独立賛成派が過半数は本当だろうか?
今頃になって泣き言を言っても仕方がないのでしょう。イギリスがスコットランド自治、住民を大切にしてきたら、このような住民投票があったとしても分離独立したいと言わなかったのだと思います。したがって、このFF記事で言うようなスコットランド住民の批判はある意味であたっていないと思います。スコットランド住民から言わせれば、勝手なことを言うなということになるのでしょう。
この記事で民主主義について触れていますが、住民投票で分離独立が決定できると言うことはすごいことです。このことでスペインなど、民族紛争地帯を国内に抱える地域は戦々恐々としているとも言われています。しかも、住民投票の投票率が低くても、一票でも独立賛成が多ければ、独立との協定もすごい政治的な内容です。そのことの持つ重みをイギリス政府(イギリス支配層)は正確に認識せず、住民投票で否決されるだろう事(のみ)を想定してスコットランドの代表者と話し合い、政治的協定を結んだことも漫画のようで面白いことです。
新自由主義の権化、アメリカの言うままの政治軍事、徹底した階級社会、先進工業国、国連常任理事国イギリスがーーー人口減少、油田の権益がほとんど無くなるーーー現代社会では考えられないような出来事にはびっくりです。
どこかの国の政権が集団的自衛権行使容認などと寝ぼけたことを言っています。歴史の改ざんと軍国主義的認識、政治感覚には驚くばかりですが、資本主義の権化、産業革命の発祥の地、イギリスの政治指導者にもびっくりします。でも、イギリスの政治指導者のほうが国民の意思を尊重すると言う点では、はるかに優れています。このFinancial Timesの主張こそ、ご都合主義ではないかと思うのですが。
【報道】英国北部スコットランドの独立の是非を問う住民投票が18日、実施される。世論調査では賛否が割れ、接戦とみられる。賛成が過半数になれば、1707年のイングランドとの統合以来、約300年ぶりの独立が決まる。
独立なら、英ポンド下落など経済混乱が予想され、英国の国際的影響力が低下、キャメロン首相は辞任圧力にさらされそうだ。世界各地でくすぶる独立運動も勢いづかせ、英国内の北アイルランドやウェールズに波及する可能性も指摘される。
キャメロン首相は土壇場になって自治権拡大を約束。英政界は与野党挙げて残留の働き掛けを強めている。
< Financial Times>
民主主義の素晴らしいところは、考えを変えられることだ。民主主義は冷静な計算だけでなく、発作的な怒りにも場所を与えてくれる。ひとまず、ならず者を追い出しておいて、もし彼らに代わる新しい人たちが期待を裏切ったら、次に考え直すことができる。
スコットランドの独立に関する住民投票は違う。高価な買い物をした後に選択を間違ったと後悔する余地はない。ひとたび解体されたら、連合を取り戻すことはできないのだ。
英国国外へ旅行すると、絶えず耳にする質問は実に単純だ。一体なぜなのか? 世界で最も成功している多民族国家の1つが、どうしてそのような意図的な自傷行為を検討できるのか、という質問だ。
こうした海外の観察者たち――米国の外交官や欧州の政治家、中国の学者たち――は、古い灰から不死鳥が蘇る姿は想像していない。彼らは、スコットランドが目立たない見当外れの未来に向かおうとしており、バラバラになった英国が衰退を受け入れる方向にまっしぐらに進んでいる姿を想像している。
筆者は、米国、インド、欧州連合(EU)、中国の政府関係者の中で、誰一人として分離がスコットランドと英国にとって良いことだと言うのを聞いたことがない。困惑したインドのスシュマ・スワラジ外相は9月初旬、スコットランドが実際に分離を選択する可能性があると聞かされた時、「とんでもないことだ!」と言った。
グローバル化が生み出すナショナリズム
だが、スコットランドの分離に対する支持の高まりはある意味で、より大きな図式に合致している。グローバル化はナショナリズムを生み出している。自由市場の厳しい風にさらされて、市民は先祖返り的なアイデンティティー――時に民族的、部族的なものであり、時に宗教的なもの――の中に逃げ込んでいる。
スコットランド民族党(SNP)のアレックス・サモンド党首は、部族への忠誠を呼び覚ましている。スコットランドらしさによって定義付けられる国家は、単独の方がうまくやっていける、とサモンド氏は話している。これは信頼につけ込む詐欺のようなものだ。
