アメリカが世界の警察官としての地位を果たせなくなることを嘆くような論調がアメリカ、イギリスなどで強く出ています。しかし、軍事力を背景とした政治的圧力を利用した政治、外交が正当性を持つのかどうか改めて考える必要があると思います。国連を中心とした、政治、外交のあり方、その機能強化こそが問われ、検討されるべき課題だと思います。アメリカの軍事力は腐ってもタイというほどの巨大な軍事力を誇っています。その意味では、アメリカに軍事力で対抗しようとして対応できるはずはありません。しかし、そのアメリカが繰り返す軍事侵略により疲弊し、国力の消耗をしていることは事実であり、その現実を直視することこそがアメリカ政権、支配層に求められているのが現実なのだと思います。
中国の政治的、軍事的台頭も、経済発展によりもたらされたものです。その経済力は安い労働力と、巨大な人口がもたらしています。そのような要因は、中国経済の発展が進めば、先進工業国と同じような人件費の高騰、大量生産、大量消費的な産業は必ず、他の新興国企業に追撃されるはずです。したがって、歴史の中で見れば、一時的な現象、到達点であり、中国だけが繁栄するわけではありません。15億人とも言われる中国国民の貧富の格差改善、環境汚染問題、食料自給率の確保、国内における民族問題などが焦眉の課題であることはあきらかです。
中国との領土問題、海洋権益問題は紛争を話し合いで解決すること意外に方法はないことを周辺国も理解すべきです。経済的な依存関係がますます強く名手いる状態では、軍事衝突、外交上の軋轢は何一つ、当事国国民に良い結果をもたらさないことはあきらかです。アメリカがそのような経済、領土、外交問題の1つ1つに関与し、解決するために軍事力を使うことなどは軍事的、物理的に出来るはずもありません。
<信濃毎日新聞社説>オバマ氏歴訪 アジアの対話を進めたい
アジアの安定をどう図るか―。あらためて考えさせられるオバマ米大統領の4カ国歴訪だった。中国との関係改善をはじめ、日本の課題は多い。同盟強化だけに傾くのでなく、周辺国との外交に努力を重ねなければならない。
オバマ氏は23日からの訪日に続き、韓国、マレーシア、フィリピンと駆け足で巡った。東南アジアは昨秋に歴訪を予定しながら、米政府機関の一時閉鎖の影響で中止した経緯がある。掛け声倒れと批判されるアジア重視戦略の立て直しが目的の一つだった。
シリアやウクライナの問題をめぐり、米国の影響力低下が指摘されている。同盟国の懸念や動揺を抑える狙いもあった。各国首脳との会談などで、東シナ海や南シナ海で周辺国と対立する中国を強くけん制している。
フィリピンでは、首脳会談に先立ち、米軍の派遣拡大を図る新たな軍事協定を両国が結んだ。日本で米大統領として初めて米国による尖閣諸島の防衛義務を明言したのに続き、同盟国を守るとのメッセージを発した形だ。新軍事協定により、1992年までにフィリピンから完全撤退した米軍が22年ぶりに回帰する。撤退したことで、中国に海洋進出の拡大を許したとの反省に立つものだ。首脳会談では、協定が同盟深化や地域の安定に寄与することを確認した。
一方で、中国との決定的な対立を望まないオバマ政権の対中戦略もうかがえる。日米共同声明では国際社会のさまざまな課題に対処する上で中国が果たす役割の重要性を指摘した。歴訪中、領有権争いについて平和的解決も繰り返し強調している。オバマ氏は安倍晋三首相との会談で、中国と「信頼醸成措置」を講じるよう求めた。日中の衝突に巻き込まれることへの警戒感の表れだろう。中国をけん制しながらも、対中関係を重視している。
韓国での首脳会談では、日韓両国に「歴史問題を原因とする緊張関係を解くのと同時に、未来を見て繁栄と平和のために努力しなければならない」と促した。
いずれも米国自身の国益に照らしてのことだろう。オバマ氏に言われるまでもなく、日本は主体的に中韓との関係改善を急がなくてはならない。北朝鮮の挑発行為を防ぎ、核・ミサイル開発をやめさせるためにも結束が欠かせない。
韓国とは日米韓首脳会談に続き局長級協議も始まった。対話の機運を生かす必要がある。
<レコードチャイナ>
2014年4月26日、環球時報(電子版)によると、オバマ米大統領の日本訪問について、海外メディアは「手ぶらで離日」「失敗」「尻すぼみ」など厳しい見方を示した。米誌タイムは「大統領は手ぶらで日本を離れた。今回のアジア歴訪の鍵となる目標だった日本との貿易交渉は、合意に達しなかった」と評した。
米紙ニューヨーク・タイムズは、「大統領が最も重視する二つの外交政策が失敗した」と指摘。中東和平は挽回の兆しが見えず、東京ではアジア戦略の後ろ盾となる環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を前進させられなかったと厳しい見方を示した。
英BBC(電子版)は「日米共同声明が“難産”だったことで、TPP自体も“流産”する可能性がある」と今回の訪日を総括した。中国の日本問題専門家で、清華大学当代国際関係研究院の劉江永(リウ・ジアンヨン)副院長は、「日中問題でこれほど明確に一方に肩入れした米大統領はかつていない」とした上で、「TPP問題で日本側の譲歩を引き出せなかったばかりか、日本が東アジアで繰り広げている争いにおいて、米国自身を“人質”にしてしまった」と指摘。「オバマ大統領の訪日は事実上失敗した」と結論付けた。(翻訳・編集/NY)