南の国の会社社長の「遅ればせながら青春」

50を過ぎてからの青春時代があってもいい。香港から東京に移った南の国の会社社長が引き続き体験する青春の日々。

5億円の五輪招致ビデオの制作費は妥当だったのか

2010-05-26 01:48:14 | オリンピック

5月24日、2016年夏季五輪の招致活動を検証するため、都議会
特別委員会が、招致経費149億円のうち67億円を受託したD社
の幹部や日本オリンピック委員会(JOC)会長ら計3人を参考人
として招き、意見聴取したというニュースがありました。

国際オリンピック委員会(IOC)総会用の約10分間の映像制作
費が5億円かかった問題について、D社の前スポーツ事業局長は
「制作費は品質によって大きく異なり、長さで論じられない。
IOC委員や海外メディアからも高く評価された」と妥当性を強調
したというのです。さらに「7カ国で40時間にわたって撮影した
ものを10分間に凝縮し、高品質な作品になった」と説明したの
だとか。

この件に関しては、かねてからオリンピック招致のプレゼンテー
ションに関して、いろいろコメントをしてきた私といたしましては、
このD社の人のコメントに関して是非一言、言わせていただきたい
と思い、今この記事を書きだしたわけでございます。

この問題の都議会特別委員会の模様がニュース映像の中にありまし
たので、ここにご紹介します。

いきなり「失敗した」という表現はちょっと可哀想な感じもするの
ですが、これは事実なので仕方ないでしょう。JOCの竹田会長が、
今後も日本でのオリンピック開催を目指すと力説し、「再度、
東京都でお考えいただくことだと思う」などと言っておられますが、
東京都民の皆さん本当にまだオリンピックやりたいと思ってらっ
しゃるのですか?もしそうだとしたら、それは何のために?

ところでこのD社の5億円と言われているビデオ映像。これ一本の
作品で5億円ということではなくて数本で5億円なんですよね。
一本で5億円だったらいかにも高い。でも一本一億円で5本だった
らまあありえない金額ではない。バブルの時代だったらあったで
しょうね。いまなら広告代理店からしたら夢のような予算額です。

一番上にアップした画像は、コペンハーゲンでの東京のプレゼンの
中で使われていたD社制作のビデオの中のワンカットですが、正直
金はかかっているかもしれないのですが、駄作だと思いました。
以前にもこのブログで批評しましたが、「高品質」とはいいがたい
作品だったと思います。画質は高品質かもしれませんが、映像作品
としては、まったく心動かされない、つまり過激な言い方をさせて
もらえば、どぶに金を捨てるような作品であったと思います。

この作品をYouTubeで探してみたのですが、見つかりませんでした。
おそらく組織の方がコントロールしたのでしょうか?それとも
誰もYouTubeにアップしようと思わないほどの作品だったという
ことなんでしょうか?しかし別の映像がありましたので、こちらを
アップしておきましょう。これIOCの総会で上映された数本のビデオ
の中に入っていたのかどうか定かではないですが。まずはこちら。



女性ばかりが登場しますが、国際的な視点からすると英語があまり
よくない。発音はなまっていてもよいのですが、英語を話すことに
慣れていないぎこちなさがありますし、見ていて何か変です。
残酷なことを言うようですが、国際レベルのプレゼンで勝ち残ろうと
思ったらもうちょっとがんばらなければダメです。後でご紹介します
が、リオやマドリードは、英語の発音はなまっていても、説得力が
あります。情熱があります。東京のものは残念ながらそれが一切
感じられませんでした。

滝川クリステルがフランス語で話すところも、フランスの人からする
とどこかの見知らぬレポーターがナレーション原稿を淡々と読んでい
ると感じるだけのような気がします。最後のミスユニバースの人も
あまり綺麗に撮れていない気がします。「夜でも安全」ということを
アピールするために夜の11時に撮影しているようなんですけど、
東京ってそんなに安全と言えるんでしょうか?通り魔事件なんて
ありません、地下鉄サリン事件なんてありません、痴漢なんていま
せん、ヤクザなんていません、犯罪なんてありません、と本当に
言えるんでしょうか?

この映像に関してもう少し言わせていただければ、東京の映像が
全く魅力的に見えません。カメラワークがひどい。お台場も全然
綺麗じゃないし、六本木だって全然お洒落な感じがしません。
この作品も5億円の一部になるのでしょうが、これだったらお金の
無駄と言われても仕方ないと思いますね。

こちらはまた別のビデオ映像。

東京は綺麗な街で、人々は礼儀正しいというのはわかるのですが、
静かすぎて、オリンピックを是非ここでやらなければという熱意
は伝わってきません。最初の都市の風景は、入れ物だけのコンク
リートの街という気がするし、祭りや寿司はいかにも唐突だし、
おじぎをする日本人の姿がなんか気持ち悪いんですね。なんだか
よくわからない映像です。これもお金の無駄のような気がします。

さてもう一つ別のもの。こちらは、会場設備とかをCGを使って
紹介した映像です。

すごいCGを使って金をかけているのですが、この安っぽさは何?
それと他の映像にも共通しているのですが、音楽がひどい。この
いかにも安っぽい企業紹介ビデオのようなのは手抜きとしか思え
ません。もうちょっとなんかできなかったんですかね、D社さん。

こちらはまた別のもの。

よくまあ同じような映像をいくつも作るもんだと感心します。
こんなに沢山のバージョンを作ったら億もかかるわなあと思って
しまいます。でも何かこの街、オリンピックを開催すべき都市
というイメージが弱いですね。こんなんじゃ勝てるわけない!

他にもまだ映像は作ったはずなんですが、これを見ればだいたいの
レベルはわかります。こんなんで5億円使ったのが妥当かと言われ
れば、私は妥当なはずないじゃないと答えます。ただし、それは
広告代理店の問題というよりは発注者である都の問題なんですけど
ね。我々広告代理店は予算が豊富にあればそれなりのお金は何とか
消化できるように工夫ができますからね。でもそんなお客さん
東京都くらいですよ。(他にもあるかもしれませんが)

ちょっとダメな映像ばかり見てきたので、どんな映像だったら本当
に効果的なのかという例をご覧意いれましょう。IOC総会でリオと
最終決戦となったマドリードの映像です。これは私のおすすめの
映像なんですが、これこそオリンピック誘致の映像作品です。
タイトルは「マドリード2017年」、オリンピックが開催される
2016年から1年が過ぎた2017年、人々はマドリードオリンピック
を終えて人生がどのように変ったのかを、いろんな人々の短い言葉
をつないで表現しています。

詳しくは後でご紹介しますが、私の過去のブログで紹介しています
のでそちらでご覧ください。

そしてもう一つの名作、リオの映像です。

これはメインの映像ではないですが、音楽と映像がめちゃくちゃ
いいです。日本の映像とはレベルが違います。

そして極めつけはこちら。リオのプレゼンを締めくくる最後の
ビデオ映像です。

いいですね。この盛り上がり、楽しさ、リオでオリンピックを
やったらこんなにも楽しいよということがよくわかります。
最後の空撮で、5輪の輪が見えてくるところ感動的です。

御参考までにこのブログ内でのオリンピックプレゼン関係の記事は
こちらです。ロンドンのプレゼンの時からあります。

ロンドンに学べ!(2006年8月24日)

2006年、オリンピックの最終選考がシンガポールで開催され、
ロンドンが選ばれました。そのプレゼンに関する記事です。

オリンピック誘致は参加することに意義がある?(2006年8月31日)

東京よ、過去のオリンピック開催地選考に学べ!(2006年9月1日)

東京オリンピック(2006年9月2日)

ここからはつい最近のコペンハーゲンでの選考会の記事です。

グッバイ、シカゴ、さよなら東京、アディオス、マドリッド(2009年10月3日)

東京は残念な結果に終わりました。

本当にこれでよかったの?東京のプレゼンテーション(2009年10月4日)

リオデジャネイロはプレゼンテーションも見事だった(2009年10月5日)

架空のオリンピック招致プレゼン・お笑いパロディ版(2009年10月6日)

これでいいのか、日本人の国際プレゼン能力!(2009年10月7日)

まぼろしのマドリード・オリンピック(2009年10月11日)

オリンピック招致における各国指導者の男の色気対決(2009年10月15日)

我ながらずいぶんいろいろとオリンピックのプレゼンのこと書いていますね。

よろしければ、こちらもついでによろしくお願いします。

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オリンピック招致における各国指導者の男の色気対決

2009-10-15 23:59:09 | オリンピック
コペンハーゲンでのIOC総会で、リオデジャネイロが2016年の
オリンピック開催地に決定されるのですが、最後に残った4つの
都市の応援のために、4人の国家主席がスピーチをします。
アメリカのオバマ大統領、日本の鳩山首相、ブラジルのルーラ
大統領、そしてスペインのサパテロ首相の4人でした。知名度
からすると、鳩山首相は他の三人に比べてまだ国際的には知られ
ていませんでした。まだ首相になって日も浅かったのでこれは
仕方のないことでしょう。

指導者のカリスマ性を計る物差しはないのですが、アメリカの
オバマ大統領、ブラジルのルーラ大統領、スペインのサパテロ
首相、この三人はカリスマ性という点ではいずれもかなりすごい
人たちだということができると思います。

最後の決戦で、リオデジャネイロと、マドリードが残ったので
すが、ブラジルのルーラ大統領と、スペインのサパテロ首相との
カリスマ対決も見事でした。

スペインのサパテロ首相は、1960年8月4日生まれ。まだ
49才という若さ。祖父はスペイン内戦の時にフランコ将軍に
処刑され、1977年、最初の民主選挙が行われたときに、17才で
社会労働党に入党するのです。2004年に首相に就任すると、
イラクからのスペイン撤兵をいち早く決定し、数々の画期的な
政策を行い、若年層の支持を集めます。また閣僚の半数を女性
にしてしまうとか、すごいんですよね。

一見、ミスタービーンのローワン・アトキンソンに似ていると
も言われていたりするそうです。相性は『バンビ』だとか。
『鳩ぽっぽ』とか『宇宙人』とか言われるよりも可愛いかも。
写真で見るとサパテロさん、ちょっとセクシーな雰囲気。

そういえば、今年、イギリスを中心にアンケート調査を行っ
ている「OnePoll」が、20カ国の女性1万5000人を対象に
「一夜を共にしたい国の男性」と「一夜をともにしたくない
国の男性」をアンケート調査を行ったのだそうです。その
結果は、最も一夜を共にしたい国の男性はスペイン人、
二位はブラジル人だったようです。奇しくも、オリンピック
招致で最後まで残った二つの都市と同じです。オリンピック
対決は男性のセクシー度対決であったのかもしれません。
そういえば、ブラジルのルーラ大統領をセクシーだとする
コメントがいくつかのブログにでていました。
いちおうこのアンケートを紹介しているサイトはこちら
→ http://news.livedoor.com/article/detail/4370475/
ちなみに日本人はランクインしておりません。

オリンピック招致の最終プレゼンで壇上に立ったサパテロ
首相は、ちょっと立派でした。まず彼は、インドネシアの
地震の犠牲者たちに哀悼のメッセージを伝えます。また2012
年のオリンピックが決まっているロンドンに対して、その
実現に向けての努力への感謝を伝えます。そして今回、最後の
選考にまで残った、シカゴ、東京、リオデジャネイロの各都市
に対してエールを送ります。この部分だけ見ても、サパテロ
首相の国際的な外交力を感じてしまいます。ちょっとこういう
部分、日本の政治家は太刀打ちできないなあと思ってしまい
ました。

さてこちらがブラジルのルーラ大統領。渋い声はセクシーな
男の魅力に溢れていました。

最後にリオが決まったときの涙もすごかったですね。貧しい
農家の息子が学歴もないまま大統領にまで登り詰めてしまうと
いうドラマチッくな人生。この人もスケール大きいですね。

オリンピック招致は、ひょっとして指導者のセクシーさと
関連がある?ロンドンが決まったときは、ブレアーさんが応援
スピーチをビデオでやっていたんですが、まあセクシーと言わ
れればセクシーでした。1953年生まれなので、僕より2つしか
違わないんですけどね。

もし日本が再度オリンピック招致を目指すのなら、その時の
首相は男の色気のある人でないと勝てないのかも...

