尖閣列島の領有権問題、歴史認識改ざん、南京大虐殺はなかったとの安倍、自民党幹部、百田、田母神などの挑発的な言動、靖国参拝などで中国、韓国との政治的断絶、軋轢の増加がこのような事案を復活させ、増加させることは少し考えれば、分かることです。
他国を侵略し、国土を荒廃させ、侵略した国家の国民を収奪したことは歴史的な事実であり、その事実は消すことも、改ざんすることも出来ません。安倍、自民党極右政権の政治行動がこのような事態を招いたことを深く反省すべきと思います。その上で、両国関係者が話し合いで決着をつけるべき問題です。
<毎日新聞社説>中国差し押さえ、不信で対話をとめるな
海事裁判を扱う中国の上海海事法院が19日、戦前の船の賃貸契約をめぐる訴訟で敗訴した商船三井所有の鉄鉱石運搬船を浙江省の港で差し押さえた。
中国では戦争中の強制連行をめぐり、戦後補償を求めた訴訟を起こす動きが相次いでいる。日本企業を狙いうちにした政治的動きとの懸念が広がったのも無理はない。
菅義偉官房長官は「中国でビジネス展開する日本企業が萎縮しかねない」と述べたが、多くの国民の声を代弁したものだろう。
しかし、中国外務省の秦剛報道局長は「商業契約をめぐる争いであり、戦争賠償問題とは関係ない」と戦後補償問題との関連を否定した。
中国側の主張に理屈がないわけではない。裁判は日中戦争直前の1936年、商船三井の前身企業と船2隻の賃貸契約を結んだ中国企業の創業者遺族が未払いの賃貸料や船が沈没した損失の賠償を求めたものだ。
提訴は88年。中国の民法の施行直後で未解決の紛争は時効の対象にならなかった。当時は中国国内に戦後補償提訴の動きもなかった。中国の裁判所が戦後補償に絡んだ訴えを受理したのは今年が初めてだ。
菅官房長官も秦報道局長の発言を受け、「訴訟と戦争の関係を断定的に述べることは困難な面がある」と一定の理解を示した。なぜ、この時期に差し押さえたのかとの疑問は残るが、上海海事法院は昨年12月に原告側から和解交渉が決裂したとして強制執行の請求が出されたと説明している。
2012年9月の尖閣国有化以降、中国の公船が日本領海を出入りすることが恒常化し、昨年11月には日本領空を含む空域に中国が防空識別圏を設定した。中国に対する不信感が募る理由はある。
一方、中国側も昨年末の安倍晋三首相の靖国神社参拝や首相周辺の歴史認識をめぐる発言などで対日不信を増幅させている。
しかし、疑心暗鬼から相手側の行動の意図を読み誤っては、不信がいっそう拡大し、誤解から不測の事態も生じかねない。
今月に入って中国の胡耀邦元総書記の長男の胡徳平氏が安倍首相と会談した。24日からは舛添要一東京都知事が北京市長の招待としては18年ぶりに訪中する。滞っていた日中対話がようやく動き出した感がある。
まずはいきり立たず、冷静に中国側の出方を見守るべきだ。戦後補償と関係のない一般の訴訟ということであれば、原告と被告、裁判所の間で解決できる道もあるだろう。幸い、日中両国政府の主張は大きく隔たってはいない。むしろ、不信を減らすきっかけにしてはどうか。