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経済的自立が個人主義の基礎である英国の歴史

2011年05月01日 | カルチュラル・キーワード備忘録
『近代文明の誕生』(川勝平太著、日経ビジネス文庫、2011年4月)より。

ケンブリッジ大学教授アラン・マクファーレンの『イギリス個人主義の起源』(1978年)によると、英国人の自由とともに個人主義を重んじる価値観の根底には、土地制度があるという。

▼これまで日本で流布している通念

・私有財産制は資本主義社会の本質であり、近代社会の基礎。
・それは15世紀後半から16世紀初めに英国で成立した。
・このような通念は、カール・マルクスやマックス・ウエーバーの影響を受けたもの。
 ⇒ 氏族社会から血縁共同体を経て契約社会にいたる発展の段階を経て私有に基づく近代資本主義が誕生。

▼マクファーレンの説

・英国で高度に発展した個人主義は、土地所有の単位が世帯や家族でなく、もともと排他的な個人であったことと不可分。
・英国では資料に見出される限り、子供は生産可能年齢になると家を出るのが当たり前。
  ⇒ 子供がものにした富を親もあてに出来ない。
    ⇒ 英国人の親子関係は、家父長制からほど遠い「契約」の性質までもが認められる。
  ⇒ 子供は家を出て奉公人となり、女子の離村も珍しくはなかった。
    ⇒ 早くも14世紀の段階で土地が完全に「商品」になっていた。
    ⇒ 土地の所有権の移転は、家族内で行われるよりも、家族以外が圧倒的に多く全体の8割以上。
    ⇒ もちろん、女性も土地保有者。
・つまり、英国社会は、歴史的資料の示す限り、もともと市場志向をもつ個人主義的な社会。
  ⇒ いつでも自由に土地を処分する権利と自由を個人が持っていた。
・土地所有の起源は史料の存在する限り、少なくとも13世紀にまで遡れる。
  ⇒ つまり、私有制の基準を採用するならば、英国はすでに13世紀において“近代的”であった。

日本人は、近代の特徴を自由・個人主義・民主主義というように信じ込んでいる。
日本で土地の私有制が認められたのは、明治5年(1872年)。
土地の私的所有の認可は、国民に経済的自立や個人主義の気風を起こすためという考えではさらさらなく、もっぱら財源確保のためだった。
日本では、自由が利己主義に転化し、地租改正から一世紀以上経って、土地は投機の対象となり、私有権の名のもとに勝手放題のことが行われるようになった。

(以上、『近代文明の誕生』36~39ページより)

う~ん、これじゃ真面目すぎる夏目漱石は、神経衰弱になるはずだわな・・・。
底の浅そうな「グローバリズムの旗手」達も、こういう基本的なことを考えたほうがいいよね。
現在、ビジネス上、「英語」は大切だけど、社内公用語を「英語」にすることの意味とかね。

そして、僕の個人史を洗い直すとき、やはり「自由」「個人主義」が重要なキーになるのです。

近代文明の誕生―通説に挑む知の冒険 (日経ビジネス人文庫)
川勝 平太
日本経済新聞出版社

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