まぼろしのマドリード・オリンピック

2009-10-11 21:35:48 | オリンピック
マドリードは2012年のオリンピックにも立候補していましたが、
破れ、今回再び、2016年のオリンピックに立候補して再び破れ
ました。東京も破れましたが、市民の支持率が90%近くで4都
市中最高の支持率だったマドリードの悔しさは、東京の比では
なかったと思います。

コペンハーゲンでのプレゼンテーションの時、レベッカ・ワイ
バーグというIOC委員からの「東京の地元の支持率が低かった
が、これを約30%も上昇させられたのはどのようなことでそう
なったのか、詳しく説明してほしい」という質問に、河野事務
総長は、「IOCの調査の後、かなりの盛り上がりを見せ、
最新の調査では80.9%となった」と回答しただけで、どうして
支持率向上を達成したのかは触れられませんでした。レベッカ
さんは、自分の質問の意図が正確に受け取られなかったことで
ちょっとがっかりしてしまったのではないでしょうか。

しかし、あまり盛り上がらなかった東京招致の支持率が80%
を超えていたというのはびっくりでした。でも本当かな?

しかし、マドリードはもっと盛り上がっていました。事前の
調査をみてもダントツの盛り上がりで、それはコペンハーゲン
でのプレゼンテーションにも顕著に現れていました。サマランチ
前会長をはじめ、カルロス国王、サパテロ首相がプレゼンに
参加したのを始め、招致委員会代表のメルセデス・コーゲンさん
(ホッケーのメダリスト)の説明も熱が入っていました。

この人は、自分でプロモーションビデオに登場して、マドリー
ドの素晴らしさをレポートしていくのですが、これがなかな
かよくできていました。各施設が具体的に映像、あるいはCG
で説明されていて、マドリードで開催することが全く問題ない
という雰囲気は非常によく伝わってきておりました。
しかしスペインは奇麗な人が多いですね。

また東京がアピールした環境に関しても、マドリードは自らを
「グリーンシティー」と称し、2016年のオリンピックを通して
街をさらに環境に適応した緑の街に生まれ変わらせるという
明確な計画を打ち出していました。

マドリードのプレゼンのコンセプトは、“Human Touch"そして
"We Believe"というキャッチフレーズでした。人間的な情熱と
それを信じる気持ち、極めて人間的な部分をアピールしていま
した。プレゼンのために用意された5つのビデオ映像もそれぞ
れ秀逸でした。ギターをベースにした音楽もよかったし、編集
もまた見事でした。スペインは広告の世界でもかなりレベルが
高いのですが、ひとつひとつの映像の作りはかなりよかったと
思います。

そして、最後の映像がすばらしかったです。2017年という
タイトルで始まるこの映像は、マドリードで行われる2016年
のオリンピックを通して、様々な人がどのように変わったのか
を描いたものです。すべてはマドリードでオリンピックが開催
されたらとう仮定に基づいているのですが、オリンピック選手
らしき人、オリンピックの観客、ごく普通の市民など様々な
人物が、スペイン語で、「私は~した」という短い言葉で語り
ます。

この女性は、「私は理解した」と言います。何を理解したのか
不明ですが、スポーツの大切さを理解したというのでしょうか。
こういう感じで、いろんな人々が登場してきます。
「私は見た」「私は感じた」「私は乗り越えた」「私は変わっ
た」などいろんな人が、いろんなコメントをしていきます。
その中に、こんな人たちも出てきます。

「私は跳んだ」とこの老人は言います。画面が引いていくと、
この老人は車椅子に乗っていて、とても跳べる感じはしません。
左のほうにテレビが見えてきます。そうかこの老人はオリン
ピックの中継を見て、跳べるはずのない自分も跳んだ感覚を
経験したのだな、ということがわかります。

夜のマドリードの街を走るバスにたたずむ一人の女性が振り
向くと、テロップに"I shouted"(私は叫んだ)という文字。
彼女は聾唖者のようで言葉を発することができません。
それでも彼女は、マドリードオリンピックで、肉体的には
不可能な叫びを経験したと言っているかのようです。

そしてこれが最後のコメントです。「私は忘れない」。
この青年は、マドリードオリンピックのことを一生忘れない
だろうと言います。

2016年に、マドリードでオリンピックが開催されたら、
こんなにもいろんな素敵な奇跡が起きる。街が変わるだけ
じゃない。マドリードの市民の一人一人の心が、スペイン
人に一人一人の心が、世界の人々の心が変わる。それほど
までに素敵で、影響力のあるマドリード・オリンピック。
そんなメッセージが、伝わってきます。

プレゼンの会場では、このビデオ映像の後で割れんばかり
の拍手が起こっていました。まるでアンコールとかいわん
ばかりの雰囲気のように聞こえました。マドリードが最後
のリオデジャネイロとの決戦まで残ったのは、しかも
ロンドンの次にまたヨーロッパはないのではというハン
ディを乗り越えて残ったのは、それだけの理由があったの
だと思います。

日本が、サッカーのワールドカップを誘致しようとして
立候補を宣言したようです。オリンピック誘致が失敗に
終わって、会場設備的に問題があります。また、東京が
再びオリンピックに立候補しようとする動きがあります。
広島と長崎が、平和をアピールするためにオリッピック
招致に向けて立ち上がるというニュースも入ってきました。

これから招致プレゼンを準備しようとされている組織、
団体の皆様、是非、過去のプレゼンを研究されて、国際的
に競争力のあるプレゼンをしていただきたいと思います。

これでいいのか、日本人の国際プレゼン能力!

2009-10-07 00:36:52 | オリンピック
この上の写真は、デンマークでの東京のプレゼンテーションの中
で、15才の少女が喋っている時に、スクリーンに登場してくる
写真です。かなり不気味な写真です。この写真は、スクリーンに
数秒間投影されるので強烈に記憶に残ります。映画『ダビンチ・
コード』の中で、トムハンクスがいくつかの写真をスクリーンに
見せて説明をしているシーンを何となく思い出してしまいました。
この不気味な少女の写真は、何か不吉なメッセージが隠されてい
るのだろうかとさえ思いました。見れば見るほど不快感を与える
写真です。オカルト映画のワンシーンのような不気味さです。

おそらく未来は、不安に満ちているというコンテキストの中で、
未来の不安を象徴するという意味で、この写真が選ばれたのだと
いうことは理解できますが、どうしてここまで暗い写真を選ぶ
必要があったのでしょう。こういうビジュアルの選択のおかげ
で東京のプレゼンが、最初からネクラな感じになったのではない
かという気がしています。今回、冒頭の写真のセレクションだけ
でなく、全体的にビジュアルの使い方があまりうまくなかったと
いう印象があります。英語にハンディがあるのなら、むしろ効果
的なビジュアルで勝負という方法もあったかと思います。他の国
のほうがよほどうまくビジュアルを使っていたように思います。

またこういった写真も出てきます。

これも見ていて心地よい写真ではありません。社会のひずみを
説明するための画像です。写真としての質も低く、目を背けたく
なるようなシチュエーションです。

そしてこの地球温暖化を象徴する氷河が崩れ落ちる写真。

氷河の崩壊と地球温暖化との関係がどうなのか正確なところが
よくわかりませんが、ちょっとこれは大げさな感じがします。
たしかに地球温暖化の問題はあり、我々としても、様々な行動
をする必要があるのはわかっています。しかし、オリンピックに
無理矢理、温暖化というテーマをかぶせたのは、ちょっと無理が
あったのではないかという気がしています。

いろいろな人のブログのコメントを見ていると、相変わらず、
東京のプレゼンはよかった、シンプルでよかった、技術的には
一番よかった、というコメントが並んでいます。私は香港に
いるのでよくわかりませんが、石原都知事というのはそれほど
までに絶大な人気を持っているのでしょうか?かなり多くの
ブログが「誰に聞いても東京のプレゼンが格段によかったと
いうんだよね」という石原都知事の持論に無条件賛成をして
いるようなのですから。

また冒頭の15才少女のプレゼンに関しては、英語が流暢で、
堂々としていて、感動した、泣けた、というコメントが目に
つきます。私は先日からこのブログに書いていますが、みな
さんとは違った感想を持っていました。ひょっとして自分が
間違っていて、じつは東京のプレゼンもよかったのではない
かと思って、もう一度、映像を見てみました。でも、見れば
みるほど、こんなプレゼンに満足していたら、日本の未来は
ないし、日本の国際プレゼン能力の成長は期待できないと
思うのでした。日本人よ、目をさませ!

