ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

3 女流棋士との対決 2ページ目

2009-08-29 07:14:28 | ワインバーでのひととき1~5アイデア集
【2ページ】  


             女流棋士との対決


女流棋士    負けました。

        社長は、ずいぶん強くなりましたね。

        次の稽古からは、角落ちにしましょう。

社長      ありがとうございます。

        初めて、清水王将に稽古をつけてもらったのは、高校一年生の

        時でしたね。

女流棋士    はい、奨励会の三段リーグを勝ち抜き、四段に昇格した頃でし

        た。最初は、飛車と角の2枚落ちでしたね。ほんとうに強く

        なりました。

社長      先生こそ、毎年昇段して、4年で8段ですからね。

        そして、この度は、女性で初のタイトルを獲得されて、王将に

        なられました。

        誠におめでとうございます。

女流棋士    ありがとうございます。

社長      でもタイトルホルダーになると忙しくなり、今までのように稽古 
        をつけてもらえませんね?

女流棋士    いいえ、社長には、もっと強くなってもらわないと。

        それに、稽古の後の食事とワインが楽しみなの。

社長      そう言ってもらえると嬉しいですよ。

        食事とワインの用意ができたようなので、別室に移りましょう。 

                  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3 プロローグ

2009-08-29 06:32:10 | ワインバーでのひととき1~5アイデア集
   

              プロローグ


和音は、テーブルの上のカトレアの花を眺めながらワインを飲んでいた。

そのカトレアは、苗から5年育てて、花を咲かせたものだった。

そのカトレアの名前は、チアリンシンシンで96年の世界ラン展でグランプリを

獲得している。

和音は、そのメリクロン苗(動物のクローンのような技術から生産された苗)を

購入したのだ。数十年前までは、カトレアは非常に高価なものだった。一つで、

家一軒購入できるものだった。グランプリを獲得したカトレアなら価格をつけられ

ないほど高価である。それは、その当時株分けでしか増やせなかったから、一年で

一つのものを二つにしかできなかったからだ。

チアリンシンシンは、交配の片親が黄色の花の為、蕾から咲き始めは黄色がかって

いるため、けっして美しい花ではなかった。

真っ赤な花を楽しみにしていた和音は、がっかりして最初捨てようと思った。

ところが、数日経つと紫色に変化して、そしてさらに数日経つと真っ赤に変身した

のだ。そして香水のような芳香を放ち始めた。

まるで、童話のみにくいあひるのようである。

まるで、グラン・ヴァンのようだと和音は思った。最初は、酸味と渋みが強いワイ

ンが数年の熟成以降は、すばらしいワインに変身するのだ。

真っ赤なカトレアの花と赤ワイン。カトレアの芳香とワインのアロマとブーケ。

和音は、時の経つのを忘れた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする