南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

ぶた年の始まりに愛を叫ぶ

2007-02-05 22:05:23 | シンガポール
今年は2月の18日が旧暦の正月なのですが、シンガポールの街
はいたるところに旧正月の飾り付けが飾られていて、やはりこ
の国も中華圏の国なんだなあと思い知らされる今日この頃です。

中国暦では、旧正月が来て新しい年になるのですが、十二支の
えとは日本では「いのしし」というのが常識ですが、中華圏で
は「ぶた」の年なのだそうであります。漢字で書くと、猪とか
亥とか書くのですが、これが意味するところは、「いのしし」
ではなく「ぶた」なのだそうです。いのししは中国語では
「野猪」、つまり「野生のぶた」というみたいです。

英語では、"Year of Pig"と言います。シンガポールで10年く
らい住んでいますが、このえとの年は初めてなので、"Pig"
と英語で言われると、カルチャーショックです。日本の英語
の常識としては、"Year of Boar"ですよね?

ここであらためて"Boar"という言葉の意味を調べてみたら、
「いのしし」という意味もあるのですが、「(去勢しない)
雄豚」というのが一番最初に出ている意味でした。いのしし
を正確に表記すると"Wild Boar"というようなのですね。これ
は奇しくも中国語の「野猪」と同じ雰囲気です。

これって、「野ブタ。をプロデュース」の「野ブタ」と同じ
こと?なんだか、ぶたと、野ぶた、野生のぶたと、いのしし
の区別がよくわからなくなってきました。我々日本人は、
いのししは豚とは別種の動物であると認識し、両者をへだて
る区分が明確にあります。♪いのししとぶたの間には、深く
て暗い河がある~という感じですね。

この区分が世界の常識だと思っていたのですが、どうやら、
中国圏では、いのししは、ぶたという概念のほんの一部の
存在で、野生状態のぶたということでしかないような気がし
ます。このへんの認識は、文化人類学的にもう少し厳密に
研究されないといけないのかもしれませんが。

ということで、世界的に見れば(と言っても十二支が関連し
ているのは、アジア地域のみでしょうが)、今年は「ぶた年」
のようです。ちなみに、十二支を使っているのは、日本や
中国だけでなく、韓国もそうだし、タイも、ベトナムも、
チベットも、モンゴルもそうみたいですね。(タイ、ベトナム
などでは兎年の代わりに、猫年になるようですが、亥年は完全
に豚年のようです)

シンガポールは、これら十二支が使われている国の中で、唯一
英語が国語(国語は4つあるが)になっている国なので、
このへんの認識のギャップが一番はっきりと現れてきます。

上の写真は、シンガポールの"TODAY"というフリーペーパーの
1月26日号の「フォールスカバー(表紙の上につけられた広告
ページ。広告でありながら新聞のトップ記事のように見える)」
です。この日は、時計のスウォッチが、フォールスカバーの
4ページで広告を行っていました。

スウォッチは、旧正月の企画として、ぶたのキャラクターの
時計を発売していて、そのことがこのページに出ています。
いのししではなくて、100%ぶたです。このビジュアルの若者
たちは、明らかにブタ鼻のポーズ(?)です。

さきほど会社の近くにあるスウォッチのショップに行って見て
きたら、ありました。ショーケースの中に燦然と輝く旧正月
コレクション2007。ベルトにぶたのイラストがついていて、
時計の文字板の上には金色の文字で「亥」の文字。さらにこの
時計に、おまけとして、金色のぶたの貯金箱(この上の写真に
出ているもの)とラッキーなゴールデン・コイン(金貨では
なく、金色のコインですが)がついていて、このセットが豪華
な帽子入れのような赤いパッケージに入ってくるというもの。
これが、パッケージ価格で$119(日本円で9365円くらい)なの
です。私は欲しくなかったのですが、スウォッチマニアだった
ら、あるいはブタマニア(?)だったら欲しくなるのかなと
思いました。

シンガポールでは、今、あちこちで豚が活躍しているのですが、
今年の1月27日付けのasahi.comの記事によれば(アドレスは
http://www.asahi.com/international/update/0127/018.html
です)、中国ではテレビCMで、豚のキャラを使わぬように通達が
出たのだとか。「豚を不浄と考えるイスラム教徒の宗教感情に
配慮した措置」だとか。コカコーラが豚を使う予定だったのが、
急遽パンダにするなど、春節向けのCMに豚を使う予定だった
広告主は大変なことになっているということです。

中国でのイスラム教徒は2000万人くらいいるようですが、中国
全体から見れば少数です。シンガポールでは、イスラム教徒は
15%もいるのに、ぶたが広告で使われていることに関しては至っ
て寛容です。このコスモポリタンな国家では、いろんな宗教や
文化が混在しているので、いちいち他の宗教行事に対しては
干渉しません。というわけでシンガポールでは、広告でもぶた
が堂々と大活躍しているという状況です。

しかし、中国のこの決断は何かちょっとエキセントリック。
ブタの丸焼きとかばんばん食べておきながら、テレビCMでは
ブタのキャラクターを使ってはならぬという。同じ中華圏でも
いろいろなことがあるものですね。

さて、ぶた年というのは、とても縁起のよい年だそうで、
「多産多幸」の年なのだそうです。「多産」といえば、話題の
少子化問題にはよい年という感じですが、柳沢厚生労働大臣が
「機械」という比喩の代わりに、「ぶた」という比喩を使って
いたら、もっと修羅場になっていたでしょう。
少子化問題、人口問題は、へたに日常レベルで語る話題ではな
いですね。

韓国では、「お金」の発音と「ぶた」の発音が同じということで、
ぶたの夢を見ると金持ちになれるという言い伝えがあるそうです。
日本でも、ブタは「とんとん拍子にうまくいく」ということで
縁起物となっています。ぶた年が、世界中の皆様にとりまして
よい年となることを願っております。