参考までに、マドリッドのプレゼンも見てみました。あらため
て東京のプレゼンに何が足りなかったのかがよくわかりました。
正直言って、マドリッドのプレゼンは、リオデジャネイロより
も勝っていた部分もありました。ビデオ映像はリオデジャネイ
ロのものよりも感動的でした。見ていて泣けてくるほどで、
これを見たら、自分はマドリッドに投票したかもしれないとさえ
思えました。それに比べたら、日本の映像は、ちょっと論外な
感じがしました。こんなビデオの制作に巨額の税金を使っている
のは、税金をどぶに捨てるようなものです。このお金でどれほど
の介護施設や、保育園や、医療施設が救えたかと思うと悲しくな
ります。(ビデオ制作費だけでは限界はありますが、トータルの
誘致プロジェクトにかかった費用は相当なものです)

このプレゼンでは、オリンピックの実行能力のプレゼンと同時
に、いかにこの世界的なイベントを盛り上げられるかを示さな
ければいけなかったのかと思います。リオやマドリッドのプレ
ゼンはそれが見事に表現されていました。マドリッドのプレ
ゼンは、またあらためてレポートしたいと思いますが、東京の
プレゼンには、東京で開催した場合の盛り上がりのイメージが
ほとんど表現されてなかったと思います。

この冒頭の映像もそうですし、15才少女のコメントもそうなの
ですが、オリンピックというお祭りの盛り上がりよりも、未来
の恐怖感が全面に出ていました。そうなると、こんな都市で
オリンピックをしてもあまり面白くないなという気がしてくる
のではないかと思います。

「私は世界中に (all over the world) 友達がいますが、スポーツ
に興味を持てない人が多いです。それはいろいろな問題があるか
らです」少女は、気象の異常とか、善悪の問題、社会的な疎外の
問題、ドーピングなどによる不正などいろんな問題を列挙して
いくのですが、冷静に考えてみると、それらの問題のために
スポーツをする人が少なくなっているという因果関係は成立しな
いのではないかと思えてしまいました。スポーツを楽しめない
人が増えている(ということさえ事実として証明できないと思い
ますが)、もしそれが事実だとしたらそれは、大きな社会問題の
せいであり、それは東京でオリンピックをやったからといって
解決できる問題ではもちろんありません。

未来は、スポーツをする場所もなくなっているかもしれませんと
15才少女は警鐘を鳴らすのですが、世界はマドリッドやリオの
ようにおおらかにスポーツを楽しもうとしている人々は山ほど
いるわけで、国際的に見ると、この少女が訴えていることはまさ
に東京が抱えている問題なのではないかと思えるのでした。
マドリッドやリオの映像を見ていると、スポーツが都市のなかに
溶け込んでいる感じがしました。

東京は環境を強調していましたが、マドリッドや、リオのほうが
よほど都市が緑に溢れていて、環境と一体化している感じがあり
ました。競技施設や選手村などの周辺も、緑に溢れたプランを
出していました。東京のほうは、環境を理念では訴えながらも、
具体的なものは太陽熱エネルギーのスタジアムくらいしかなかっ
た気がします。

地球温暖化を防止するために、なぜオリンピックが必要なのか
(おそらくこの因果関係は証明できないと思います)、また
なぜそれが東京でなくてはならないのかが不明確で、この15才
少女をはじめ、東京のプレゼンターの皆さんの説明の中には
数々の論理矛盾が内包されていて、それが未消化のまま表面上
の形だけを整えたのではないかと思います。そのため、東京の
プレゼンは、オリンピックを盛り上げようという情熱よりも、
未来の問題についてのお説教のような感じがして、小賢しい
と思われたのではないかという気がします。

東京と逆に、ヒューマンタッチを全面に出したマドリッドの
見事なプレゼンを見て、あらためてそう感じたのでした。
ちょっと厳しい意見ですが、これも日本の国際プレゼン能力
を何とかしなければと思うからこそです。

あと、蛇足ですが、「東京のプレゼンの内容が、イギリスの
エージェントを通して他国に事前に漏れていた」という報道
があり、それが理由で東京が不利になったということのよう
ですが、漏れてようが、漏れてなかろうが、これは全く関係
なかったと思いますよ。

架空のオリンピック招致プレゼン・お笑いパロディ版

2009-10-06 00:45:01 | オリンピック
東京のプレゼンに関して、どのように改善をしたらよかったの
かを考えているうちに、こんなものが出来てしまいました。
かなりふざけてしまいましたので、きっと様々な方面からお叱
りをちょうだいするのではないかと恐れております。従って、
まずこれを読むにあたっての注意事項を述べておきたいと思い
ます。

事前の注意事項
●オリンピック招致委員会の関係者の方は読まないでください
●生真面目な性格の方は決して読まないでください
●最近のお笑い番組が嫌いな方は読まないでください
●東京のプレゼンが最高と思っていた方は読まないでください
●以下の内容は現実の人物、事実とは全く関係がございません
●検索されないように固有名詞はイニシャルでぼかしてあります

よろしくお願いいたします。

架空のオリンピック招致プレゼンテーション

会場内から少しよどんだ水色のレオタードを来た新体操の選手らしき女性が、リボンの演技をしながらステージに駆け上がる。サプライズとして直前までその起用が極秘に伏せられていたお笑い芸人「いとうA子」の登場である。会場の選考委員たちにとって、彼女のそのそれほど魅力的でもない外観は、期待を裏切られたという感じで、本来の意味でのサプライズ(=びっくりすること)となった。

「朝倉南、もうすぐ40才!アイ・アム・アラフォー。実現の見込みもないのに、いつまでも夢にしがみついている人々の世界最大級のグループを代表して、今日私はここに来ました。この歳になると、人にいくら無理だよって言われたって気にしない。そんなんでくじけてたら、世の中生きていけない。支持率が低くたって、へっちゃら。だって、南これまでに実現した夢はゼロ。さて選考委員の皆さんに質問です。東京が決まる確率と、私が結婚できる確率、どっちが高いと思いますか~?(一瞬の間の後、笑顔で頷きながら)もちろん、東京が決まる確率よね?よかった。じゃあSee you in Tokyo!」
リボンの演技で颯爽と去っていく朝倉南こと「いとうA子」であった。その天真爛漫な自虐性が委員たちの同情を買っているようにも見受けられた。

その次に登場してきたのは、何とアントキのIの木。ジャケットを着ているが、お決まりの赤いタオルをマフラーのように首に掛けている。
「元気ですか~!元気があれば、オリンピックもできる。支持率なんて気にしない。オリンピックに一番必要なものは、現金ですか~!そうです。先立つものは金。金メダルのキンではなくて、カネ、カネ、カネですよ!東京は経済力抜群!それに環境!このままだと地球温暖化のために、オリンピックは継続できなくなってしまいます。それを食い止めるには、オリンピックは東京でやらなければダメ!東京には寒いギャグのお笑い芸人がいっぱいいます。それこそ温暖化防止の秘策。これからは寒いギャグで、お笑いも地球温暖化防止に貢献していきます。1、2、3、ダーッ!」
選考委員たちは同時通訳を介して彼のプレゼンテーションを聞いていたのだが、同時通訳があまりうまく通訳できなかったのか、首を傾げている人々が多かった。しかし、会場に流れている寒々とした空気は、奇しくもアントキのIの木の意図した結果に一致していた。結果オーライである。

次に、大きな段ボールを引っ張りながら登場してきたのは「もうC学生」である。「少々お待ちを~、しばしご歓談を~」と言いながら、段ボールをセットしている。「段ボールリサイクルリサイタル」というプレゼンテーションは、日本が強調するエコを具現化したものに違いないと、各国の選考委員は固唾を飲んで見守っていた。やがて準備が整ったのか、「もうC学生」のプレゼンテーションが始まった。
「コント、2016年東京オリンピック!」
おいおい、コント仕立てでプレゼンをするのかよと、各国委員の興味はさらに高まるのであった。もうC学生は、三つ折りになっていた大きな段ボールを広げた。会場から一斉に驚きの声があがった。そこには東京の地図と各競技場の施設の詳細が奇麗に描かれていたのだ。
「今回の東京オリンピックの設備は、周囲8キロの円の中に入っているんだって~。だから選手やお客さんも一つの会場から別の会場にすぐに移動することができるんだよ~。便利だね~。それに環境をすごく大切にしているんだよ~。首相も環境をとても重用視しているからね。地球も喜ぶオリンピックなんだよ~。タメになったね~、タメになったよ~」
最後のところで登場した二羽の鳥は、H山首相にあわせて鳩になっているという細かい演出が憎かった。もちろん海外の人にはそのようなことは伝わるよしもなかった。しかし、子供の視点で東京オリンピックの構想を語らせるという見事な仕掛けには、選考委員もうなっている感じだった。

さて、次に登場して来たのは、H山首相ご本人であった。
「アイアムノットアコメディアン(私はお笑い芸人ではないんだけどね)」と英語でぼやきながら登場してきたH山首相は、金色の勝利ネクタイをしていた。「私は妻の幸とコペンハーゲンダッツまで来ることができて、とても幸せです」(一同爆笑)「タンクーベルは言いました。スポーツとは精神と肉体の友愛であると。そう、友愛こそは、実は私の理念。You & Iなんですよね。違うか?」(一同大爆笑)「(まじめな顔をして)だから、私は、ものいいじゃないですよ」(さらに爆笑)
そこに響(Hびき)のみつ子が、小谷M子さんやA木田裕子さんが着ていたのと同じ衣装で登場してくる。
「先輩!先輩~!」
H山「私、あなたの先輩じゃないですけど」
みつ子「私の人生の大先輩!結婚してください」
H山「おっと突然ですが、私には妻の幸がいるし...」(と会場内に目配せ)
みつ子「じゃあ、わかりました。せめて一つだけお願い聞いてもらえますか」
H山「私にできることならば」
みつ子「オリンピックを東京に持ってきてください!」
H山「そ、それはちょっと難しいかもしれない。以前、それは時代錯誤だと反対もしたことがあるし、M主党の仲間たちにどう税金の無駄使い防止との整合性を説明したらよいのかまだ悩んでいるし,,,」

そこに、DきDきキャンプのJバウアーのモノマネで有名な岸が登場してくる。
岸「大統領を困らせているのは誰だ!」
H山「私は大統領じゃなくて、首相、しゅしょう」
岸「日本の首相を、大統領と間違えて呼んでしまったことを.....(しばしの間) 本当に申し訳ないと思っている。わかりました首相。私が来たからには大丈夫です。おい、そこのテロリスト、首相を困らせるのはやめろ!」
みつ子「テロリストじゃないですよ~。でも、謝ればいいんですね、謝れば(怒った顔で)すみませんでした。アイムソーリー。You are 総理」(とH山を指さす)
H山「Yes, I am 総理。こんなことなら、東京にオリンピックを招致してやる~!」
岸「それではオチになりませんよ、大統領」
H山「だから、首相だってば~」
岸「We Are Sorry(総理)!」
(一同爆笑の中に「駄洒落じゃねえか」という我が家風の声が聞こえたような気がした)
なんだかよくわからない首相スピーチになってしまったがとりあえず、存在感は示せたのであった。

その後に、いがWゆり蚊が、何とチェンバル語で応援演説を行い、委員たちの度肝を抜いた。東京はチェンバル語というマイナーな言語まで使って、その国際性をアピールしたのだ。またアスリートの代表として、弾丸JャッキーとTンゲンなどがスポーツの魅力を肉体的に語った。そして東京の締めで登場するのが、詩吟師範代のT津K村である。日本を意識しての和装での登場である。
K村「詩吟師範代のT津K村です。今日は、オリンピック東京誘致を詩吟に乗せて吟じてみたいと思います。吟じます。2016年~、オリンピック開催地が~、もしも東京に決まったら~、なんだか今日いけそうな気がする~。あると思います」
選考委員から「No way!」という国際的な突っ込みが入って、会場は騒然となったが、とにかくプレゼンは無事に終了した。

このプレゼンはやはり落ちた。日本のお笑い芸は国際的には通用しなかったのか。ここで満を持して登場してくるのが、顔面リーサル・ウェポンのザブンGルの加藤だ。そして一言、言い放った。「悔しいです!」。顔を引きつらせて去って行くなか、「エリザベス!」と叫んだのは、おそらく次のオリンピック開催地のロンドンのEリザベス女王に敬意を表したのに違いない、と海外メディアは一斉に加藤の国際的センスを褒めたたえた。

****************************

どうもたいへん失礼いたしました~!

