南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

恥ずかしい国のベビー・マシーン

2007-02-04 20:45:45 | 日本
この写真は、2月3日のシンガポールの代表的新聞のストレー
ツ・タイムズの13ページに掲載された記事です。柳沢厚生労働
大臣の「女性は産む機械」発言問題に関する記事です。

見出しは、"Baby-machine gaffe shows Japan leaders' mindset"
というふうになっています。"gaffe"は「失言」という意味です。
"mindset"は、考え方とか、価値観といった意味です。全体では、
「子供を産む機械発言は、日本の指導者たちの価値観を露呈」
というふうな見出しになります。ここでの論点が、柳沢厚生労働
大臣の個人攻撃ではなく、日本の指導者全体の価値観の問題と見
ていることがちょとユニークです。

「産む機械」は、"birth-giving machine"とか、"child bearing
machine"とか訳されていますが、この記事で使われている"baby-
machine"という言葉がコピーとしては簡潔で、インパクトがあり
ます。

1999年9月9日に、モーニング娘は「LOVEマシーン」をリリース
し、空前の大ヒットになるのですが、これは若い女性を恋愛する
機械というふうに表現していたわけで、これも差別発言といえな
いこともないでしょう。このBaby Machineという表現は、この
モーニング娘の「LOVEマシーン」に繋がるポップさがあります。
しかしながら、それを発言したのが、権威のある大臣だったとい
うところに不幸があります。

右側の写真で、深く頭を下げている柳沢厚生労働大臣の写真が
掲載されていますが、これじゃあ誰だかわからんだろうが、と
つっこみを入れたくなります。しかもこの写真、構図が酷く、
報道写真としては失敗写真と言ってもよいでしょう。この写真
の人は一体どこで何をしているのだろうと理解できる人がどれ
だけいるか心配です。その写真の下についているキャプションは
「悔恨:日本の健康関係の柳沢大臣が、木曜日、衆議院の会合で、
自身の発言を謝罪」というようになっています。

本文は、「彼の妻さえも憤った」という短い文章から始まります。
「産む機械」発言が大変な事態を引き起こしたということが解説
してあり、安倍首相の支持率低下とともに、野党の攻撃を引き起
こすことになったという流れを説明しています。

「私の妻にも怒られた」と71歳のミスター柳沢は先週、日本の
レポーターに語ったということも紹介され、「がんばってもらう
しかない」という部分は"All we can ask for is for them to
do their best per head"というふうになっています、

この後、これは大臣個人の問題というよりも、権力階級にある
男性全体の問題であるとする慶応大学のMs Sumiko Iwaoという
人の発言が紹介されています。また、26歳のKeiko Otsukiという
一人の女性は、「女性としては、モノのように扱われていること
に怒をおぼえます」と語っているのが紹介されています。

記事は、後半になり、問題発言の背景になっている出生率の低下
の問題に関して述べられています。出生率って英語で"fertility
rate"って言うんですね。さらに記事は、少子化問題によって
引き起こされる問題の例をあげています。曰く、女性が家事と
仕事のバランスをうまくとらなければいけなくなるとか、夫が
長時間仕事をしなければならなくなるとか、って、おいおい、
そのような見方はまるで小学生の作文みたいですぞ、シンガポー
ルを代表するストレーツ・タイムズさん。

シンガポールも少子化問題に悩んでいるのですが、まだまだ平均
年齢は日本よりも若く、外国人労働力も豊富に活用しているので、
日本の少子化の問題よりも状況は深刻ではないので、社会構造的
な問題はそれほど深く論じられていないのでしょう。

実際、出生率だけみると、日本は、2005年に、1.26という記録的
な低さになったということですが、シンガポールはとっくに2003
年に1.25を記録しているのです。

この記事は、再び失言問題に戻り、この失言問題の決着は、愛知
と北九州で行われる地方選挙の結果如何だろう、と締めくくって
います。ニュースソースはロイターのようです。一部、朝日新聞
のニュースも参考にしているようです。

さらに日本関連の記事が左下に続いていますが、安倍首相のグッ
ズの写真が出ています。こんなんあったんですか?これで安倍
首相は、最近落ち来んでいる支持率を回復したいとか。こんな
マグカップや、ペンや、ポストイットでそんなことできるんかい
ね。でも、ちょっとこれほしくなりますね。

さて、本論といいますか、「子供を産む機械」発言に関しての
私の考え方を若干述べておきましょう。遠く離れた異国から見る
と日本のこの騒動は、ちょっと違和感があります。柳沢大臣の
発言の記録を冷静に振り返ってみると、あくまでもそれは言葉
尻の失言であり、直接女性差別論を述べているわけではない。
人口問題の未来予測をするために、比喩として「機械の数」と
いう表現をしただけなのですね。こんなことを発言すると、
私も、やりだまにあげられるのかもしれませんが。まあここで
柳沢さんが「機械」という言葉をあえて選択したことの裏には、
そのような差別的視点があったからだと言われてしまえば、
なんともそれは仕方のないことではありますが。このような
局面に追いやられた柳沢さんには、何となく同情を禁じえません。

しかし、日本のマスコミのエスカレートぶりはどんなもんかと
思います。大学(英文科)でシェイクスピアの『ジュリアス・
シーザー』に関しての授業をとっていたことがあるのですが、
このお芝居は、群衆心理の愚かさの話と読み解くことができま
す。マスコミに踊らされた群衆が、怒りに任せて柳沢大臣を
追いやる。なんか歴史は繰り返すという感じですね。

シンガポールで、柳沢大臣失言問題の記事を探したのですが、
ストレーツ・タイムズのこの記事のほかは、本日の日曜日の
記事でちょっと取り上げられていたくらいです。しかも何と
なく歯切れが悪い。この上の記事は、男性全体に対しての
連帯責任を要求している感じでもありますね。

他の新聞も探したのですが、あまり記事が見当たりませんで
した。おそらく外国メディアは、もっと重大な事件がいろいろ
あるので、こういう記事は重要度が低いと判断されるのかと
思います。野党の皆さんのお怒りもごもっともですが、仕事
のボイコットはプロとしては子供っぽい所作と見えてしまい
ます。野党の皆さんは、この機会に与党を思い切りやり玉に
あげられるので、自分たちの問題点を帳消しにできるという
戦略的なメリットもあるということも十分理解できます。

まあ、何と言うか、日本はこういうことで、じっくりと議論
をしていられる非常に平和で豊な国ということでありますね。