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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

水の周辺6

2016-09-30 10:57:59 | 
水の周辺6



花の中で
死んでいく水。

死んでいる水。



花びらの縁が
錆びるとき、

水が死んでいる



死んだ水を
求める色
死んだ水に
狂う色



思い出したのに
思い出せないと
思い出している、
水。






*

詩集「改行」(2016年09月25日発行)発売中。
1000円(送料込み/料金後払い)。
yachisyuso@gmail.com
までご連絡ください。
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水の周辺5

2016-09-25 00:28:20 | 
水の周辺5



川の中に動かずにいる魚。二匹、三匹。
だんだん砂の色に似てくる。透き通っ
ていくみたいな。透明魚。頭を水が流
れてくる方向に向けている。目が離れ
ている。



流れに逆らって泳いでいるのか。川の
底に腹をつけているのか。こんなこと
を考えている私を笑うように胸鰭が小
さく震える。



川は長い廊下のように、まっすぐで四
角かった。


*

詩集「改行」(2016年09月25日発行)、予約受け付け中。
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水の周辺4

2016-09-22 09:21:39 | 
水の周辺4



そこまで来て
とまる。
あと少しなのに
届かない。



先端の
まるみ。
そのなかを
過ぎていく。



目を開いて
見ている。
ものが
思えなくなる。び散る光になる


*

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水の周辺3

2016-09-21 00:12:55 | 
水の周辺3



水の上をわたる鳥の声
水の中を走る魚の声

聞いているものは聞こえない



水の中から見る空の色
水の上から見る魚の影

見ているはずのものは見えない



耳と目の先には
沈黙と無があって、

流れているが、



塞き止められて透明になる内部が
表面を突き破って、

飛び散る光になる


*

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外を見るひと―梅田智江・谷内修三往復詩集 (象形文字叢書)
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書肆侃侃房
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水の周辺 2

2016-09-16 22:38:39 | 
水の周辺 2



ゆるむ。ゆるく、
ふくむ無念がくらくふくらむぬめる
腐敗ぬらぬら。



ふれる、ふれ、ふる、ふらるり、ふれふれ。
(雨が木の上に立っていた。)

ふれる、ゆるりゆれず、
ゆるやかな傾きつかめぬつかの間のつや。



うねるうれいのくねりうねるうれしさくねくね
うねうね。




半濁のなまぐささうるさく、
ぬくみにぬれるたくらみの悪どさくろく、
ひかる。




*

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水の周辺

2016-09-14 21:10:54 | 
水の周辺



コップ。水を注ぐ。
水が積み上がる。



水の内圧、
水の外圧、

という形。



「圧」、
その周辺が透明になる。



水の匂い。


*

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谷川俊太郎の『こころ』を読む
クリエーター情報なし
思潮社

「谷川俊太郎の『こころ』を読む」はアマゾンでは入手しにくい状態が続いています。
購読ご希望の方は、谷内修三(panchan@mars.dti.ne.jp)へお申し込みください。1800円(税抜、送料無料)で販売します。
ご要望があれば、署名(宛名含む)もします。
リッツォス詩選集――附:谷内修三「中井久夫の訳詩を読む」
ヤニス・リッツォス
作品社

「リッツオス詩選集」も4200円(税抜、送料無料)で販売します。
2冊セットの場合は6000円(税抜、送料無料)になります。
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見えない坂を

2016-05-04 00:14:25 | 
見えない坂を



見えない坂を駆け降りてきた自転車がカーブミラーの曲面をかすめる
シャツの裾を後ろからひっぱり影が同じスピードで曲がる
ブレーキの掛け方を知らない少年から生まれるものがある



四階の窓から顔を出さずに下の道を見ている
走る自転車を追いかけて道はバス通りへのびる
水栽培の花の水が濁るので光がやわらかくなる
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石垣の出自の中にいる私について

