツ、タレントに地方営業の場を確保したい東京の芸能プロ。

 それらの利害関係者にとって、カネヅルである「行政支援」を確保し継続するには、何としても「成功裏」でなければならないということなのだろう。

 しかし、報告書では何をもって成功なのか。その根拠は全くあげられていない。「アリーナ席のチケットが完売したから成功」なのか。「タレント見たさのファン客を集めたから成功」なのか。

 そんな程度で、ファッション産業の振興も、情報発信となるはずもなく、公金による事業支援の根拠を欠き、事業そのものが正当化されるはずもない。

 本当に成功した自信をもつのなら、福岡県や福岡市の公金拠出、スポンサー支援を全くあおがなくてやってみれば良いのである。

 そもそも事業がスタートして7年、FACoを含めて数々の事業が地場のファッション業界にどれほどの効果をもたらし、何が新しいビジネスのシーズを産み、産業の活性化や人材育成につながっているのか、報告書では全く語られてない。

 それどころか、今度は「クールジャパン・フクオカ」という新たな事業を持ち出し、コンテンツや食・観光などと合わせて、プロモーションを行うというのだから、全く恐れ入る。

 本来の事業の効果や影響度を客観的に検証するどころか。別の事業まで持ち出し、抱き合わせようと企てている。利害関係者としては自分たちのメシのタネとなるイベント事業を継続できるのなら、事業の目的など何でも良いようである。

 とにかく行政からの予算措置を二重三重にしようという思惑が透けて見える。利害関係者にとって地場ファッション産業への効果検証よりも、とにかくイベント資金の確保の方にご執心というのが、年を追うごとに顕著になっている。

 昨年度で3回目となった「ファッションウィーク福岡」は、参加店舗が260店にも及んだと。これについても地場の支持を集めたように発表されている。

 しかし、参加各店からの「生の声」は何一つ語られていない。もちろん、売上げ数字、販促効果といったデータもない。会場では企画運営委員長がパワポを使ってことさらに影響度合いを強調しただろうが、そのデータに全く信憑性がないのは従来から変わらない。

 ファッションウィークの企画も初回から広告代理店に丸投げで、一昨年、昨年は「H」が事業を請け負った。渦中のアートディレクター、佐野研二郎氏の出身企業である。

 しかし、客寄せに売れないミュージシャンを呼び、特区事業などを絡めて運営しただけで、「ファッション」そのものとはかけ離れた内容なのは、多くの事業者が認めるところだ。能がないところは佐野氏と共通しているようである。

 ただ、行政側もこうした事業の手詰まり感を知ってか。「企業の販売拡大」「企業の販路開拓」「人材の育成・情報提供」を声高に叫ぶが、これまでの影響度を客観的にみれば何の説得力もない。

 報告書もそれをそのまま書き写しているだけで、利害関係者にやりたいようにされている。

 福岡県、福岡商工会議所の内部では、推進会議の予算は削減傾向にある。ならば、いっそのこと、FACoへの支援を切れば良いだけの話だ。しかし、利害関係者にとってそれは困るから、報告書の冒頭から根拠のない「成功」を強調せざるをえないのである。

 予算的な支援で残るのは、タレント市長高島のいる福岡市しかない。それがクールジャパン・フクオカや特区事業ということになる。これで辻つまがあい、俯瞰した事業構図が浮かび上がってくる。

 言い換えれば、陳腐な企画内容、形骸化した目的、関係者による利権構造だけしか見えて来ないということだ。

 最後に、地元スタイリング誌の編集者と台湾人のデザイナーによるトークショーは、語るにあらず。フォーラムの企画サイドもそろそろ講演会では、ネタが尽きてきたようである。

 予算削減はもちろんのこと、講演会そのものが当初から何をやるのかのコンセプトがハッキリしていない。限られた予算の中であご、あしを考えてのブッキングには限界があるということも露呈する。

 ファッション事業から遠ざかり、ミーハー専門学生を呼ぶためのタレントなら、いくらもいるはず。むしろ、そちらの方がファッション音痴のプロデューサーにとっても好都合ではないか。あとはギャラのマージンをはねて収益になるかどうかだろうが。

 結局、こうした薄っぺらい、根拠や正当性を欠く報告書で済まされるということが、利害関係者の思うつぼということだ。

 地方行政でも、利権が脈々と受け継がれているということである。地場ファッション産業にとって、本当に販売拡大、販路開拓、人材育成が達成できるほどの事業を目指すのなら、なぜ地場ファッション産業を含め議論がなされないのか。

 それは推進会議ならびに企画運営委員長という予算を獲得し、配分にするポストにいる人間が議論の動きを封殺しようと必死だからである。今回の報告書もその一環で書かれているのがよくわかる。

 FACoをはじめとしたイベント事業が税金を一切使わず、客寄せという機能、テレビ局の収益事業構造ともに優れ、スポンサーのマーケティングにも貢献するのなら、異論を挟むつもりはない。

 まあ、利害関係者がFACoを含め、事業そのものをそのように作り上げるほどの能力を持ち合わせていないということ。それはこれまでの事業内容を見ればよくわかる。かわいいく区くらいの事業にポンと1000万円以上の予算がつくのだからである。

 ただ、丸投げされるメディアや代理店がファッション音痴である以上、ファッション事業として自治体が叫ぶ目的を達成することなど、未来永劫不可能であることだけは確かだろう。もちろん、専門学校のファッション部長も言わずもがなであるが。
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