リオデジャネイロはプレゼンテーションも見事だった

2009-10-05 00:01:03 | オリンピック
東京が負けたことで、「最初からリオデジャネイロに決まって
いた」という発言がいろんなブログで散見されていました。
「東京はプレゼンはシンプルで一番よかった、しかし政治的
判断でリオに決まった」というようなコメントも見受けられま
した。はたして本当にそうだったんでしょうか?リオデジャネ
イロは確かに事前の評価は高かったのですが、投票になってか
らも気を抜けませんでした。上のグラフで見ても、第一回投票
ではマドリッドに二票負けていました。

二回目の投票では、一回目でシカゴに投票していた人たちが、
リオデジャネイロの応援に回った感じです。同じアメリカ経済
圏なので、メリットで選択した人たちも多かったのでしょう。
もし、最初の投票で東京が落選していたとしたら、リオデジャ
ネイロはここまでの票を稼げなかったでしょう。もしもシカゴ
が最後まで残って、リオデジャネイロとの決定戦になっていた
としたら、票はどのように別れていたのでしょう。一回目の
投票でシカゴが破れたことで、リオデジャネイロは勝利が見え
たのではないでしょうか。

リオデジャネイロは、南米での始めてのオリンピックという
大義で勝ったというふうに言われていますが、プレゼンテー
ションの映像をあらためて見てみると、やはりそのプレゼン
は素晴らしいです。これと比較してみると、東京のプレゼン
の貧弱さをあらためて感じ、同じ日本人として、また本籍地
が東京にある人間として恥じ入ってしまいたくなります。
東京の敗因は、政治力学とかではなく、プレゼンが下手だっ
たことと、オリンピックを東京で開催しなければならないと
いう意義が希薄だったことによると思います。今後の参考の
ためにリオのプレゼンをレポートしたいと思います。

日本人が英語でのプレゼンテーションにハンディーを持って
いるというのなら、ポルトガル語が母国語のブラジル人たち
も条件はそれほど変わりません。しかし、国際的なコミュニ
ケーションということに関しては、日本人はどうしてこんなに
苦手なんでしょう。それに比べて、ブラジルの皆さんは、
英語の発音はものすごくなまっているのですが、コミュニケー
ションの達人です。我々は彼らから学ぶところも多いと思い
ます。

今回、リオデジャネイロのプレゼンターとしてステージに
登場した皆さんは、それぞれがプレゼンターとして秀逸でし
た。申し訳ないのですが、東京のプレゼンターと比較しても
役者が一枚も二枚も上です。全員が見事なコミュニケーター
です。政治もビジネスもこういう人たちがリードしている国
はこれからぐんぐん伸びると思います。

まず登場するのは、チームリーダー役のヌズマン氏(Carlos
Arthur Nuzman)です。

1942年生まれで、元バレーボールの選手。1964年の東京
オリンピックの時にブラジル代表で出場したのだそうです。
この人のスピーチは見事でした。母国語でないので、英語は
決して流暢というわけではありません。しかし、一言一言に
全身全霊がこもっているという感じで、聞き惚れました。

世界地図を出して、これまでにオリンピックが開催された
場所をビジュアルにマッピングし、まだオリンピックが一度
も開催されていない大陸=南アメリカ大陸での開催意義を
アピールするプレゼン手法は見事です。また500年も前の
大航海時代の比喩で、新たなオリンピックへの航海を始め
るべき時だというレトリックも見事でした。オバマ大統領
真っ青の見事な演説。また外国語であある英語を一生懸命
に喋っているという姿勢にも好感が持てました。(東京の
人たちは、上っ面のみ奇麗な英語を喋っているという感じ
がしました。)

ヌズマン氏のスピーチの後、ビデオ映像が上映されます。
このビデオは、リオデジャネイロを紹介するようなもので
サンバのリズムでカーニバルとか、観光名所とか紹介され
るのですが、これはそれほど特筆するものではありませんで
したが。

その次に登場してきたのが、セルジオ・カブラル(Sergio
Cabral)というリオデジャネイロ州知事。

リオデジャネイロって、市でもあるし、州でもあったんです
ね。しかしビデオ上映の後に登場したカブラル知事。この
人の最初の笑顔が見事でした。すごく親しみのあるおじさん
という感じで話し始めたカブラル氏、その表情は人間味に
溢れていました。プレゼンテーションの大半はその中身では
なく、表情で伝達されると言われています。そういう意味で
はこの人も見事なプレゼンターでした。(東京のプレゼン
ターたちのほとんどが極めて無表情であったのとは対照的で
す。とくに東京のプレゼンターの人たちは、目が死んでいて、
顔の表情筋をほとんど使っていませんでした)

カブラル氏は、州知事として資金の問題、交通手段の問題
などを大局的な視点で語りました。身振り手振りを交えて
情熱て的に語るカブラル知事を見て、いろんな面で一生
懸命に努力しているというのが伝わってきました。(東京
は、環境だ、コンパクトだ、安全だというだけで、夢の
実現に向けて努力をしているという姿勢が伝わってこな
かった気がします)

カブラル知事の後を受けて登場するのが、ブラジル中央銀行
総裁ののエンリケ・メイレレス氏です。

こちらはうってかわって知的な感じ。ブラジル経済が今や
世界第五位の大きさになっていること、広告ビジネスの伸び
(オリンピックの収益源としての有望性)や、石油産業など
の成長などに関しての説明をし、ブラジル経済に対する不安
材料がないことを経済面からアピールします。これも見事。

それを受けて、リオデジャネイロ市長のエドゥアルド・
パエス氏(Eduardo Paes)の登場です。

パエス氏は、オリンピック実行の具体的な計画を説明してい
きます。どこで、どのような競技が行われるのかなどの施設
の説明、交通手段や宿泊の説明など極めて具体的にプレゼン
をしていきます。どんどんオリンピックの現実味が増してき
ます。

この地図の説明から、各競技が開催される場所が次々と映像
で映し出されていきます。すでに事前に選考委員には説明し
てある内容なのでしょうが、それをもう一度おさらいします。
選考員は見ていても、テレビを見ている世界の人々は知らな
いわけなので、こういうのは重要です。ロンドンの時もあっ
たように思いますが、今回の東京のプレゼンでははしょられ
てしまっていました。

また宿泊施設に関しては、ホテルの充実もアピールされまし
たが、豪華客船も宿泊施設として利用できるようにするとい
う計画も説明されました。

何か夢が広がります。東京湾岸でコンパクトにやるという
アピールとは、魅力のレベルが段違いに違う気がします。
東京では、京都などの観光地もあるし、日本独特のお祭り
などもいっぱいあるアピールしていましたが、オリンピック
選手や応援団は観光のためにオリンピックに来るわけじゃな
いので、ちょっと訴求点がおかしい気もしていました。
ましてやカラオケって世界中で人気があるわけじゃないです
し。

そして続いてアスリートの登場です。

サベル・スワン(Sabel Swan)という女性アスリートです。
リオデジャネイロが地元のこの女性は、リオの魅力を語った
後で、サッカーの神様のペレを紹介します。

ペレはここで立ち上がり、笑顔で手を振って挨拶をするので
すが、一言も喋りません。しかし、世界中の誰もが知るペレ
なので、これだけで最高のメッセージとなります。言葉を
使わずにペレが行った瞬間のプレゼンテーションは極めて
効果的でした。

ここまでで、リオデジャネイロのプレゼンテーションは
すでに圧倒的なのですが、だめ押しとも言うべきルーラ
大統領の登場です。

この人は、1945年生ブラジルの貧しい農村の生まれで、
学歴はほとんどなく、靴磨きや、製鉄所工員から、労働
組合を経て、大統領にまで上り詰めた人物。この日の
スピーチはすべてポルトガル語。低く響く声で、リオ
デジャネイロはオリンピックの準備ができていることを
切々と訴えました。宇宙人のような鳩山首相とは違い、
その存在感は圧倒的でした。

そして二番目のプロモーションビデオ。これは秀逸でした。
リオデジャネイロの町のあちこちに、緑の服や、赤い服や、
その他、いろいろな色の服を着た人々の集団が現れます。

何となく、海外から来た選手団の一部のような雰囲気がし
ます。その人たちを、町の人々はとても暖かく迎え入れま
す。これだけでも、いい雰囲気のビデオなんですが、人々
の数がだんだん多くなって、海岸へと移動していきます。
そして、最後のコパカバーナの海岸の空撮。これまで登場
してきた無数の人々が実は、5つの色の五輪の輪を描いて
いたのがわかります。

すばらしい映像でした。この映像の後で、会場は東京の
プレゼンではなかったような拍手が鳴り響きました。
東京の映像とはあきらかに質が違います。

そして最後に、ふたたびヌズマン氏が登場して最後の
お願い。このスピーチも完璧でした。自分たちを選んで
ほしいという情熱がこもっていました。「皆様方の今日の
ボタンの一押しが、オリンピックの新たな歴史を作るので
す」という言葉、素晴らしい広告コピーです。

これがリオデジャネイロのプレゼンテーションなのですが、
全体の組み立てから、それぞれのプレゼンターのコミュ二
ケーション技術、それから個々の内容と、言葉の隅々に
至るまでよく練られている感じがあります。そして情熱が
上滑りしていない。見事なプレゼンテーションです。
東京の招致委員会の人々は、自己満足に浸っているだけで
なく、こういうところから是非、東京のプレゼンで足りな
かったものを学んでほしいと思います。時代を動かすプレ
ゼンとはこういうもなんだということがわかるのではない
かと思います。

リオデジャネイロのプレゼンの動画はこちらのサイトに
出ています。英語だけですが。
http://www.universalsports.com/mediaPlayer/media.dbml?SPSID=105707&SPID=13050&DB_OEM_ID=23000&id=651879&sid=13050

ブラジルの広告代理店に知り合いがいて、コマーシャルの
作品を見せてもらったことがあるのですが、そのスケール
が大きく、大胆な作品は見事でした。音楽が溢れていて、
人間の感情に最も響くものは何であるかを熟知していて、
まるでブラジルサッカーと同じように、パワフルで、
カラフルで、感動させられことを思い出しました。
我々はブラジルから学ぶことも多いと思いました。

本当にこれでよかったの?東京のプレゼンテーション

2009-10-04 15:03:07 | オリンピック
2016年オリンピック開催地の選考で、東京は残念ながら破れて
しまいました。一日が経過して、ニュース報道や、ブログの記事
を検索して見ていたのですが、東京のプレゼンテーションの評価
がやけに高い。不気味なくらいに「東京のプレゼンテーションは
一番よかった」とかいう発言が目につきました。石原都知事も
「誰に聞いても東京のプレゼンは圧倒的によかったと言うんだ
よね」と言っておりました。ブログの記事はマスコミ報道の受け
売りが多いのか、大半が東京のプレゼンに対して好意的な意見。
しかし、はたして、本当によかったのでしょうか?東京のプレ
ゼンがよかったとコメントした人々は、一体何を基準にそのよう
に発言していたのでしょうか?

