新聞社が、事実関係を把握し、道報じるかはそれぞれの組織で内規に基づき、ルールに沿って行えばよいことです。また、マスコミが意図的に、読者に誤解を与えようとしていることはよくないことです。しかし、この原子力発電所事故の本質は、ここで報道されたようなことでは全くありません。
自民党政権が進めてきた原子力発電所を基幹電源として進めてきたことの結果として、原子力発電所事故が発生し、福島県、周辺地域を居住できないような放射能で汚染したことです。その政治的な責任、問題こそが追及されなければなりません。また、東京電力が、巨大地震、津波による電源喪失を指摘されながら、意図的に無視して、対策をとらずに、今回の事故を招いたことです。その点を不問にした上での論議、論争は原子力エネルギー推進派にとっては好都合かもしれませんが、大局的な見地からは小さな問題です。
<北海道新聞社説>吉田長所報道 なぜ誤報 検証が必要だ
朝日新聞は東京電力福島第1原発所長で事故対応の責任者だった吉田昌郎(まさお)氏=2013年死去=が政府事故調査・検証委員会に語った、いわゆる「吉田調書」をめぐる命令違反の記事を取り消した。
木村伊量(ただかず)社長が記者会見し、謝罪した上で誤報を生んだ社内の改革に道筋がつけば速やかに進退を決断すると述べた。
ことは新聞全体に対する信頼に関わる問題である。記事を撤回し、責任者が進退に言及すれば済むものではあるまい。
なぜ誤ったのか。朝日新聞は検証し、原因をつまびらかにする。それが報道機関としての自浄能力であり、不信を払拭(ふっしょく)する道だ。
「吉田調書」報道は今年5月20日、「所長命令に違反、原発撤退」との見出しで紙面化された。
調書を独自入手してまとめたという記事は、2号機で衝撃音があった11年3月15日早朝の状況を語った内容だ。
記事の肝はこうだ。
吉田氏は「高線量の場所から一時退避し、すぐに現場に戻れる第1原発構内での待機」とテレビ会議で命令したが、所員およそ720人の9割が命令に従わず、10キロ南の第2原発に撤退していた―。
その中には事故対応を指揮するはずだった部課長級の社員も含まれ、記事は東電内規にも違反する可能性があると指摘した。
事故現場での東電の態勢に重大な疑義を抱かせる内容である。
ところが政府が公開した調書の中で吉田氏はテレビ会議の詳細に触れず、「第2原発に行ったのは正しかった」とも証言、命令違反がなかったという認識を示した。
ここが記事内容と大きく食い違う点だ。朝日新聞は会見で問題のテレビ会議での指示について、所員から裏付けがとれていなかったことを認めた。
一連の経緯について、朝日新聞は引き続き検証するという。取材や執筆の過程のどこで、どう間違えたのか。具体的に把握し、説明してもらいたい。
一方、政府にも注文したい。
事故調は700人超の関係者から1500時間にわたって聞き取りを行った。調書は吉田証言に限らず、過酷な原発事故の本質を明らかにする重要な資料である。
安全対策などに生かせるはずだ。原発の再稼働を急ぐ前に、政府はできるものから公開し、国民の判断を仰ぐのが筋だろう。
報道機関の使命は言うまでもなく「迅速で正確な報道」である。自戒したい。
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