だが、欧州各地のナショナリストたちも――大半はサモンド氏よりもっと明白な外国人嫌いと言っておくべきではあるが――、同じ妄想を売り込んでいる。
スコットランド人はかつて、世界各地を制覇した大英帝国の冒険家であり、行政官だった。今は帝国がすべてなくなってしまったため、接着剤が弱くなったと言われている。ところが実際は、過去300年間で、英国という連合王国を構成する国々が分離するのが今以上に馬鹿げていた時代を想像するのは難しい。
大国間の競争の時代における繁栄と安全保障は、多様なアイデンティティーを心地良く感じる人々、共通の努力において結束する人々に属している。
世論調査会社は、住民投票の結果は接戦で勝敗の予想がつかないと言っている。連合支持派内ではパニックが起き、保守党、労働党、自由民主党は急遽、9月18日の投票で分離に「ノー」と言った場合、その後すぐにエディンバラの議会に新たな権限を移譲することをスコットランドの有権者に保証する計画を作っている。
そのため、選挙戦の終盤は、間違いなく勢いと冷静さの間の戦いになるだろう。サモンド氏は、分離賛成派のエネルギーと興奮によって勝利がもたらされることを望んでいる。
一方の連合支持派は、有権者が真剣に考えてくれることを祈っている――分裂の差し迫ったリスクについてだけでなく(そうしたリスクは確かに重大だが)、連合の枠内にとどまって自治能力を持つスコットランドを作る可能性についても、だ。
サモンド氏は追い風を受けている。欧州政治の気分を最もうまく表す言葉は、幻滅感と不信感だ。サモンド氏は、支配者層の人間だが、自らを反体制派の指導者として打ち出した。臆面もない冷笑主義はともかく、同氏の政治的な巧さは称賛せざるを得ない。投票が近づくにつれ、SNPは、市民ナショナリズムのベールをはぎ取り、アイデンティティー政治という暗いゲームを展開している。
ウェストミンスターでは、すでに罪のなすり合いが始まっている。住民投票で独立賛成派が勝てば、大勢の人に行き渡るだけの責任問題が生じる。真っ先に攻撃を受ける立場にいるのはデビッド・キャメロン英首相だ。
首相の怠惰な無関心がなかったら、スコットランド人は18日、彼らの多くが望んでいると言っていた決着――つまり、連合内での自治――に賛成票を投じることができたかもしれない。
ところがキャメロン氏は、住民投票は連合か分離かの二者択一だと主張した。今、キャメロン氏は前言を撤回せざるを得なくなっており、当初は投票用紙に記載することを拒否した「最大限の権限移譲」をスコットランドに提案しているが、時すでに遅しかもしれない。
長期的には、スコットランドは独立国家として繁栄する可能性が高い。だが、サモンド氏は、非現実的な希望的観測を経済的現実から切り離すことを拒んでいる。スコットランドは、経済のみならず、政治、文化の面で英国の残りの地域との継ぎ目のない交流という計り知れない利益を失うことになる。
ナショナリストたちは、分離後にやって来るであろう深刻な経済的打撃も軽く扱っている。金融市場はすでに、ちょっとした予告をしている。スコットランドは一夜にして、金融サービス業の多くを失い、外国からの投資は干上がるだろう。
「個人的なことは何もない」。南へ向かう計画を立てているスコットランドのある大手金融機関のトップはこう言う。「厳密にビジネスの問題だ。我々はリスクを取ることはできない」
スコットランドが分離・独立したら、イングランドは・・・
英国の他の地域の連合支持派は、少なからず私利があることを認めるべきだ。スコットランドを失えば、考えられるほぼすべての面で英国は衰えるだろう。不安は、経済的な混乱や国際的影響力の喪失よりもっと深いところにある。分離に賛成票が投じられれば、国境の南でアイデンティティー政治――つまり、イングランドのナショナリズムの台頭――を醸成する可能性が高くなる。
スコットランドにとってのサモンド氏は、イングランドにとっての英国独立党のナイジェル・ファラージ党首だ。イングランドが単独国家であれば、EUを離脱することが十二分にあり得る。
連合支持派の現在の望みは、旧体制に石を投げる誘惑に切に駆られているものの、そうした選択がどれほど決定的なのか恐らくまだ確信が持てずにいる人たちにかかっている。そうした人は、海外の友人たちから投げ掛けられた「なぜか」という質問を考えてみるのも悪くない。
住民投票で独立に「イエス」と言うことは、単にまた投票用紙にチェックマークを入れ、結果次第であとで考え直せばいい話ではない。分離は永遠なのだ。