2016-05-02 10:58:26 | 
石垣の出自の中にいる私について

石だった日、
水は音をたてずに割れた。
石だった日、
胡桃が落ちた。音をたてた。
石だった日、
真上に太陽があった。

石だった日、
ひとがやってきた。
石だった日、
太い縄が巻かれた。
石だった日、
丸太があてがわれた。

石だった日、
上へひきあげられ、
石だった日、
横へひっぱられた。
石だった日、
水の音がしみこんだ。

石だった日、
縄と丸太から自由になった。
石だった日、
知らない石がぶつかってきた。
石だった日、
知らない石がのっかってきた。

石でなくなった日、
犬が吠えた。
石でなくなった日、
鳥の影が冷たかった。
石でなくなった日、
痛くはなかった。

石でなくなった日、
風が吹いた。
通りすぎてから
ごつごつを思い出している。
石だった日を
かわりに思い出すように。

石だった日、
子どもがやってきた。
やわらかな手を残していった。
石ではなくなった日、
残っている手を見つけたこども。
目をまるくした。

沢をのぼっていくと、
足がすべるところがある。
手が
大きなものにたよって
石だった日がよみがえる。
あの日。

石だった日、
胡桃が落ちてきた。
石だった日、
水といっしょに音楽になった。
石だった日、
真上に太陽があった。










*

谷川俊太郎の『こころ』を読む
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消えた

2016-04-10 22:27:25 | 
消えた

テーブルと椅子が消えた
(椅子を引いたときの音も
部屋は、一辺の長さが正確になった

あざみの野を越えて
光が窓から入ってきた
(鏡のあった場所の白さにとまどった

落下し、舞い上がるほこりの粒粒
どんな伝言を持って
ひとの形になろうとするか

夕方になれば、
ブランコと木の影をつたって外に出る
星が二つ三つ散らばって消えた
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感情/異聞

2016-03-30 21:02:35 | 
感情/異聞

 「迷う」ということばは、やっとその坂道にやってきた。作者が見つからないので、花屋の前で時間をつぶしていることばに道をたずねた。答えることばのとなりでは、別なことばが無関係な方向を向いていた。それは「迷う」ということばがおぼえている風景に似ていた。記憶を重ね合わせてみると、「顔色をうかがった」「女におぼれる」という複雑だけれどはっきりとわかる路地があらわれてくる。店の奥では耳に聞こえない囁きが口の形をしたまま小さく動いた。どれも経験した「感情」のように思え、「迷う」ということばは、そのことを悟られないようにゆっくりと、ていねいにお礼を言って、角を曲がった。
 やっと坂を上り詰めると、日が暮れていた。近くのビルの窓は離ればなれに孤立していたが、遠くの明かりが密集してしだいに濃くなるのがわかった。窓にガラスをはめるように、内と外を分け、わかる人にだけはわかるわかるような「動詞」として書き直してほしいという思いがあふれ、「迷う」ということばは悲しくなった。



*

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犬の鎖はゆるくたわみ、/異聞

2016-03-26 23:59:59 | 
犬の鎖はゆるくたわみ、/異聞

犬の鎖はゆるくたわみ、春の光を反射していた。
泥は、とっくに乾いていた。
前脚の上に顎をのせて息を吐いている。
無害であることを恥じるようによわよわしく匂った。

遠いところからわけのわからないものをひきずってきたのだが、
ここで犬になってしまった。
棒で打たれて膝が折れ、震えているのを見たとき、
からだのなかで騒いでいたものがしいんとなった。



鎖は犬と杭の距離のあいだで、ぬるい重さを形にするかのように、たわんでいる。
互いの空洞に互いの腕をからめるという比喩がぶら下がって、
だらしないということばになろうかどうしようかと考えている。
(主語は、犬ではなく、鎖である。)



二つ目の文章で「主語」を犬から鎖にかえている理由について。
この文章を書いたとき、その男は(つまり私のことだが)、どこへ隠れようとしたのか。最初は、多くの人間のように犬に隠れようとした。犬を比喩として生きようとしたのだろう。しかし、それはあまりにも比喩の定型になりすぎると私は(つまり、その男のことだが)考え、鎖に隠れることはできないか考えてみたのだ。
(これは本心からではなく、その方が詩になると思ったからである。)

犬をつないだり、ひっぱったりする鎖は、実は犬につながれている。犬がつながれているのではなく、鎖の方がどこへも行けない、というのは、視点を入れ替えてみただけのことであって、比喩にもなっていない。
犬が動かないと、たわんだまま春の光を集めることしかできない。
錆びていないのは、みっともない話だが、それが鉄ではないからだ。





静物画/課題

石が縄に縛られたまま椅子の上にある。
縄は死んだ獣の尾となって、椅子から落ちている。
椅子は木のものから金属のものにかえられたあと、さらにガラス製にかえられた、
という仮説を挿入したまま
それを花の絵(鉛筆のみ使用)として描きだすという課題。

(灰色/四センチ×七センチ×九センチ)
(白/二・一メートル)
(三十五センチ四方、高さ四十五センチ)

