深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

2023年春アニメの感想と評価 1

2023-06-30 10:36:54 | 趣味人的レビュー

粒ぞろいという前評判だった2023年春アニメについての、ネタバレなしの感想と評価。今期は12作を見て、途中切りはなし。この記事では、そのうち6月末まで放送を終えた9作品について述べる。

ちなみにアニメの評価については、私の場合、何より物語が面白いことが重要で、作品全体の評価の少なくとも半分はそれで決まる。逆に萌えやエロといった要素にはさほど興味はないし、作画崩壊も(目に余るほどヒドくなければ)問題にはしない。

以下、並びは50音順で、評価はA~E。

『ヴィンランドサガ』2期後半

ヴァイキングが北の海を席巻した時代を生きた青年、トルフィンの物語。2期後半では、デンマークの農場で奴隷として働いていたトルフィンが、ついに自らの生きる目的に目覚めて旅立つまでが描かれる。特に再会したクヌートとのやり取りはアニメ史に残る名シーンで、歴史物ではあるが、何より素晴らしい人間ドラマになっている。疑いなく近年トップクラスの作品で、未見の人には「四の五の言わず見ろ」と言いたい。
原作マンガはまだ連載中で、物語の終わりはまだ見えない。少なくとも、もう一期やるだけの原作のストックもあるので、3期もあるのではないか。やるならもちろん見る!
評価は文句なしのA。

『【推しの子】』1期

初回が90分という、なかなかない形で始まったが、これだけの長さを途中ダレることなく、1本の完成された作品として見せられるストーリーとアニメーションとしてのクオリティがヤバかった。その後も、アイドルグループ、B小町の不動のセンターにして不世出のアイドル、アイの死の謎を巡るミステリをまぶしつつ、芸能界のリアルを時に面白おかしく、時にシビアに、時にえげつなく描いて、ちゃんと「人間というもの」が語られていると同時に、しっかり「お仕事アニメ」にもなっている。
ストーリーもキャラクタも絵も高いレベルを保ち続けるいいアニメだが、ただ1つ思うのは、第2話以降の主人公となるアクア(本名はアクアマリン)とルビーが生前の大人としての記憶を持ったままアイの子供として生まれてきた転生者、という設定は本当に必要だったのか? 確かにその設定がストーリーの展開にも関わってくるが、別に彼らがトップアイドルだった少女の隠し子として生まれた普通の2人、ということにしても、物語は十分成立するし、むしろそんな変な設定など入れない方が、物語の純度は上がったのではないかと思う。
放送時期は未定だが、既に2期の制作が決定している。1期の終了時点ではアクアもルビーも自分の目標に指をかけたばかりの段階だし、2期も続けて見るつもり。
評価はA-。

『鬼滅の刃』3期「刀鍛冶の里編」

さすがufotable。相変わらずバトルシーンだけは別次元だ。もう「おみそれしました~(_o_)ペコ」と言うほかない。私が『鬼滅』を見続けているのは、あのバトルシーンゆえで、そういう意味で『鬼滅』がufotableという制作会社を引き当てたのは大きかった(個人的にはProduction I.G.版の『鬼滅』やボンズ版の『鬼滅』も見てみたかったと思うが)。
それにしても、『鬼滅』は(原作が「ジャンプ」のマンガだから仕方がないとはいえ)物語が進むほど細部の整合性が取れなくなり、展開もどんどん雑で薄っぺらくなっている。(原作がそうなっているからとはいえ)途中やたらと登場人物の過去回想シーンを入れてくるのも、それを誤魔化すためなのだろうが、その「お涙頂戴」演出は正直、クサすぎて見ていられない(というか要らない)。今の若い人はタイパ(タイム・パフォーマンス)を異常に気にするらしいが、そのタイパのためにも、ufoにはどうでもいい物語部分や寒すぎるギャグシーンをカットしてバトルシーンに特化した短縮版も制作してほしい、とマジで思う。
それにしても、炭治郎は平隊士ながら「無限列車編」、「遊郭編」で上弦の鬼と戦って生還してきたせいか、今では柱である時透無一郎を「君」付けで呼ぶなど、ずいぶん偉くなったものだ(とはいえ実際、炭治郎は「刀鍛冶の里編」でも柱より全然活躍している)。で、アニメは既に次の「柱稽古編」の制作も発表されている。
評価は、物語だけならE+~D-でいいと思うが、バトルシーンの凄さに引っ張られてB-。

『ゴールデンカムイ』4期

やむを得ぬ事情で放送が延期になっていた『ゴールデンカムイ』だが、第4期になっても文句のない面白さを誇るのはさすが。
主人公は日露戦争での鬼神のような戦いぶりから「不死身」の異名を持つ杉本佐一と、彼が行動を共にする知恵と度胸を持ったアイヌの少女で、莫大な金塊の鍵を握るアシリパ。そしてアイヌの金塊を巡ってこの2人と絡むのが、網走監獄の元囚人で、「脱獄王」の異名を取る白石由竹(よしたけ)。元情報将校で、北海道第7師団の中尉として参加した日露戦争では上層部の無能さから多くの将兵が無駄死にするのを見て軍や国に強い怒りを抱き、アイヌの金塊を軍資金に反乱を画策する鶴見篤四郎。元新選組「鬼の副長」で、箱館戦争では戦死せず、素性を隠して政治犯として網走刑務所に収監されていたが、北海道独立を目指して金塊争奪戦に参戦した土方歳三。などなど…登場人物が揃いも揃って超人、奇人、変人、怪人、変態で、そんな彼らが縦横無尽に暴れ回る。
3期は極東ロシアまでが舞台になり、アシリパの父、ウィルクや、その盟友、キロランケたちの過去が明らかになったが、この4期は再び舞台を日本に戻し、新たなメンバが加わった鶴見中尉たちが金塊奪取に向けて本格的に駒を進めてくる。
キャラクタの魅力と物語の面白さは今期もピカイチだが、徹底してB級を貫くその姿勢に敬意を表して評価はB~B+。

『スキップとローファー』

毎期、「覇権だ覇権だ」と騒がれるアニメがあるが、そういうのは大抵かけ声倒れで、実際にはあまり下馬評に上がらない作品が覇権を取ることが多い(前期なら『ぼっち・ざ・ろっく』とか)。で、今期はこの『スキップとローファー』が総合評価でNo.1の作品だ。
T大を出て総務官僚になり、その後は地に戻って市長として地域の活性化に貢献する、という”野望”を抱く岩倉美津未(みつみ)は、石川県の突端から1人、東京の進学校に(主席合格で!)やって来る。勉強は人一倍できるが、天然キャラで妙に浮いたところのある彼女。初めての東京暮らしで、いろいろ迷うことも多いが、自分に正直で飾らない彼女の周りには不思議と仲間が集まっていく。
この作品を一言で言い表すなら「しみじみといいアニメ」だろうか。美津未の高校生活が丁寧に描かれるだけだが、それが本当に愛おしい。この手の作品は、主人公が成長していく姿を描くことが多いが、『スキロー』では美津未は物語が進んでも変わらず、その「変わらない」彼女が触媒のように周囲に気づきと変化を与えていく。派手な展開などなくても、凄い演出など使わなくても、他愛ない日常が実はこんなにドラマに満ちていることを、この作品は教えてくれる。P.A.Works久々の良作である。
評価は、これ以外つけようがないA。

『デッドマウント・デスプレイ』1期

異世界転生ものだが、『デッドマウント・デスプレイ』の主人公は異世界「へ」転生するのではなく、異世界「から」現代の新宿に転生してくる。魔術が横溢する異世界で「災厄潰し」の異名を持つ歴戦の強者との戦いに敗れた稀代の死霊使い(ネクロマンサー)、屍(かばね)神殿は、なぜか現代の新宿で、「殺し屋殺し」のJK、崎宮ミサキによって瀕死の重傷を負った四乃山ポルカの体で目覚め、理由も分からぬまま、なし崩し的に四乃山ポルカとして生きることになる。転生後も屍神殿だった頃の力が使えるポルカ(仮)はそこで、警察が「厄ネタ」と呼ぶ、かつて自分がいた異世界絡みと思われる奇妙な出来事に巻き込まれていく。
1期はこれから本格的に物語を動かすための仕込み、というかキャラの顔見せみたいなものだったので、正直これで面白いかどうか判断するのは難しいのだが、これだけの準備があれば何か面白いことをやってくれるのでは、というワクワク感はある。揃いも揃ってやたらとクセの強いキャラクタたちも魅力的だし、10月から予定されている2期(公式サイトでの呼び名は第2クール)が楽しみだ。
評価はその期待も込めてB-~B。

