福島第一原発事故の巨大地震、津波による電源喪失、装置の破壊などの真の要因は依然として闇の中にあります。原子力発電所は核兵器開発と一体の科学技術であり、もともと人間生活を豊かに、安全に行うことを前提とした科学技術ではありません。そのことが、今回の原子力事故でも証明されています。民主党政権、自民党政権は事故調査資料の開示すら満足に行っていません。さらに、調査過程で関係者からの聞き取り内容は開示されていません。そのことが朝日新聞社の報道になり、間違いも含めて話題となりました。
政府、原子力規制委員会が審査し、安全性が担保されるような原子力発電所がありうるのかどうかです。福島第一原子力発電所事故はそのことが問われる事故でした。
福井地裁判決は、経済効果と人間の人格権とを天秤にかける政治判断を断罪した点に特徴がありました。安部、自民党政権、電力会社、原子力産業はそれらのことを意図的に無視して、原子力発電所の再稼動を押し進めようとしている点で犯罪的であり、司法の判断を無視している点でも、許せるものではありません。
<毎日新聞社説>川内原発再稼動 なし崩し的に進めるな
九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の安全審査で、原子力規制委員会は新規制基準への合格証となる審査書を決定した。全国の原発で初めてだ。九電は再稼働に向け、地元への同意手続きを本格化させる。しかし、多くの課題が残されたままで、なし崩し的に再稼働を進めることは認められない。
私たちは審査書案がまとまった2カ月前に、次の二つを再稼働の最低条件として挙げた。福島第1原発事故を教訓に、住民の被害を食い止める手立てを整えておくこと。政府が脱原発依存の道筋を描いた上で、エネルギー政策全体の中に再稼働をどう位置付けるか明示することだ。
政府は今月に入り、鹿児島県などに職員を派遣し、事故に備えた避難計画の策定支援に乗り出した。電力会社に老朽化した原発の整備計画を提出させ、稼働延長か廃炉かの決断を促すことも検討している。だが、これらの対応は遅すぎたほどで、避難計画の実効性確保も、脱原発依存の道筋を描くこともできていない。
政府は、規制委の審査に合格した原発の再稼働を進める方針を掲げるが、そのために必要な地元同意を得る手順も示さないままだ。
現行ルールでは、電力会社が原発立地県や立地市町村の同意を得れば再稼働できる。しかし、それでは、再稼働の判断を電力会社と地元自治体に丸投げすることになる。
鹿児島県の伊藤祐一郎知事は政府に、再稼働の必要性を文書で示すよう要請した。再稼働を判断する責任は国にあるという態度表明だ。政府も応じる考えだが、単なるセレモニーに終わらせてはならない。
原発が稼働しなければ化石燃料の輸入増加が続き、経済への影響が懸念される。だが、原発稼働に伴う事故のリスクは残ったままだ。そうした中で再稼働をなぜ決断するのか。事故が起きた時の態勢は万全か。政府は国民に説明を重ね、議論を深め、政策に反映する責務がある。
再稼働の同意手続きに際しては、立地市町村に加え、避難計画の策定を義務付けられた原発30キロ圏の市町村の意見を最大限尊重すべきだ。
川内原発から30キロ圏の姶良(あいら)市議会は7月、「住民は避難計画に不安を持っている」として川内原発の再稼働に反対し、廃炉を求める意見書を可決した。いちき串木野市では住民の半数を上回る再稼働反対署名が集まった。しかし、川内をはじめ多くの原発では、こうした近隣市町村の意見を再稼働の判断に反映する仕組みがない。
経済面で原発との結びつきが強い立地市町村は再稼働を望みがちだ。同意の範囲をなるべく狭く抑えたいと政府や電力会社が考えているとしたら、大きな間違いだ。