HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

業界人としての評論にご理解を。

2011-10-23 11:54:37 | Weblog
 拙書、阪急メンズ東京のコラムは思わぬ反響をいただいた。ほとんどが共感、同感だったが、「福岡の人はそう思うだろうね」とコメントされた方がいらっしゃったので、誤解なきよう言っておきたい。
 筆者は70年代から新宿伊勢丹で買い物し、日本橋の三越や高島屋にも通った。都内の百貨店はパルコなんかのショッピングセンターとともにファッションに目覚める10代半ばからずっとチェックしてきている。
 大学の2年時には、過激派対応で厳戒態勢の成田空港からニューヨークに飛び、高級店のバーグドルフ・グッドマン、エレガンスが売りのヘンリ・ベンデル、壮年向けのロード&テイラーなど米国百貨店を目の当たりにした。
 ただ、バーニーズ・ニューヨークはまだ婦人服専門店の域を出なかったし、ブルーミングデールズはアドヴァンスだったものの、メーシーズ、サックスは大衆的だった。最もカルチャーショックを受けたのは、木製のエスカレーターと単品ハンギング展開の大量在庫。
 あとから考えると、ニューヨークの百貨店は、階級社会と物量作戦の象徴で、VMDはギャップの手本にもなって30年以上も変わらない、売り減らし&プッシュ型の典型だと思う。
 百貨店がひしめく中、すでにカルバンクラインの高級ジーンズは99ドル50セントでディスカウントストアのウィンドウを飾ざり、ダウンタウンで倉庫を改装したストリートカジュアル店の方がニューヨークファッションと言われていた。某SPA企業が名前を流用した「ユニーク・クロージング・ウエアハウス」である。 それが80年代初頭のニューヨークの流通事情だった。
 
 業界で働き始めてからはそんな体験を通じて、都内の百貨店を主観・客観的に見て来たつもりである。西武セゾンのクリエイティブ戦略の産物、渋谷公園通りのシード、スペイン坂下のロフトのMDは、それなり評価した。ファッションの伊勢丹を手がけた山中鏆氏がプロデュースし、駄洒落コピー「ビギンザ・ギンザ」の松屋銀座では、紅茶フォーションのテーブルロールがお気に入りだった。東急の文化村シアターコクーン前はよく待ち合わせに利用した。ただ、空前の好景気と言われながらも、利用機会はそんな程度だったから、次第に百貨店から離れていった。
 その後、日本ではバブルが崩壊したにも関わらず、東武がメトロポリタンプラザを開業するなど百貨店が構造改革に踏み切れない中、ニューヨークではティファニー裏のボンウィット・テラーがのナイキタウンに変わり、パリで苦戦のギャラリー・ラファイエットは米国に活路を求めるなど、世界では百貨店の再編が進んだ。
 日本の既存店売上げは92年以降、96年を除き前年割れを続け、総売上げも98年以降、連続して減少。マスメディアはその要因を平成不況によるもの、お客の嗜好の多様化などで片付けたが、最大の要因はNBアパレルとの委託&消化仕入れが9割程度まで増えて、結果として同質化と「価格に対する価値」が低下したからである。

 一方、アパレルは百貨店側の歩率拡大による利益減少をカバーするために製造原価率を圧縮させ、結果的に価格に対する価値が低下。ユニクロなどと比べると割高感が強まってしまった。さらに、これ以上の歩率負担は企業の生き残りに関わると00年以降、負担が百貨店の3分の1以下で済む駅ビルやファッションビルや郊外SCに進出していった。それが今日のルミネの好調を生んだのである。
 これが百貨店を取り巻く状況なのに、Jフロントリテイリング傘下、大丸のメンズ担当課長は講演で、ゴルフウエアをファッションイベントでプロモーションするなんて、ノー天気なことを語っていた。夕方のユニクロで上場企業のビジネスマンがコットンのテーラージャケットやパンツ、ポロシャツのセットを1万円にも満たない価格で購入している時代なのにだ。何に着るのかはアイテムを見れば一目瞭然だし、ユニクロ側も承知の上でのMDなのである。
 博多阪急の営業統括部長も「メンズをテコ入れするには」の取材に、「メーカーがない」からできないと語るばかりだった。できないのではなく、リスクを踏んでまでやりたくないのが本音では。百貨店業界では売上げ状況が悪化しても、委託&消化取引を抑えて買取りの自主編集を増やすなどの動きは、全く進んでいないのである。
 また、駅ビルやファッションビルとの競合が激しいOLやヤングビジネスマン向けの商品を縮小し、中高年向けや高級品にシフトする動き、高級ブランドの大量導入の方が目立つ。

 高級ブランドを増やしてNBアパレルの売場を縮小し、低下した歩率をNBの歩率に上乗せして儲けるのが百貨店の狙いのようだが、そんな姑息な手法はもはや限界だろう。
 阪急メンズ東京はその典型的な事例ではないだろうか。筆者は業界人としてコラムを通じ評論しただけ。別にローカルに住む消費者の素人感覚で述べたわけではない。失礼な言い方かもしれないが、できればこのコラムでは行間までちゃんと読める方々にツィートしていただきたいとせつに願う。

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