『天国大魔境』

物語は、隔離された場所で何不自由なく暮らす少年少女たちが「外の世界」に関心を持つ、というパートと、15年前の“大災害”によって廃墟となった世界を「天国」を目指して旅する1組の少年少女のパートとが交互に語られる。前者はカズオ・イシグロの『私を離さないで』や、アニメでは『約束のネバーランド』などを彷彿とさせるが、キャラクタ・デザインや物語展開を見ると、原作者は大友克洋(あるいは『AKIRA』)から相当影響を受けたようだ。物語自体、『AKIRA』(マンガ版の方)の続編のようなつもりで見ると、とてもシックリ来る(あくまで私の個人的な感覚だが)。
OP動画は今期放送されたアニメの中でもピカイチで、制作がProduction I.G.だけにアクションシーンのキレも抜群。ただ、どういう物語なのかということも含めて全体が霧に包まれたような謎めいた作品なので、そういう色が生かし切れていないきらいはある。放送された全13話は切りがいいといえば、そう言えなくもないが、1期の内容だけでは消化不良感がハンパなく、物語としては「俺たちの戦いはこれからだ」どころか「まだ何も始まってない」という段階。原作はまだ連載中のようなので、その意味でも物語の全体像は不明。
30分で追いつけるダイジェスト映像を制作したり、第1~8話を無料公開したりして、2期制作への機運を盛り上げようとしているようだが、果たして??
作品全体の持つドライな感じが結構好きで、評価はB~B+。

『僕の心のヤバいやつ』1期

『スキップとローファー』と並ぶ今期のダークホース。陰キャの中学生、市川京太郎の「僕には殺したい女がいる」というセリフで始まるいうこのアニメは、思春期真っ只中の中学生たちの織りなす、甘酸っぱくて屈折した青春ラブコメである。市川が「殺したい」と思っているのは、同じクラスの山田杏奈。中学生ながら雑誌の読者モデルもやっている山田は、一応芸能人のくせにいつも大量のお菓子をポケットに忍ばせ、ヒマさえあれば隠れて食べている。天真爛漫さと傍若無人さが同居する山田が気になって仕方がない市川は、実は彼女が好きだということに気づくのだが…。
中学生が主人公のアニメでは『明日(あすび)ちゃんのセーラー服』があるが、私自身が陰キャで理屈屋で屈折した性格のせいか、まるで市川がかつての自分を見ているようで、『明日ちゃん~』よりこっちの方がずっとリアルで身近に感じる。劇的なことが起こるわけではないが、山田という存在を通じて市川が自分自身を見つめ直し、不器用に変わっていくところが、見ていて本当に眩しい。
評価はA-。第2期制作決定ということで、楽しみに待ちたい。

『マイホームヒーロー』

娘が悪い男に捕まって、(娘本人はそう思っていなかったが)男から始末されそうになっていることに気づいた父が、娘と縁を切らせようとその男の部屋に乗り込んでいき、結果として男を殺してしまう。父は母の協力を得て男の死体を始末するが、男と連絡が取れなくなった仲間たちや、その殺された男の父親が不審に思って動き出す。
アニメーションそのものの出来はあまりよくないが、物語の強さという点では今期No.1といってもいい作品だろう。主人公である父が毎回「これで詰んだか…」という危機的状況に直面しながらも、何とかそれをかいくぐっていく様が凄い。しかも彼を支えるのは「家族を守りたい」という思いだ。OPで歌われる「何を引き換えにしようとも 何度だって汚すよこの手なら」という歌詞は、聴くたびにグッとくる。
原作は「ヤンマガ」連載のマンガで、連載はまだまだ続いているものの、アニメとしては映画『太陽がいっぱい』風のラストで終了か。
制作は手塚プロダクションだが、主要な部分の多くを海外に外注しているようで、正直なところ絵の出来が残念で、それがなまじ物語がいいだけにもったいない。
評価はサスペンスとしてのストーリーの上手さを買ってB-~B。


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