日本のプレゼンは実はあまりよくなかったんじゃないかと感じて
いた私は、自分の感覚がずれてしまったのではないかと心配に
なってしまいました。こんな発言をしたりすると、ひょっとして
非国民として袋だたきに合ったり、ブログ炎上なんてこともある
かもしれないのですが、でもやはり自己満足に浸っている日本の
皆様に現実を見ていただかないといけないのではと思い、あえて
辛口のコメントを書かせていただきます。東京のプレゼンが
よかったと思っている方はあまり読まないほうがよいかもしれま
せん。またもしかりに2020年に向けて再チャレンジをするなど
ということがありましたら(そのような無謀なことは敢えてしな
いことを祈りますが)、その際のプレゼンの参考にしていただけ
たらと思います。

本当は、リオデジャネイロのプレゼンの分析をしようと思ってい
たのですが、東京の映像をチェックしていたら、先に東京のほう
を何とかしないといけないと思ったので、東京のプレゼンに関し
ての辛口な突っ込みを入れたいと思います。

聞くところによると、オリンピック招致関連は、某大手広告代
理店が巨額で受注し、おそらく今回のプレゼンの演出にも関
わっていると推測されるのですが、いかにもな演出だったよう
に思えます。

冒頭の写真は、石原都知事が、彼のスピーチを締めるときに
大きく両手をあげて、"Everyday!"という言葉で盛り上がりを
作ろうとしているのですが、これはちょっと滑りましたね。
それほどの拍手にはならなかった。本当はもっと大きな拍手を
期待していたのでしょうが...

この石原都知事と同じようなポーズをしたのは、荒木田裕子
さんでした。この人は1954年生まれで、モントリオール五輪で
は女子バレーボールで金メダル、新東洋の魔女と言われていた
そうなんですけど、ちょっと知りませんでした。

このポーズは、東京の楽しさを語るくだりで、「もしカラオケ
に行きたくなったら、私たちが連れていってあげるわよ~!」
と英語で言うところで出たものです。偶然にも石原都知事と同じ
ポーズ。これは演出家の指導だったのでしょうか?
しかしこのカラオケの部分は、爆笑を狙っていたのでしょうが、
小笑いにもならず、荒木田さんは完全に滑ってしまいました。
この瞬間の凍り付いた時間はちょっと恐ろしかったです。
スケート選手やスキー選手だったらよかったのですが。(汗)

さて、こういう部分の揚げ足を取っているだけでは、本格的批評
になりませんので、もう少し厳しくメスを入れていきましょう。

まず、15才少女のサプライズ登場。皆さんのブログ発言の大半は
この少女の英語力を絶賛していて、評価は非常に高いです。演出
的にはいかにも某大手代理店的な感じがしてしまうのですが、
私的には、この演出もちょっと滑った感がありました。日本人と
しては英語はうまいのですが、自分の言葉にはなっていなくて、
誰かに言わされている感じでした。気持ちが伝わってきません。
いかにも優等生的な感じです。日本の皆さんはこういうプレゼン
で感動してしまうんですかねえ。

こういう少女に、環境問題とか、ドーピングの問題とかを負わせ
るのはちょっと重すぎたんじゃないでしょうか?だいたい環境と
いうテーマを打ち出しすぎたところも問題でした。環境を出さな
ければ、東京の独自性をアピールできないという問題はありまし
たが、環境問題を口にするのなら、オリンピックなど誘致しない
のが一番です。ただでさえ混雑している大都市に、余計なものは
持ってこないのが一番です。大都市内の経済効果を狙ってさらに
規模を大きすれば、環境問題とは逆効果になる気がします。
だいたいスポーツと環境問題との関係は論理的に言って、どうい
うことなんでしょうか?ちょっとわかりにくいテーマでした。

また、もし若い世代が安心して暮らせる未来をそれほど切望する
のでしたら、オリンピックなんかを開催しないで、教育とか、
安全に投資してもらったほうがいい。日本は治安がよいという
先入観があるけれど、化学兵器を使用した無差別テロが世界で
最初に起こったのは日本(オウム真理教によるサリン事件)だ
し、通り魔殺人事件は時々起こるし、本当に治安がよいと誇れ
る国なのだろうかと疑問に思うのですね。こういう国こそ国際
テロに関してはむしろ弱い部分もあるような気もします。

さて、15才少女の次に登場してきた猪谷千春IOC副会長。この人
1931年生まれで、日本で始めて冬季五輪でメダル(銀)を獲得
した人なんですね。IOCでも重職を担っている方です。でもこの
オリンピックの招致の最終舞台でのプレゼンターとしてはちょっ
と暗い。

この前に15才少女でせっかく未来の夢を語ったのに、何だかもう
未来はなさそうな感じです。

そして登場してくるのが鳩山首相。

ぎりぎりで決まって、準備もあまりできなかったのかもしれま
せんが、ちらちらと原稿を見ながらのスピーチは、ちょっと印象
が悪かったです。一国の首相でありながら落ち着きのない印象を
感じてしまいました。

また、クーベルタンの言葉を引用して、それが自分の「友愛」の
理念に通じるところがあるという部分、これはちょっと意味不明
でした。クーベルタンは、スポーツは肉体と精神のfraternity
(融合)ということでfraternityという言葉を使ったのだと思う
のですが、この言葉には確かに「友愛」という意味もあり、でも
だから何なの?ということでわけがわからなくなってしまった
部分でした。このへんIOC委員の皆さん理解できたんでしょうか?

さて、鳩山さんの次に、東京のスポーツの歴史をアピールする
ビデオが上映されます。その導入部分の映像がこれ。

嘉納治五郎先生の偉大さはわかるんですが、はたしてこの情報
はIOC委員の人たちに対して効果的だったんでしょうか?
また、その後に続く、戦後の貧しい時代の写真ははたして意味
があったのでしょうか?東京オリンピックの写真を出すための
流れの中ででてきたのでしょうが、せっかく15才少女が未来を
語ったのに過去のノスタルジーで、あのときの東京の感動をも
う一度的なメッセージではちぐはぐな感じがしました。

石原都知事が出て、その後ビデオが入って、河野一郎事務総長の
登場となります。この人は、アスリートではなく、お医者さん
なんですね。アンチドーピングなどでは有名な人のようです。
この人、英語は結構上手なのですが、がんばってフランス語で
もスピーチしました。その時、何度かかんでしまうのですが、
フランス語の部分が終わって、大きなため息をしてしまいます。

このため息のところは、ちょっと興ざめな感じがしてしまった
のは私だけでしょうか?

また、河野一郎事務総長は、今回の東京の委員会はチームワー
クが抜群によいというようなことを言うのですが、それにして
は、衣装がバラバラ。鳩山さんは勝手な衣装を着ているし、
石原都知事は自分だけ違った襟にしている。またアスリートの
女性陣は違ったデザインだし、会場に内の応援団はグレー系の
衣装。チームワークというんだったら、もっと統一して欲し
かったように思います。

さて、荒木田裕子さんが、会場設備がコンパクトに8キロ圏内
にまとまっているという説明をするんですが、これがこの
スライド一枚だけ。

リオデジャネイロなんか、会場設備の説明ですごく奇麗なCG
画像を用意していて、非常に臨場感のある説明をしたのに、
東京のこれは何?ハイテクな映像プレゼンは日本のお家芸では
なかったの?こんなパワーポイントの一ページのような画像で
は全然やる気が伝わってきません。こういう会場の説明はリオ
のようにもう一度きちっとやったほうがよかったんじゃないの
かと思いました。でもコンパクトに8キロ圏内にまとまってい
ることで、何のメリットがあるのかがいまいちわかりにくかっ
たです。日本は家も狭いし、狭苦しい中にぎっしり詰め込まれ
たような雰囲気が伝わっちゃったような気もします。

その後、パラリンピックの河合純一さんや、砲丸投げの室伏
さん、シンクロの小谷実可子さんなどが登場して東京誘致を
訴えます。その後に三つ目のビデオが挿入されます。

しかしこのビデオ、東京を宣伝しているはずなのになぜ白人
モデルがメイン?国際的といえば短絡的に白人を使いたくな
るという日本の広告業界の悪い癖がこんなところに出てしま
いましたね。なんかちぐはぐな感じがしました。

そして、武田JOC会長の登場。この人は馬術選手で61才。この
人が出てきたときには、東京はまだプレゼン続けるの?という
感じがしてしました。その後にまだ、河野事務総長と、岡野氏
が続くのですが。最後のほうで、またビデオ映像が使われて、
スポーツを楽しむ世界の子供たちの映像が出てきたのですが、
これって、スポーツの楽しさは出てるけど、東京でやる必要性
は全く出てないよねって感じがしてしまいました。某大手広告
代理店さん、しっかりしてください!

最後に、壇上に登れなかった関係者たちの姿が一瞬テレビで
映りました。

おや、この中で左のほうに写っている人はひょっとして鳩山
幸夫人?何と言うド派手なスカートなでしょうか?!
これは、ひょっとして5輪の五色を配色したもの?
これじゃチームワークも何もあったもんじゃないですよね?
ところで、夫人のすぐ後ろのおじさんって、森喜朗元首相?
調べてみたらこの人、日本体育協会会長、日本ラグビーフット
ボール協会会長、日本トランポリン協会会長もやっているみた
いでちゃんとしたオリンピック誘致委員だったんですね。

東京のプレゼンがよかったというのが日本人全体のコンセン
サスだったのだとしたら、私のコメントは異端です。東京の
プレゼンがよかったというのなら、どうして拍手があんなに
まばらだったのでしょうか?リオデジャネイロのプレゼンと
比較してみると、東京のほうがよかったとはどうしても思え
ないのです。こんなことを思うのは私だけ?

勝手なことを書いてしまいましたが、ひょっとしてこんなこと
書いたらいつの日か削除されてしまっているかもしれませんね。


グッバイ、シカゴ、さよなら東京、アディオス、マドリッド

2009-10-03 01:45:00 | オリンピック
コペンハーゲンで開催されていたIOCの総会で、オリン
ピック2016年の開催地がリオデジャネイロが決まりまし
たね。南米で初めての開催となるのだとか。ブラジルは
中国、インド、ロシアと並んで4つの成長大国(BRICS)
なので非常によいんじゃないんでしょうかねえ。少なく
とも東京に決まるよりも、よかったんじゃないかと思い
ます。おめでとう、リオデジャネイロ!

