南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

千の風は南の空にも吹いている

2007-02-20 15:18:30 | アジア
今朝、NHKの『生活ほっとモーニング』を見ていたら、「わたしの
"千の風になって”」
というのをやっていました。今日は
シンガポールはまだ旧正月の休みなのです。ゲストは中島啓江
さんと、千住明さんでした。暮れの紅白歌合戦で秋川雅史さん
が歌った「千の風になって」が、身近な人をなくした人の心の
支えになっているという内容でした。中島啓江さんがステージ
で、『千の風になって』を歌っているのも紹介されましたが、
彼女の歌も素敵だったし、聴衆が涙を流しながらも微笑んでい
るというコメントが印象的でした。

去年の12月頃だったか、NHKのテレビを見ていたらハイビジョン・
スペシャルで、この詩が朗読されていて、思わず見入ってしま
いました。木村多江さんが、アメリカなどを旅して、『千の風
になって』の元の詩が、世界でどのように人々をいやしている
のかをレポートしていました。いい番組でした。

それから、新井満さんの『千の風になって』(講談社)を買い
ました。この本の中で、「あとがき」に代える十の断章の中の
6番目の章にとても面白い部分がありましたのでご紹介します。

「遅かれ早かれ、僕は逝くことになるだろう。そこでお願い
なんだがね」
「はい、何でしょう」
「僕の葬式の時は、ぜひこのCDを遺影のうしろから流してくれ
ませんか」
「わたしが先に死んだら、どうするんですか」
「たぶん、それはないと思うね。頑強な君より、ひ弱な僕の
ほうがきっと先に死ぬさ。そうに決まっている。それは自信を
もって言えることでね。だから頼むよ」
妻はしばらく黙っていたが、やがてぽそりと呟くように言った。
「りょうかい」
それからすぐにつづけて、
「ところで死んだあとあなた、何に生まれ変わるつもりですか」
「さあてね...」
私も、まだそこまでは考えていなかった。
「あの歌のように、光や風になるのもいいが、象やライオンと
いう手もある。いや、いっそ屋久島杉のような樹木になるかな」
「一生のお願いがあるんだけど」
妻はおもむろに口を開いて言った。
「何?」
「ナマコだけはやめてください」
妻はナマコが大の苦手なのである。
(新井満「千の風になって」より引用)

これを読んだときは、思わず吹き出してしまいました。私の
妻もナマコが大嫌いなので、私がナマコに生まれかわるのだ
けは困ると言っておりました。

この写真は、昨日までいたサムイ島で撮影したものです。空
は青く晴れ渡り、とても気持のよい旅でした。このような空
に吹いている風なども、千の風なのかなとふと思いました。

母が亡くなってから間もなく一年になります。このブログ
の去年の3月の頃に書いたのですが、ちょうど私がお見舞い
で帰っている間、他界しました。3月5日のことです。
今週末、一周忌で田舎に帰ります。

去年の正月は、おせち料理を美味しそうに食べていたのに、
2月には入院して、病状は悪化していっていました。母が
亡くなるときに、外国にいる私が来てくれるのかをいつも
気にしていた母でしたが、私が田舎にいる間に、母は亡く
なりました。私がその時のために呼ばれたのか、それとも
母が気を使って、私が滞在している間にあの世に行こうと
思ったのかわかりませんが、不思議な出来事でした。

私が数年前、シンガポールに来てまだ間もない頃、両親に
一度遊びにきてもらおうとして、パスポートを取る手続きを
しようとしたことがありました。母は以前から、糖尿病だっ
たので、病院に英語で証明書を書いてもらっていました。
しかし、パスポートをとらぬうちに、母がまた入院したり、
結局外国には一度も行けないで、あの世に行ってしまいました。

ひょっとしたら、母は、千の風になって、シンガポールとか
サムイ島とかの南国の空を吹き渡っているのかもしれません。
風にはパスポートもいらないので、自由に飛び回っているのか
もしれません。母が亡くなってから、まだ一年も経たないの
ですが、ずいぶん遠い昔のことのようにも思えます。