肉が落ちてゆき、
骨が太くなる。

もしその下で
水栽培の球根の根がからみあい臭い息を吐いていたら。
泣いているのは、
まどろみだろうか。
目覚めだろうか。
あるいは、まだ夢のなかにあるのか。








*

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静物画/課題

2016-03-25 18:09:41 | 
静物画/課題

石が縄に縛られたまま椅子の上にある。
縄は死んだ獣の尾となって、椅子から落ちている。
椅子は木のものから金属のものにかえられたあと、さらにガラス製にかえられた、
という仮説を挿入したまま
それを花の絵(鉛筆のみ使用)として描きだすという課題。

(灰色/四センチ×七センチ×九センチ)
(白/二・一メートル)
(三十五センチ四方、高さ四十五センチ)

肉が落ちてゆき、
骨が太くなる。

もしその下で
水栽培の球根の根がからみあい臭い息を吐いていたら。
泣いているのは、
まどろみだろうか。
目覚めだろうか。
あるいは、まだ夢のなかにあるのか。



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彼は、私の言うことを聞かなかった/異聞

2016-03-23 23:24:50 | 
彼は、私の言うことを聞かなかった/異聞

彼は、私の言うことを聞かなかった。
                 彼とは、私であるのだが。
彼は、光が壁に反射しながら入ってくる路地を音をたてずに歩き、階段のところにいる猫の、やわらかい毛をなでる手を見た。
彼の手は、私の目が、手を見つめることを知っていた。
しかし、私の目のなかで、彼の手と猫の毛が入れ替わるのを知らなかった。
やわらかいのは手の方であり、猫の毛の方が手の感触を楽しんでいる。

私は、彼の言うことを聞かなかった。私とは、語られてしまった彼のことなのだが、と書き換えると、「物語」ということばが廊下を走っていく。ピアノの鍵盤のひとつをたたきつづけたときの音のように。空は夕暮れ独特の青い色をしていた。空のなかにある銀色がすべて消えてしまったときにできる青に。

彼は、私の言うことを聞かなかった。
                 彼とは、私であるのだが。
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椅子を持ってきてほしい、

2016-03-23 00:00:00 | 
椅子を持ってきてほしい、

「椅子を持ってきてほしい」と言ったのは、隣に座ってほしかったからだ。このことばは、たいていの場合、誤解された。「隣」ということば、その書かれていない「距離」が誤解を生むのである。けれど「座る」の方が、願望である。座って、通りすぎるものを見つめていたい。

思い出せるだろうか。「秋には葡萄を買った」と言った理由を。いつも通りすぎるだけの店で立ち止まった。古くさい紙に一房つつんでもらった。やわらかく皺を抱いているが葡萄の匂いにそまった。あのときわかったのだ。「私は、もう匂いを食べるだけで十分満足だ。」

窓から見える空には、羽の生えた雲が。

それは、ほんとうにあったことなのか。あるいは思い出したいと思っているだけのことなのか。いまは、どの季節にも葡萄が売られている。そして、どの月日にも、そのひとはいないのに、だれも座っていない椅子を見るたびに「椅子を持ってきてほしい」ということばがやってくる。
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冬の枝

2016-02-14 00:57:53 | 
冬の枝

西脇が通りかかってまげたのか、その枝は雨のなかでねじくれている、という文章に落ち着くまでに、「暗くなった庭」と「暗くなった路地」ということばが消された。「冬の」ということばは、消され、もどされ、もう一度消されたが、まだ意識の底に残っている。

「太陽がかげると光の反射に拒絶されていた木々の姿がその窓に還って来る」という文章は長い間放置された。風が吹き、季節が動いた。緑は枯れて、裸になった。そのあとで「木々は窓ガラスをすり抜けて部屋のなかに侵入し、部屋のなかにとじこもって立ち並び、遠い空を見つめているように見える」ということばに反転した。

精神は、小さな棚に置かれた薬箱を見つける。瓶の底に胃腸薬の錠剤が数個残っていた、という日記を、「薬箱を開けると胃腸薬の匂いがした」と書き直すのは、匂いが鼻腔を通る瞬間を思い出したからだ。オブラートということばが、溶けかかった形でと顎のあいだに挟まった。
だめだ。このままでは、この部屋からことばは出ていけなくなる。

数日後。

西脇が通りかかってまげたのか、その枝は雨のなかでねじくれている、という文章は、「色をふかくした」の内部を破り、「古い剛さ」という線になった。「傷つく」かわりに、透きとおった冷気にひびをいれ、「破裂させた」という動詞と結合した。石垣ではさまれた坂のところに歩いていく男の、裾で冬の音が散らばるように。
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