一回めの投票でまず落ちたのは、意外にもシカゴでした。
オバマ大統領夫妻の演説も見事だったし、ナディア・
コマネチやオプラ・ウィンフリーなどのスーパースター
も来ていたのでで、まさか最初にシカゴが落ちるとは思い
ませんでした。

二回目の投票に東京が残ったとき、ひょっとしてひょっと
するかもとも思ったのですが、やはり落ちました。やはり
プレゼンが冴えなかったですね。きわめて地味でした。
関係者の皆さんには申し訳ないのですが、環境をアピール
するだけで、オリンピック・スピリットが忘れ去られてい
たように思います。オリンピックに環境を持ち込んだのは
はたして効果的だったのかどうか...

鳩山首相や、石原都知事が一生懸命英語でスピーチをした
のですが、やはり英語のスピーチに関してはしょせん素人、
正直言って気持ちが伝わってこなかったように思います。
鳩山さんはちょっと緊張していて、後半声がかなり高くなっ
てしまい、聞き苦しいところがあったように思います。
また、ユーモアも一切感じられず、共感する部分が少ない
ような気がしました。

ロンドンが決まった時にブレア首相がビデオでスピーチを
したのですが、このときのスピーチは非常にわかりやすく
説得力がありました。おまけに最初に慣れないフランス語
でスピーチをするということでまた好感度を高めました。

ブラジルのルーラ大統領に関しては、ほとんど知りません
でしたが、この人映画俳優のように渋い声で、すごい説得
力でしたね。スピーチはポルトガル語(ブラジル語)で
しゃべっていましたが、意味はわからなくとも、言葉が
びしびし伝わってくるという感じでした。鳩山首相の声が
キンキンしていたのとは対照的でした。

ところで、日本のプレゼンの最初にサープライズとして、
15才の少女が出てきてスピーチをしたのですが、これが
はたしてサープライズになっていたのかどうかは疑問です。
このサープライズは外国の人々を想定したもので、日本の
お茶の間の人にから見るとあまりサープライズに見えない
という言い訳付きの演出だったのですが、これは外国の人
から見てもあまりサープライズにはなっていなかったので
はないかと思います。

もちろんこの女の子は見事に大役を果たしたし、彼女は何
も悪くはありません。むしろ鳩山首相よりも効果的な
スピーチをしたのではないかと評価します。しかし演出と
して子供を使うというのは、ロンドンのときにもっとうまい
演出でやっているので、それと比較してしまうと、何か
新鮮みがないし、特に感動的なメッセージもなかったなと
いう印象です。

ロンドンの時はいくつかの映像で、世界の子供の視点から
見たスポーツの大切さを見事に表現していました。そうい
うのと比較すると、石原都知事と関係者たちは、この4年間
何を学んできたのかと喝を入れたくなってしまいます。
しかし関係者の皆さんは相当落ち込んでいると思いますの
で、まずはご苦労さんでしたと言っておきましょう。

My Wifeは地元が江東区なのですが、「まあ東京に決まらな
くてよかったんじゃない?」と言っておりました。ブラジル
の人たちの情熱的な歓びようを見ていると、リオデジャネ
イロに決まって本当によかったと思うのでした。

関係者の皆様、おつかれさまでした。若手アスリートの皆様
リオデジャネイロをターゲットにがんばりましょう。
ビジネスマンの皆さん、これからはブラジルに目を向けま
しょう。これからはポルトガル語です。これからはサンバです。
ブラジル料理です。ポン・デ・ケージョです。(何て変わり身
の早い私?)

オリンピックに参加することの国ごとの温度差

2008-08-25 00:50:13 | オリンピック
北京オリンピックが終わりました。先日、香港のDVD屋を覗いて
みたら、北京オリンピックの開会式のDVDが出ていましたので
早速購入しました。68香港ドルなので、1000円くらいです。
開会式は見ていなかったので、早速見てみました。

各国の入場行進を見ていて思ったのは、インドとか人口規模が
多いのに、なんで参加選手がこれだけしかいないのということで
した。全選手が開会式に参加しているのではないのでしょうが、
この上の写真のインド選手は30数人しかいません。インドは11
億人の人口を持ち、13億人の中国につぐ大国です。中国は主催
国ということもありますが、最多の選手数です。それに比べて
インドはなんという少なさ。

メダル獲得も、インドのアビナブ・ビンドラ選手が今回、男子
射撃エアライフルで獲得した金メダルが史上初の金メダルとい
うことなのです。銅メダルは2個獲得していますが、それにし
ても、国のでかさのわりに、オリンピックへの貢献度の低さ。

シンガポールのストレーツタイムズによれば、国のスポーツ
振興をはじめ、様々な原因があると報じているようです。
インドではスポーツが社会的にあまり認知されておらず、
スポーツよりも勉強に注力する家庭が大半であり、インド国内
のスポーツ施設はあまり充実していないということなんですね。
インドってガリ勉の国?

インドのスポーツと言えばクリケット。ダントツの人気です。
でも残念ながらクリケットはオリンピック種目ではありません。
また仮にオリンピック種目になったとしても、クリケットは、
オーストラリアや、スリランカ、パキスタン、西インド諸島
など強敵がいっぱいいるのでメダル獲得は簡単ではありません。

でもクリケットをオリンピック種目に入れれば、インドの
オリンピック熱は一気に燃え上がると思いますよ。日本や
アメリカでは野球が人気スポーツですが、それと同じような
感じで、インドではクリケットが大人気。野球がオリンピック
種目だったことを考えれば、クリケットだって正式種目になっ
てもよさそうな気もします。日本には関係ないですけど。

さらに開会式の入場行進を見ていて、驚いたのはインドネシア
の選手も少ないということ。



インドと同じくらいの人数です。インドネシアは人口が2億
2千万もおり、アメリカについで世界第四位の人口の国なの
です。人口規模からしたらもっと参加選手が多くてもよいです。
それでも、金メダル1個、銀メダル1個、銅メダル3個も獲得
していますので、結果はインドよりも上ですね。

さて次の写真はパキスタン。この国も人口が1億5千8百万で
ブラジルについで世界第六位の人口の国なのです。



この選手団は、インドとか、インドネシアとかと同じ規模。
今回は残念ながらメダルの獲得はなし。やはりこの国もインド
と同じでクリケットが鍵ですね。

ところで、同じくらいの選手団だったジャマイカ。



これだけの選手団だったのに、陸上では大活躍。金メダル6、
銀メダル3、銅メダル2という快挙。金メダル獲得数では、
日本は8位でしたが、その後、イタリア、フランス、
ウクライナ、オランダについで第13位。メダル獲得効率から
したらダントツでした。

このジャマイカという国、調べてみましたら、人口は271万
4千人しかいない小さな国です。香港や、シンガポールよりも
人口が少ない。こんな小さな国でメダルを量産できたというの
は驚くべきことです。ちなみに日本の都道府県でこれくらいの
人口規模のところは、広島県、京都府、新潟県といったあたり
です。ジャマイカ恐るべしです。

ついでにシンガポールの選手団はこちら。



シンガポールの人口は400万以上ですが、国の大きさにしては
がんばっています。ジャマイカには負けますが。シンガポール
のメダル獲得は、卓球女子団体の銀メダル一個だけでした。

ついでに香港選手団。台湾入場のときと同じように香港入場の
ときは大拍手でした。



香港は中国の一部なのですが、香港として参加しています。
メダル獲得は残念ながらありませんでした。

ところで、ブルネイが選手を登録できなかったために北京
オリンピックは不参加となってしまっていたそうです。二人の
選手を先行し、北京五輪に参加させる予定だっというのですが、
手違いで選手登録が期限までに間に合わなかったとか。なんと
もおそまつ。この不祥事のためスポーツ相は更迭されたそうで
す。開会式には国王だけが参加したというのも悲しい出来事。
まあ世界にはいろんな国があるもんですね。

劉翔(リュウ・シャン)はペガサスだったのだろうか

2008-08-21 00:22:23 | オリンピック
ギリシャ神話に出てくるペガサスは翼のはえた馬でした。それに
乗ったペレロポンは、奇跡的に難敵を破り、どんどん増長して
いきます。そして、彼はとうとうペガサスに乗って天に昇ろうと
したため、ゼウスの怒りを買い、ゼウスは一匹の虻を放つのです。
その虻に刺されたペガサスは、驚いて、ペレロポンを振るい落と
し、自らはそのまま天に昇って星座(ペガスス座)となったと
いう話です。

今回の北京オリンピックの110メートルハードルの中国の国民的
英雄であった劉翔(リュウ・シャン)の名前を見ると、ついつい
天馬ペガサスを想像してしまいます。110メートルハードルで
ハードルを超える彼の姿は、走っているというよりも、確かに
空を飛んでいるという雰囲気があります。

1983年7月13日生まれの彼は、2004年のアテネオリンピックの
110メートルハードルで、12秒91の世界タイ記録で優勝し、金
メダルを獲得。その若者は一気に中国の国民的英雄となっていき
ます。2006年7月11日、ローザンヌ国際において、彼は12秒88
の世界新記録を達成します。

劉翔は日本ではそれほど知られていませんでしたが、中国では
時代の寵児でした。単にスポーツ選手というだけでなく、
アイドルであり、ヒーローであり、スーパースターでした。
去年、中国でタレントの人気度を調べた時、彼は中国であらゆる
年代でトップクラスの人気でした。ジャッキー・チェンや、アン
ディ・ラウ、バスケットボールのヤオミンと並ぶスーパースター
の彼は、必然的にCM界の人気スターにもなっていきます。

コカコーラや、VISAカード、Nikeなどの巨額予算を持つ広告主
が劉翔を起用していきます。広告収入などを含む彼の年収は
12億円とも24億円とも言われています。えらいアバウトな数字
ですが、いずれにしても天文学的な数字で私ら庶民には想像も
つきません。昨年はキャデラックとも契約をしました。その
契約金は日本円で2億4千万円だったということです。
さらにキャデラックの車ももらっていたようです。こうなると
スポーツ選手というよりも、CMキング。十数社の超王手企業
と契約しているので、もはや売れっ子タレント。ここまでくる
と本業の110メートルハードルの練習にも身が入らなかったん
じゃないかと心配してしまいます。

彼の出演していたコマーシャルを見ても、ちゃんとした質の高い
ものばかり。例えば、ナイキのコマーシャル。

http://jp.youtube.com/watch?v=Lp2ZnVPwaMw

「私は劉翔。あなたは誰?」というコピーがかっこいいです。

もうひとつナイキのCM。映像的にもかなりこっています。

http://jp.youtube.com/watch?v=FExsYO6cl-E

最後のハードルを越えるところの特撮、すごいですね。

そしてこちらはVISAカード。

http://jp.youtube.com/watch?v=7icytpilbhs

カンガルーを追いかけて走っていく劉翔。これってけっこう
大変な撮影ですよ。

そしてコカコーラ。

http://jp.youtube.com/watch?v=5Ith7KvAESI

ここまでの演技はもはや俳優レベル。あなたの本業は何?と聞き
たくなってしまいます。

ちょっとYouTubeで検索してみると、彼が登場しているCMが
ざくざくと出てきます。これだけの売れっ子だった彼がレースの
直前で棄権したのですから、バッシングしたくなる気持ちもよく
わかります。最近のかれは商業主義にまみれていて、本来の
スポーツマンシップを忘れていたんじゃないかなとさえ思えます。

