49 彼は誓う
私はカヴァフィスの、こうした短い詩が好きだ。
短いけれど、そのなかに「夜がやってきて」が二回繰り返されている。この音楽が、「快楽」そのもの。最終行の「快楽へと戻ってゆく」を、そのまま暗示している。というより、先取りして言ってしまっている。繰り返すしか、ほかに方法はないのだ。
この詩の主人公は「彼」になっているが、カヴァフィス自身だろう。自分のことを「彼」ということばで、「客観的」に繰り返す。「客観的」が繰り返され「事実」になる。そして、その事実というのは……、私のことばで言いなおせば「主観的事実」。主観の声、欲望の声だ。
客観と主観が交錯する。
たぶん、詩とは、そういう錯乱の瞬間に生まれる。
「48 カフェの入口にて」と同じように、この詩でもことばは「抽象的」だ。ことばのなかで詩人はさまよう。
池澤は、「運命的な」ということばに註釈をつけている。
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
ここをクリックして2500円(送料、別途注文部数によって変更になります)の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。
オンデマンド形式です。一般書店では注文できません。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
*
以下の本もオンデマンドで発売中です。
評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455
彼はいつも誓う よりよき暮らしを送ると。
しかし夜がやってきて 忠告をささやき
妥協をちらつかせ 約束をほのめかすと、
夜がやってきて 懇願しまた慫慂し
肉体の力をもって迫ると、彼は負け
運命的な快楽へと戻ってゆく。
私はカヴァフィスの、こうした短い詩が好きだ。
短いけれど、そのなかに「夜がやってきて」が二回繰り返されている。この音楽が、「快楽」そのもの。最終行の「快楽へと戻ってゆく」を、そのまま暗示している。というより、先取りして言ってしまっている。繰り返すしか、ほかに方法はないのだ。
この詩の主人公は「彼」になっているが、カヴァフィス自身だろう。自分のことを「彼」ということばで、「客観的」に繰り返す。「客観的」が繰り返され「事実」になる。そして、その事実というのは……、私のことばで言いなおせば「主観的事実」。主観の声、欲望の声だ。
客観と主観が交錯する。
たぶん、詩とは、そういう錯乱の瞬間に生まれる。
「48 カフェの入口にて」と同じように、この詩でもことばは「抽象的」だ。ことばのなかで詩人はさまよう。
池澤は、「運命的な」ということばに註釈をつけている。
運命によってあらかじめ定められ、避けがたいということ。
カヴァフィス全詩 | |
クリエーター情報なし | |
書肆山田 |
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
ここをクリックして2500円(送料、別途注文部数によって変更になります)の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。
オンデマンド形式です。一般書店では注文できません。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
*
以下の本もオンデマンドで発売中です。
評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455