南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

シンガポールのクレージーホースの栄枯盛衰

2007-02-10 07:50:07 | シンガポール
クレージーホースというキャバレーはパリでは有名なのですが、
シンガポールでは2005年の12月、アジアで初めての店として
営業を開始しました。お固いシンガポールに、クレージーホー
スができるということは、革命的な出来事であり、観光客を
大量に呼び寄せるための起爆剤になるのではと期待されており
ました。

2005年、11月、シンガポールでアジア広告会議(ADASIA 2005)
が開催されましたが、このイベントで、クレージーホースの
プレビューが行われました。この様子は私のブログでもご紹介
いたしました。こちらです。→(クレージーホースを見たぞ。)

2005年、12月、シンガポールでリニューアルオープンした
クラークキーの一角に、クレージーホースは大々的にオープン
しました。当時はチケットをとるのも大変という日もありまし
た。

しかし、それから月日が経ち、客席は空席が目立つようになり、
毎日の客席占有率は35%程度になり、採算が取れなくなりまし
た。これを経営するエンワー・オーガナイゼーションは、クレー
ジーホースの閉鎖を決定し、この二月四日の興行を最後に、わ
ずか一年ちょっとの歴史の幕がおろされました。

この上の画像は、二月三日の中国語のフリーペーパー"my paper
我報”の表紙に乗った記事です。「シンガポール人に必要なの
は何?開放性、それとも性の開放?」という見出しですが、
シンガポールに必要なのは、「性」以前に「開放」であるとし、
法律の厳しさに触れる内容となっています。

営業赤字が4億5000万円くらいに膨らんでしまったそうです。
担当者は「空港や公共交通機関で広告を展開できず、認知度が
上がらなかった」と説明しています。公衆道徳を乱すとの理由
でヌード雑誌の販売が禁止されている国とあって、また日本か
ら輸入されて来る週刊誌のヌードグラビアも通関でそのページ
だけ切り取られてしまうシンガポールでは、セクシーなのダン
サーの露出は小さな新聞広告などに限られていたそうです。

また、この写真にあるように、肌の露出もかなり制約があり、
かなり妥協をしなければならなかったようであります。結局、
私は、このシンガポールのクレージーホースには行けずじまい
に終わってしまいました。

シンガポールでは、カジノなどの総合リゾートの計画が進行し
ていますが、クレージーホースの開業はちょっと早すぎたのか
もしれないと言われています。

二十年以上前、パリに何度か出張に行ったので、本場のクレー
ジー・ホースを見ました。リドも見ました。ムーランルージュ
も見ました。どれも、お色気が売り物のショーですが、その
奇麗さと、演出の素晴らしさに感動したものです。中でも
クレージーホースは、モダンでシンプルなパーフォーマンスで
した。リドは、ど派手なレビューで、これはこれで素晴らしい
のですが、クレージーホースは女性の身体の美そのものを表現
しようとしていたように思います。

柳沢厚生労働大臣は、女性を「機械」に喩えて、大顰蹙を買い
ましたが、クレージーホースのダンサーたちは、その動きは
まさに「機械」 です。おもちゃの兵隊をヌードダンサーが演じ
ているような感じで、動きは軍隊のようにストイック、表情は
基本的には無表情です。いやらしさはほとんどないのですが、
それを演じている女性たちがヌードであるということで、妙な
エロチシズムが醸し出されているという感じです。

結局、シンガポールのクレージーホースは、間違った季節に咲
いてしまった徒花(あだばな)となってしまったのですが、
やがて、人々の記憶からも消えていくのでしょう。ちょっと
一抹の寂しさはあります。

また、同時に、この情報は、それほど大きなニュースにはなっ
ていないので、観光パンフレットや、旅行ガイド、いくつかの
観光サイトにまだクレージーホースのことがかなり掲載されて
います。シンガポールに来たら、クレージーホースに行こうと
思っている人たちも多くいるのかもしれません、そのような人
たちが、地図を見ながら、現場にたどり着いて、そこに廃墟と
なったクレージーホースの建物を見たときの失望感は、いかば
かりかと察せられます。まあ、実際のパーフォーマンスを見て
失望するよりもましかもしれませんが。

以前、シンガポール観光局の広告で、「If your guide book
is more than 8 months old, burn it. (もしもあなたの
ガイドブックが8ヶ月以上古いものだったら、焼き捨てろ)」
というキャッチのものがありました。シンガポールは、次々と
新しいアトラクションができているということをアピールした
ものですが、これが逆の意味で真実になってしまったことが
皮肉です。本当に、シンガポールの観光ガイドはちょっとでも
古いと意味がありませんね。