また、彼は日本嫌いで、日本企業の広告には絶対に出ない人と
いうことでも知られていました。昨年、彼をとある日本企業の
広告にタレントとして起用しようと考えたこともあったのですが、
中国人から「彼は日本企業の広告には出ないよ」と言われたこと
がありました。また、彼は、「自分は黄色人種の代表であるけれ
ど、そこに日本人は含まれない」という発言をしたとかしないと
か。そういうのを聞くと日本人としては、今回の棄権騒動は、
それみたことかと言いたくなってしまいます。

彼は、北京オリンピックのレース開始直後、一台もハードルを
飛ばずに棄権してしまいます。おそらくかなりの重圧があって、
その瞬間まで棄権したくても言い出せなかったのでしょう。
広告主に申し訳がたたない。13億の国民の期待を裏切るわけ
にはいかない。そのプレッシャーは、おそらく野口みずき選手
や、途中リタイアした土佐礼子選手らの比ではなかったのでは
と推測されます。彼が背負わされていたものは相当な重さだった
のではないでしょうか。

あの出来事から二日たった今日の香港の新聞も彼の記事でいっ
ぱいです。これは香港のオリエンタル・デイリーという新聞
の一面です。



「私は戻って来る」と劉翔は言っているようですが、果たして
中国の人民が許してくれるのかどうか。「捲土重来」(けんど
ちょうらい)という何十年ぶりかで聞く四文字熟語が中国語の
記事の見出しに出てたのをみたとき、なんか懐かしかったので
すが、時がたてば彼の奇跡のカムバックもありえるのかもしれ
ません。

彼の棄権の直後、Nikeは劉翔の写真をめいっぱい使ってこんな
広告を出稿しました。



「たとえ挫折したとしてもスポーツを愛する心に変わりはない」
という言葉で一生懸命NIkeは劉翔を助けようとしています。

バッシングする者、必死に助けようとする者、その間で劉翔は
はたしてどのような気持ちなのでしょうか?
あるいはペガサスのように、誰も知らない宇宙空間で星座にでも
なってしまいたいのかもしれません。

中国の美人モデルによるオリンピック応援ソング

2008-08-13 00:37:50 | オリンピック
先週の金曜日、日本に行っておりまして、日曜日に帰ってきまし
た。成田空港の本屋で、PLAYBOYの9月号を買いました。詩の
特集をしていたからです。『詩は世界を裸にする』というタイ
トルで、いろんな有名な詩人の詩が出ていました。池澤夏樹が
選ぶ20世紀の詩人10人という特集があり、その後に、
『PLAYBOY』が選んだ世界の詩人たちという特集がありました。
その中で金子光晴の「愛情69」という詩は強烈でした。谷川
俊太郎さんもその詩がすごく好きだと同じ雑誌の中のインタ
ビュー記事のなかで語っています。詩がこんなにもすごいエロス
を表現できるとは思ってもみませんでした。

というわけで、詩の記事をぱらぱらと見ておりましたら、その
雑誌の120ページから『祝、北京五輪開催、中国のセクシー美女
をさがせ!』という特集がありました。そこに出ていたのは、
次のような人たちでした。
ヴィッキー・チャオ
チャン・チンチュー
タン・ウェイ
コン・リー
ジョウ・シュン
ハン・シュエ
ファン・ビンビン
ジャン・ズーリン
この一番最後のジャン・ズーリンって全然知らなかったので
すが、北京オリンピック応援ソングを歌っていると書いてある
ではありませんか?先日のオリンピック応援ソングの記事の中
にこの人のことに触れていなかったので、ちょっとこれは調べ
なければと思ったのです。

この雑誌の記事は彼女のことを次のように紹介しています。
「最後にとっておきの中国美女を紹介しよう。それは07年の
ミス・ワールド優勝者ジャン・ズーリンだ。容姿や名前が
チャン・ツィイーに似ていることから、中国メディアでは
小さなチャン・ツィイーと呼ばれているが、実際の彼女は182
cmの長身。スポーツ万能で、高校時代には北京市の女子陸上
大会のハードル競技で優勝したこともある。(中略)この4月
には人気モデル5人組で結成された美女ユニット秀・MODEL
を率いて、北京五輪応援ソングを歌い、ステージではダンスも
披露している。中国モデル界期待の星だ」

そしてその歌が『世界跟着我走』というタイトルの歌です。
こちらがそのビデオクリップです。
http://jp.youtube.com/watch?v=JVz2zsbpLuM

う~ん、オープニングの京劇はすごいけど、歌は正直いって
いまいちだなあ。それにちょっとみんなトップモデルかもしれ
ないけれど細すぎて、オリンピックのイメージに合わない。
それと歌がへなへなすぎて、これだと選手もがんばれないんじゃ
ないかとちょっと心配になってしまう私でした。
歌手になろうとせずにモデルだけで生きたほうがいいよ、と
アドバイスしたくなってしまいます。余計なお世話ですが。

明日は早朝から撮影なので、早く寝ないと。ではまた。

東京オリンピック

2006-09-02 13:17:10 | オリンピック
2016年のオリンピックに向けて、東京が立候補することになった
のですが、もしこれが実現すると二回めの東京オリンピックにな
ります。一回めを知らない世代が多いので、1964のオリンピック
を知っているということは、年寄りの証拠となってしまいます。

私は1964年の東京オリンピックをはっきりと覚えています。小学
校の三年生でした。まだ家にテレビはなかったので、テレビでは
見られなかったのですが、オリンピックが終わってしばらくした
後、オリンピックの総集編の記録映画を小学校の体育館で見る事
ができました。

その時の印象は鮮烈でした。町に映画館があり、映画好きの叔母
さんにつれられて、戦争映画や怪獣映画はよく見に行っていたの
ですが、オリンピックの記録映画は、大げさに言えば、私の人生
を変えました。今でも、その時一度だけ見たスクリーンの様子が
ところどころ記憶の中に残っています。これは市川崑監督の作品
だったと思います。映像がものすごく奇麗だった印象があります。

田舎町に育った私は、外国人の姿を見たことがありませんでした。
愛知県の豊橋から先には行ったことはなかったし、もちろん飛行
機に乗ったことはありませんでしたので、世界の広さを実感する
ことはなかったのです。

東京オリンピックの記録映像を見て、「東洋の魔女」と言われた
女子バレーボール選手の金メダル、マラソンで銅メダルを獲得し
た円谷(彼は後に自殺してしまいますが)などの日本選手の活躍
もわくわくして見たのですが(実際日本の金メダルは16個で、
アメリカ、ソ連についで三位でした)、それよりも私に一番衝撃
を与えたのは、「世界にはこんなにもいろんな国があり、いろん
な人たちがいる」という事実でした。

このオリンピックが契機となって、私の世界に対する好奇心が
爆発するのです。いつかきっと外国のいろんな国に行ってみたい。
今はスクリーンでしか見えないが、外国のいろんな人に会ってみ
たい。とそのとき思ったのでした。

それから私はほとんど毎日、世界地図を眺めていました。家の机
の上にはいつでも眺められるように、世界地図を貼っていました。
地図を眺めながら、この国はどんな国なんだろうとか、このへん
てこりんな名前の町はどんなとこなんだろうかとか想像したりし
ていました。

おかげで、その後、地理は私の最も得意な科目となっていきます。
それがやがて外国語への興味へとつながっていきます。その後の
アポロの月面着陸や、大阪万博がその私の興味をさらに後押しす
るのですが、それはまた別のお話しです。

1964年、私が今生活しているシンガポールはまだ独立していま
せんでした。独立は1965年のことになります。今勤めている会社
の東京の本社が1963年にやっと会社設立されたばかりでした。
私の妻の下町娘はまだ影も形もありませんでした。
生まれてくるまでまだあと4年くらい待たねばなりません。

しかしまあ、東京オリンピックというのは過去の歴史となってし
まいました。以前、「戦争を知らない子供達」(ジローズ)が大
ヒットしたのですが(ひょっとしてそれも知らない人たちが多い
のでしょうね、きっと)、「東京オリンピックを知らない私達」
という歌でも作ってもらいたいものです。

以前は、戦争体験がジェネレーションを分けるときの基準になっ
ていましたが、東京オリンピックはその一つ、また大阪万博など
もその一つですね。あと、そのうち昭和生まれというのが、年寄
りの証拠となっていく時もやがて来るかと思うと恐ろしいですね。

ところで、東京オリンピックに関して、調べてみたら、じつは
もっとすごい古い歴史があったのがわかりびっくりでした。
1940年のオリンピックは東京で開催されることが決まっていまし
た。1935年にオスロで開催されたIOCの総会で、東京、ローマ、
ヘルシンキの3都市が残り、ムッソリーニ率いるローマには外交
的に辞退してもらい、東京、ヘルシンキの一騎打ちで見事勝利を
勝ち取ったのだそうです。東京34票、ヘルシンキ27票だったとか。

これが決まったとき、日本国内ではオリンピック開催の反対運動
もあったそうです。河野一郎議員が開催中止を国会で訴えたとか。
さらに、日本は、国際的に孤立して、太平洋戦争に突入していく
ので、オリンピックどころではなくなり、日本は辞退します。
では、ヘルシンキでということになったのですが、世界中が戦争
に巻き込まれていくなか、ヘルシンキ大会も中止を余儀なくされ
ました。

戦後の高度経済成長の中で、東京は再び、オリンピック誘致に
向けて動き出します。1960年のオリンピック開催地の選考に東京
が名乗りをあげます。実際には、ローマが勝つのですが、その時
の最終選考に残ったのは、ローマ、ローザンヌ、ブリュッセル、
ブダペスト、デトロイト、メキシコシティ、そして東京の7都市
でした。東京は一回目の投票で最下位で落選したそうです。最後
はローマとローザンヌ(スイス)の一騎打ちだったようです。

さて1964年のオリンピック選考はどうだったか。1964オリンピク
の立候補都市は、東京、デトロイト、ウィーン、ブリュッセルの
4都市。この時は一回だけの投票で東京が過半数の34票を獲得し、
デトロイト10票、ウィーン9票、ブリュッセル5票に大差をつけ
て、見事勝利を獲得したのでした。

これを見ると、前の都市のローマ大会への立候補は、その実績
作りということになるのでしょうか。しかし、デトロイトは二回
連続でダメで、そのまま挫折してしまいましたね。東京は歴史的
に見ると、何度もチャレンジしているので、今回またチャレンジ
すればたしかに実績になっていきますね。実現するかどうかは
わかりませんが。

実現したとしても、様々な問題が露呈すると思われるので、いろ
いろと反対運動なども同時に出て来るのではないでしょうか。
経済効果もありますが、いろいろな犠牲も強いられるでしょう。
首都発展のために、住民が犠牲をいとわず協力してくれるのか
どうかという問題もあります。まあそれは東京開催が実現しな
ければ杞憂となりますね。



東京よ、過去のオリンピック開催地選考に学べ!