今日、シンガポールのコンドミニアムの部屋の窓を開けている
と、とても気持のよい風が海のほうから吹き込んできます。
ひょっとして、母がこの風になって、何か伝えに来ているのか
なという気もします。もっとしっかりしなくっちゃ。

サムイ島と唯川恵の「ベター・ハーフ」

2007-02-20 01:04:21 | アジア
サムイ島からシンガポールに戻ってきました。今日の昼過ぎ
まで、サムイ島のチャウエンビーチにある、ブティック・
ホテルのブリラサにいました。この写真は、そのレストラン
のグリーン・オリーブからの風景です。これはイタリア・
レストランなのですが、タイ料理もあり、その味はかなり
美味しく、昨夜のディナーに引き続き、本日の朝食、そして
昼食と連続で利用してしまいました。

今日の昼食は、タイ式フライドライスをシーフードで頼んで
みたのですが、これがまた恐ろしくうまい。普通のフライド
ライスなのに、味付けが違います。今までタイでフライド
ライスを何度も食べているのですが、ここのフライドライス
はこれまでで最高の味です。妻は、フレンチフライを食べた
だけですが、これも美味しかったです。

まだ若いイタリア人のシェフが、客の一人一人に挨拶に来て
いましたが、味もよく、スタッフの接客もよく、のんびりと
して静かで、おまけに目の前の海が信じられないくらいに
奇麗だったのです。マスターカードの宣伝で「プライスレス」
というキャンペーンがありますが、この景色はまさにプライス
レスだなあと思いました。

私は、この旅行に、唯川恵の「ベター・ハーフ」という本
を持ってきました。まだ読み終わっていませんが、八割くらい
まできました。あと少しです。

妻が、この旅行のために本を二冊くらい買ったというので私も
何か買おうと思って、シンガポールの紀伊國屋に行ったら、
なぜかこの本を選んでしまっていました。この著者の本は今ま
で読んだ事ないのですが、この本を選んだ理由は次の通りです。
1)主人公の名前が自分の名前と同じだったこと。ちょっと
立ち読みしたら他人事とは思えませんでした。
2)主人公の仕事が広告代理店であること。自分も広告の仕事
をしているので、ますます他人事とは思えませんでした。
3)著者の唯川恵(ゆいかわけい)さんが、1955年生まれで
私と同じだったこと。ますます興味がそそられました。
4)そして、この小説は、7月1日に行われる結婚式のシーン
で始まるのですが、7月1日が私の誕生日であること。ますます
他人事とは思えませんでした。
5)タイトルからして、どうやら夫婦の話しであるらしいこと
だいたい以上のような理由です。

サムイ島のビーチでこの本を読み始めて、思ったことは、
これは男が読む本ではないのではないかということ、またこの
ような奇麗で平和なリゾートで読むべき本ではないのではない
かということでした。読み進むにつれて次々と起こる悲惨な
出来事と、この美しいリゾートとのギャップに頭がおかしく
なりそうだったのですが、どんどんと引き込まれていきました。

これは妻だったらもっと喜んで読むのだろうという気がしまし
た。途中までしか読んでいないのに、この悲惨な夫婦の話しを
妻にしたくてしかたがありませんでした。しかし、「私が自分
で読みたいので、ストーリーは絶対に教えないで」というので
す。ということで、このブログにもしばらくは詳しいことは
書けません。

途中まで読んで、こんなに問題の多い夫婦もいるんだ、これに
比べれば自分達は何て幸せなんだろうかということを考えさせる
効果がありました。まさに反面教師です。いろんな問題がぎっし
りとつまっていて、なんだか面白くなってしまいます。

というようなわけで、サムイ島でこの本を読んだのは、結果論で
言えば、非常によい選択であったと言えるのかもと思います。
まだ、この本の結末を知らないので、ちゃんとしたことは言えま
せんが、また読み終えましたら、コメントしたいと思います。