ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

3 プロローグ

2009-08-29 06:32:10 | ワインバーでのひととき1~5アイデア集
   

              プロローグ


和音は、テーブルの上のカトレアの花を眺めながらワインを飲んでいた。

そのカトレアは、苗から5年育てて、花を咲かせたものだった。

そのカトレアの名前は、チアリンシンシンで96年の世界ラン展でグランプリを

獲得している。

和音は、そのメリクロン苗(動物のクローンのような技術から生産された苗)を

購入したのだ。数十年前までは、カトレアは非常に高価なものだった。一つで、

家一軒購入できるものだった。グランプリを獲得したカトレアなら価格をつけられ

ないほど高価である。それは、その当時株分けでしか増やせなかったから、一年で

一つのものを二つにしかできなかったからだ。

チアリンシンシンは、交配の片親が黄色の花の為、蕾から咲き始めは黄色がかって

いるため、けっして美しい花ではなかった。

真っ赤な花を楽しみにしていた和音は、がっかりして最初捨てようと思った。

ところが、数日経つと紫色に変化して、そしてさらに数日経つと真っ赤に変身した

のだ。そして香水のような芳香を放ち始めた。

まるで、童話のみにくいあひるのようである。

まるで、グラン・ヴァンのようだと和音は思った。最初は、酸味と渋みが強いワイ

ンが数年の熟成以降は、すばらしいワインに変身するのだ。

真っ赤なカトレアの花と赤ワイン。カトレアの芳香とワインのアロマとブーケ。

和音は、時の経つのを忘れた。

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