監督 ジョン・フランケンハイマー 出演 ロバート・ショウ、ブルース・ダーン、マルト・ケラー
結論(結末)は分かっている――のに、なおかつ面白い、というのはアクション映画では珍しい。「ブラック・サンデー」は、その珍しい1本。
後半、フットボール会場がスクリーンにあらわれてからが、ほんとうにおもしろい。結論がわかっているから、なおおもしろい。そんなところに爆弾はないんだよ、そんなところいくら探したって無駄だよ、と電話で教えてやりたいくらい、じれったくなるねえ。フットボールの試合シーンや、興奮する観客、ひいきのチームの扮装や応援の横断幕、カーター米大統領の映像なんてねえ、犯人逮捕、爆弾の発見とは関係ないねえ。その「無関係」の映像の充実が素晴らしい。素晴らしいから、じれったくなる。
一番好きなのは、ロバート・ショウが飛行船のパイロットが殺されたと聞いてからスタジアムを走るシーン。スタジアムの上からフィールドまで駆け降りる。フィールドをきちんとコーナーを曲がって走る。そんなことしてる場合じゃないでしょ。フィールドを横切った方が早く行けるでしょう。でもねえ、この、しっかり階段を駆け下り、フィールドの外を走るという「丁寧さ」がいいんだなあ。あくまで「秘密」だからね。爆弾がしかけられている、テロリストが大量殺戮を狙っているというのは。
映画の観客は知っている。しかし、スクリーンのなかの人たちは知らない。いや、映画だから演じているひとはエキストラを含めて全員何が起きているのか知っているんだけれど、知らないことになっている。
この知っていると知らないの交錯が、ほんとうにドキドキわくわくというと変だけれど、興奮させられるなあ。8万人が一気に殺されるんだぞ、わあわあ騒いでいるときじゃないだろう、とここでもスクリーンに向かって叫びたい気持ちになるなあ。
それに。
ロバート・ショウが走りまわるシーンは、最後のアクションのクライマックスにつながる。ロバート・ショウの最後の行動など、いくらなんでも無理じゃない? でも、走って走って走りまわる姿を見ているから、それもできるかなあ、と思ってしまう。信じ込んでしまう。伏線がもっと派手なアクション(テロリストとの殴り合いとか、走るにしても「ボーン・アルティメイタム」のマット・デイモンみたいに屋根の上を走ったり、建物の間を飛んだり)だったら、最後の「うそ」ができて当然みたいな予定調和になってしまうけれど、普通の人が走るのと同じ場所だけ走るという単純なアクションだけで通してきたのが、不思議な説得力があるよなあ。
あ、でも。
でも、ほんとうに好きなのは――映画を見終わったあとだから言えるけれど(事件が解決しているから言えるけれど)、ブルース・ダーンが爆弾の効力を試すシーンだなあ。倉庫の壁が無数の釘でハチの巣状態になる。美しい。ブルース・ダーンが「美しいだろう」とマルト・ケラーに自慢する。穴の配列(?)も美しいけれど、穴から漏れる日差しが美しい。殺されたおじさんには申し訳ないけれど、もっともっと見ていたい、という気持ちになるなあ。
あの爆弾を作ってみたい。試してみたい――と思ってしまう私はテロリスト予備軍? ブルース・ダーンの美意識に共感する私は異常者?
と、書きながら、この「共感」があるから、この映画にのめりこむんだよなあとも思った。単なる非常なテロリストだったら、ロバート・ショウの「活躍」をほめたたえる映画に終わってしまう。普通のアクション映画になってしまう。
(2011年09月03日天神東宝3、「午前十時の映画祭」青シリーズ31本目)
結論(結末)は分かっている――のに、なおかつ面白い、というのはアクション映画では珍しい。「ブラック・サンデー」は、その珍しい1本。
後半、フットボール会場がスクリーンにあらわれてからが、ほんとうにおもしろい。結論がわかっているから、なおおもしろい。そんなところに爆弾はないんだよ、そんなところいくら探したって無駄だよ、と電話で教えてやりたいくらい、じれったくなるねえ。フットボールの試合シーンや、興奮する観客、ひいきのチームの扮装や応援の横断幕、カーター米大統領の映像なんてねえ、犯人逮捕、爆弾の発見とは関係ないねえ。その「無関係」の映像の充実が素晴らしい。素晴らしいから、じれったくなる。
一番好きなのは、ロバート・ショウが飛行船のパイロットが殺されたと聞いてからスタジアムを走るシーン。スタジアムの上からフィールドまで駆け降りる。フィールドをきちんとコーナーを曲がって走る。そんなことしてる場合じゃないでしょ。フィールドを横切った方が早く行けるでしょう。でもねえ、この、しっかり階段を駆け下り、フィールドの外を走るという「丁寧さ」がいいんだなあ。あくまで「秘密」だからね。爆弾がしかけられている、テロリストが大量殺戮を狙っているというのは。
映画の観客は知っている。しかし、スクリーンのなかの人たちは知らない。いや、映画だから演じているひとはエキストラを含めて全員何が起きているのか知っているんだけれど、知らないことになっている。
この知っていると知らないの交錯が、ほんとうにドキドキわくわくというと変だけれど、興奮させられるなあ。8万人が一気に殺されるんだぞ、わあわあ騒いでいるときじゃないだろう、とここでもスクリーンに向かって叫びたい気持ちになるなあ。
それに。
ロバート・ショウが走りまわるシーンは、最後のアクションのクライマックスにつながる。ロバート・ショウの最後の行動など、いくらなんでも無理じゃない? でも、走って走って走りまわる姿を見ているから、それもできるかなあ、と思ってしまう。信じ込んでしまう。伏線がもっと派手なアクション(テロリストとの殴り合いとか、走るにしても「ボーン・アルティメイタム」のマット・デイモンみたいに屋根の上を走ったり、建物の間を飛んだり)だったら、最後の「うそ」ができて当然みたいな予定調和になってしまうけれど、普通の人が走るのと同じ場所だけ走るという単純なアクションだけで通してきたのが、不思議な説得力があるよなあ。
あ、でも。
でも、ほんとうに好きなのは――映画を見終わったあとだから言えるけれど(事件が解決しているから言えるけれど)、ブルース・ダーンが爆弾の効力を試すシーンだなあ。倉庫の壁が無数の釘でハチの巣状態になる。美しい。ブルース・ダーンが「美しいだろう」とマルト・ケラーに自慢する。穴の配列(?)も美しいけれど、穴から漏れる日差しが美しい。殺されたおじさんには申し訳ないけれど、もっともっと見ていたい、という気持ちになるなあ。
あの爆弾を作ってみたい。試してみたい――と思ってしまう私はテロリスト予備軍? ブルース・ダーンの美意識に共感する私は異常者?
と、書きながら、この「共感」があるから、この映画にのめりこむんだよなあとも思った。単なる非常なテロリストだったら、ロバート・ショウの「活躍」をほめたたえる映画に終わってしまう。普通のアクション映画になってしまう。
(2011年09月03日天神東宝3、「午前十時の映画祭」青シリーズ31本目)
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