進一男『美しい人 その他』(詩画工房、2007年12月12日発行)
進一男の詩は悪くはない。--悪くはない、という感想が最初に出てきてしまう。ことばがきちんとしている。何も悪くはない。でも、それでは進の詩を好きになるか、というとなかなか好きにはなれない。嫌いでもないが、好きにはなれない。そのことばにおぼれることができない。
なぜだろうか。
「夢の中の風景」という美しい詩がある。その前半。
ことばにさそわれて、私自身の「夢の中の風景」を歩いている気持ちになる。「美しい」「懐かしい」という2行目に登場する「詩語」から遠いことばも、この静かな調子にはあっていると思う。悪くはない。
と、ことばがスピードアップしていくところは、「悪くはない」ではなく、「とてもいい」。引き込まれてしまう。このリズムをいかすために、2行目(そして3行目)の「美しい」「懐かしい」ということばがあったのだとさえ感じる。
ところが、私は、その次の行につまずいてしまう。
「自分勝手ながら」に完全につまずいてしまう。
進の詩がいまひとつおもしろくないのは、このことばに起因している。「自分勝手ながら」と書いてしまう「控えめ」の部分、「おことわり」の部分が作品をだめにしている。詩は自分勝手でなくてはならない。他人のことばなど無視して自分の、自分にしかわからないことば、自分にさえもわからないことばでないと、詩にはならないのである。
「自分勝手ながら」を省いてみよう。
ことばの動きが速くなり、「私がそこから来たところの道なのかも知れない」という下手くそな(?)翻訳口調さえ、あ、正しい日本語(?)、流通している日本語では言えないこと、進のほんとうに感じていること--まだ、だれも言っていないことを書こうとしていることが、ぐいっ、と近づいてくる。
こんな美しい部分を「自分勝手ながら」ということばで傷つける必要はない。
進はもっともっと「自分勝手」を出すべきなのである。「自分勝手」をどんどん書いて、それに対して「自分勝手ながら」と「おとこわり」を挿入しない。そうすれば、悪くはない」ではなく、「おもしろい」詩が生まれるのだと思う。
進一男の詩は悪くはない。--悪くはない、という感想が最初に出てきてしまう。ことばがきちんとしている。何も悪くはない。でも、それでは進の詩を好きになるか、というとなかなか好きにはなれない。嫌いでもないが、好きにはなれない。そのことばにおぼれることができない。
なぜだろうか。
「夢の中の風景」という美しい詩がある。その前半。
私の夢のなかに何時ものように現われてくる道がある
美しい垣根の間の 懐かしい道である
その夢の中でのような 美しい道は
現実には何処にも見当たらないであろうと思われる
夢の中のその道を歩くと 風が流れる
道の向こうには 海がある
私はその道を 自分勝手ながら
私がそこから来たところの道なのかも知れないと考える
その道は きっと 私が生まれてきた道に違いない
だから 夢の中のその道を歩くと 何時も
私は優しく抱かれる
ことばにさそわれて、私自身の「夢の中の風景」を歩いている気持ちになる。「美しい」「懐かしい」という2行目に登場する「詩語」から遠いことばも、この静かな調子にはあっていると思う。悪くはない。
夢の中のその道を歩くと 風が流れる
道の向こうには 海がある
と、ことばがスピードアップしていくところは、「悪くはない」ではなく、「とてもいい」。引き込まれてしまう。このリズムをいかすために、2行目(そして3行目)の「美しい」「懐かしい」ということばがあったのだとさえ感じる。
ところが、私は、その次の行につまずいてしまう。
私はその道を 自分勝手ながら
「自分勝手ながら」に完全につまずいてしまう。
進の詩がいまひとつおもしろくないのは、このことばに起因している。「自分勝手ながら」と書いてしまう「控えめ」の部分、「おことわり」の部分が作品をだめにしている。詩は自分勝手でなくてはならない。他人のことばなど無視して自分の、自分にしかわからないことば、自分にさえもわからないことばでないと、詩にはならないのである。
「自分勝手ながら」を省いてみよう。
夢の中のその道を歩くと 風が流れる
道の向こうには 海がある
私はその道を
私がそこから来たところの道なのかも知れないと考える
ことばの動きが速くなり、「私がそこから来たところの道なのかも知れない」という下手くそな(?)翻訳口調さえ、あ、正しい日本語(?)、流通している日本語では言えないこと、進のほんとうに感じていること--まだ、だれも言っていないことを書こうとしていることが、ぐいっ、と近づいてくる。
こんな美しい部分を「自分勝手ながら」ということばで傷つける必要はない。
進はもっともっと「自分勝手」を出すべきなのである。「自分勝手」をどんどん書いて、それに対して「自分勝手ながら」と「おとこわり」を挿入しない。そうすれば、悪くはない」ではなく、「おもしろい」詩が生まれるのだと思う。
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