2006-09-01 00:58:45 | オリンピック
この上のグラフは、昨年シンガポールで開催されたIOC総会での
投票結果の推移です。2012年のオリンピック開催地をめぐって、
世界の5都市が争いました。結果はご存知のように、ロンドン
だったわけですが、これはすんなり決まったわけではありません。

上のグラフをご覧になればわかるように、投票は4回行われまし
た。もしも大差がついていたら、4回も投票はなされなかったか
もしれませんが、この時は、混戦でした。

まず最初にモスクワが落ちました。一回目の投票ではロンドンが
22票でしたが、パリが21票、マドリードが20票、ニューヨークが
19票という僅差。この段階では、モスクワ以外、どの都市にも
チャンスがあると思われました。

第二回めの投票では、何と、マドリードが32票で首位でした。二位
のロンドンは27票。この時点ではマドリードが勝利を確信したの
かもしれません。ニューヨークは16票しか取れずに敗退。

第三回めの投票ではロンドンが再び首位に返り咲きます。マドリー
ドはパリに二票の差で敗退。第二回めでは首位だっただけに、この
敗退はショックだったでしょう。このあたりは、非常に微妙なかけ
ひきが作用します。第二回で敗退したニューヨークを応援していた
人の票が、ロンドンとニューヨークにまわり、マドリードにはまわり
ませんでした。

そして最終のロンドンとパリの一騎打ち。その前でマドリードに投票
した人がどちらに流れるかで勝利が決まりました。結果はわずか4票
の差でロンドンとなりました。この結果を見るかぎり、ロンドン、
パリ、マドリードのいずれもチャンスがありました。運が悪ければ、
ロンドンは負けていたところです。

でも4回の投票で、パリは常にロンドンに僅差で負けていたのは、
じつに悔しかったでしょう。ジャンヌダルクのいた時代の100年戦争
の頃から、イギリスとフランスは犬猿の仲だったのですから、ここで
その積年の恨みをはらしたかったに違いありません。

フランス応援のためにシンガポールに滞在していたシラクは、会期中
の談話で「あんなイギリスのような食べ物のまずい国でオリンピック
を開催するのはありえない」というような失言をして、顰蹙をかった
とか。本来はパリを応援するはずだったマドリード支持者が、この件
でロンドン支援に回ったとも考えられます。

投票権を持つ人たちのうち、アフリカや、旧英領の国の人たちは、
イギリスに留学した経験者も多く、ロンドンに対して心情的に親近感
を持っていた人も多かったと言われています。ロンドンは、この時、
第三世界のオリンピックをアピールしていましたが、そういう点も票
を集めたのでしょう。

このときの世界5都市のプレゼンテーションの映像がフルで見られま
すので、とくに石原都知事は、これを見て、どのようにしたら勝てる
かをじっくり研究してください!ロンドンのプレゼンテーションは、
人選といい、各所で使用されているプロモーションビデオのできと
いい、コンセプトといい秀逸です。
http://www.olympic.org/uk/news/events/117_session/past_election_uk.asp
この上のページの下のほうに並んでいるビデオマークのリンクがそれ
ぞれの国のプレゼンテーションです。

ここまでは、シンガポールでの選考の話でしたが、以下のサイトに
過去数年間の、選考の様子が紹介されていますのでご参考まで。
http://www.olympic.org/uk/games/london/full_story_uk.asp?id=1386

これを見ると、過去にいろんな都市が立候補して敗退しているのが
わかります。大阪は、真っ先に負けているのがわかります。これを
眺めているだけでも何だかいろいろ面白いですよ。

オリンピック誘致は参加することに意義がある?

2006-08-31 02:17:02 | オリンピック
ここはシンガポールのラッフルズシティ。ここで昨年の7月開催
されたIOCの総会で、2012年のオリンピック開催地がロンドンに
決まった。パリ、マドリッド、ニューヨーク、モスクワの四都市
がロンドンに敗れた。それぞれの都市は、自分のところにオリン
ピックを誘致したいがために、死力を尽くして、この最終選考に
挑んだ。それぞれに個性ある都市の自信に満ちた戦いだった。
勝利をつかんだのは、ロンドンだった。

もしこの5都市の中に東京がまじっていたらどのような戦いをし
たのだろうかとふと考えてしまいます。世界を代表する大都市と
いう意味では東京は、この中において違和感はない。しかし、
東京でオリンピックを開催することの意義が見えないのです。
東京の経済効果が云々されていますが、それはあくまでも副産物。
それは決してオリンピックを誘致することの意義ではないのです。

東京にオリンピックを誘致しても、そこにドラマ性がありません。
経済効果があって得をするのは、東京周辺の人々。世界的に見て
東京が潤ったからと言って、それだけのことで終わってしまいます。

ロンドンの場合は、ロンドン市内の改造計画、アフリカなど第三
世界の生活を向上させる計画などが、背景としてあって、ロンドン
のオリンピック開催には大義名分がありました。それが今の東京
にはまだありません。「まだ」と言ったのは、ひょっとしてこれ
からそういうのが出てくるのかもしれないというかすかな希望を
込めてのことです。でも、たぶんダメでしょう。

日本は、金さえあれば何とでもなるだろうという奢りがあります。
しかし、スポーツの精神は本来、そういうものじゃありません。
もう少し純粋な意義がないと開催してはいけないんじゃないかと
思います。

北京と東京は欧州から見れば、兄弟都市のように近い距離に見え
るかもしれませんよね。北の京に、東の京。そんなところで続け
て(ロンドンがその間にありますが)オリンピックを開催する意味
がありませんね。

1964年の高度経済成長の時代におけるオリンピックの意味は
非常に大きなものがありました。今の状況の中でオリンピックと
いうのは、なんだか豊臣秀吉の朝鮮征伐のような気がしてしまう
のです。


ロンドンに学べ!

2006-08-24 02:52:46 | オリンピック
今、日本では、オリンピック候補地として、東京か福岡かという
絞り込みが行われているようなのですが、昨年シンガポールで
行われたIOC総会でのロンドンのプレゼンと比較すると、ちょっと
これは無理なんじゃないかと思ってしまうのです。

昨年の7月、うちの会社の近くのラッフルズシティーの会議場で
IOCの総会が開かれました。世界各国から著名人が集まったので
当時のシンガポールはものすごい警戒態勢でした。イギリスから
はベッカムやブレア首相が、ニューヨークからはヒラリー・クリン
トンやニューヨーク市長が、フランスからはシラクとかが来ており
ました。

数日間の会期のうちに何度か投票が行われ、モスクワが落ち、
ニューヨークが落ち、マドリッドが落ち、最後に残ったのはパリ
とロンドンという百年戦争の頃からの宿敵の戦いでした。パリが
有力と言われていましたが、最後に勝ったのはロンドンでした。

ロンドンのプレゼンは見事だったと言われました。その頃、私は
「プレゼンテーションスキル」に関してのミニ講演会を予定して
いましたので、ロンドンのプレゼンを素材として取り上げようか
と思っていました。しかし、決定の喜びもつかの間、ロンドンで
のテロのため、ロンドンのプレゼンのことはほとんどマスコミで
取り上げられることもなくなってしまいました。

実はこのロンドンのプレゼンは、ウェブサイトですべてを見るこ
とができます。ロンドンだけではなくて、パリ、マドリッド、
ニューヨーク、モスクワのすべてのプレゼンが見られます。日本
にオリンピックを誘致しようと考えている人は、この映像を研究
してオリンピック誘致をどうすれば成功させられるかを研究すべ
きです。

WWW.OLYMPIC.ORGというオリンピックのオフィシャルサイト
があります。このページの中にいくつかリンクが紹介されて
います。この中のLondon is elected host cityという中の、
Relive the bid presentation of Londonというところを
クリックすると映像でプレゼンの一部始終が見られるように
なっています。

数名のプレゼンターがプレゼンをしていく間に、プロモーション
フィルムが挿入されていきます。それぞれのプレゼン自体は決して
大げさなショーマンシップがあるというわけではないのですが、
全体の構成が見事です。また随所で紹介されるプロモーション
ビデオも見事です。フランスは映画監督のリュックベッソンが
ディレクションした華やかなものですが、ロンドンのそれは地味
でありながらヒューマンタッチのものでした。

ロンドンは、元オリンピック陸上選手のセバスチャン・コーが
プレゼンチームの代表として、最終演説をしました。この人がまだ
子供の頃、メキシコオリンピックをテレビで見て、感動し、未来
のオリンピックを夢見たという話をしました。実はこのときの
ロンドンは、これが一つのメッセージになっていました。

今は貧しい国の子供たちも、スポーツを通して、未来に、世界に
つながることができるというメッセージです。このテーマで作ら
れたプロモーションビデオは秀逸です。また、会場には、通常
お役所のお偉いさんを並べるのですが、ロンドンが連れてきたのは
子供たちでした。これは感動的でした。

また、プレゼンの見事さは、何人かが、フランス語で話をしたこと
でした。IOCのディシジョンメーカーの何人かはフランスだし、
ロンドンがアピールした「第三世界のためのオリンピック」という
のは、実はアフリカ大陸で、アフリカではフランス語を国語にして
いる国々も数多くあります。

ブレア首相は、当日はビデオプレゼンできわめて説得力のある演説
をしたのですが、導入部分はフランス語でした。決して流暢では
なく外国人がしゃべるフランス語という感じでしょうが、こういう
のも一生懸命さが伝わってきてかなりのポイントになったのではと
思います。

さらに、ロンドンは事前から積極的なPR活動を行っていました。
英国のオリンピク関係のウェブサイトは非常にわかりやすく情報公開
しておりました。世界の広告コミュニケーションビジネスの中で
イギリスは世界をリードしているのですが、オリンピックに関しても
これはちょっと日本人にはかなわないというような展開をしておりま
した。

さらに、アテネが古代スポーツの殿堂であるとすれば、サッカーや
ゴルフやテニス、ラグビーなどの現代スポーツの発祥の地はイギリス
です。ロンドンのプレゼンでは、スポーツを人類にとって重要な資産
と位置づけていました。これもプレゼン全体をスケールの大きなもの
にしました。

このようなロンドンのプレゼンに比較して見ると、東京のコンセプト
が実にふにゃふにゃな感じがします。どうしてこの都市でオリンピック
をしないといけないのか、それをそこで開催することで、その都市だけ
ではなく、人類全体にとってどういう意味をもたらすのか、そういう
部分が全く感じられません。福岡にはちょっとコンセプトを感じるの
ですが、でも世界にアピールするには視野が小さい気がします。

まあ、せいぜいがんばってもらいたいと思います。