小保方氏の研究発表、研究結果の信憑性、研究者の育成、倫理観と指導などなどが主張として展開されました。各社各様の主張ですが、それだけに、様々な点から問題点が顕在化しているように感じます。
科学の進歩は、基本的には人類の発展に寄与するものです。この研究は難病対策などにも直結する研究なのできちんとした調査、研究者の育成・環境整備にも生かせるものとして欲しいと感じます。
成果主義は、古くからある問題ですが、基礎研究をもっと重視し、あらゆる研究の基礎になるような実験、研究こそ手厚く支援すべきです。短期的には製品開発にすぐに結びつきはしませんが、この基礎研究の幅、質が日本における研究開発、科学の質を決めることになるのはあきらかです。
<北海道新聞>
これでは故意でさえなければ、論文の信ぴょう性を疑うような誤りがあっても問題がないと主張しているのに等しい。
新たな万能細胞「STAP細胞」の論文問題で、理化学研究所の小保方(おぼかた)晴子研究ユニットリーダー(30)が記者会見し、論文に不正があるとした理研調査委員会の最終報告書に反論した。
画像の切り貼りや別の画像の転用について「自らの不注意や不勉強が原因」と謝罪したものの、捏造(ねつぞう)や改ざんを認めなかった。「悪意」の有無にかかわらず、論文に問題のあった責任は免れない。小保方氏はまず、不備がある研究や論文は信頼を得られないことを自覚しなければならない。
最大の謎は、STAP細胞が実際に存在するかどうかだ。小保方氏は「200回以上作製に成功している」とし、存在の否定につながる論文撤回を拒否した。
それならば存在の根拠や資料を示すのが先ではないのか。自ら作製過程を再現し、公表するのでなければ、何ら説得力を持たない。
小保方氏が不正行為は無かったとして、既に理研に不服を申し立てている。今回の会見でも「実験ノートを4、5冊以上は持っている」「実験写真は数百枚ある」など新たな事実を明らかにした。
今後、理研は対応を決めるが、見解が真っ向から対立しており、真相解明には程遠い。再調査をするのが筋だ。
調査は、現在の委員が担当するのでは中立性、客観性が確保できない。第三者に委託すべきだ。理研は、論文共著者4人のうち、不正行為があったのは小保方氏だけとしている。個人の責任にして幕引きを図ろうとする姿勢が透けて見える。小保方氏は「他の方の責任やお考えにコメントする立場にない」とした。しかし、残る3人の研究への関与は不明な部分が多い。
再調査で共著者についてもチェック体制や責任問題などをあらためて検証する必要がある。
今回の問題の背景として指摘されるのは、若手研究者の置かれた厳しい状況だ。小保方氏同様、博士号を取得した多くが期限付き採用で、めぼしい業績がなければ契約を解除されるという。
政府は優秀な研究者に優先的に補助金を分配し、博士号取得を推進してきた経緯がある。
成果主義がはびこる中で、研究倫理面で十分な教育が行われてきたのか。研究機関、政府は若手の指導体制、待遇を見直すべきだ。
<信濃毎日社説>
幕引きを急いだために、かえってこじれたのではないか。
STAP細胞の論文をめぐる問題は、不正があったと認定された小保方晴子さんが記者会見で反論する展開になった。理化学研究所の調査委員会の結論に対し、事実関係をよく理解されないまま判定されたとして、不服を申し立てている。調査委が内容を審査し、再調査するか決める。不正に当たるかどうかという議論にとどめるわけにはいかない。理研は問題の背景を掘り下げ、再発防止と信頼回復につなげる必要がある。
調査委は、論文の疑問点のうち2項目で小保方さんの不正を認定した。博士論文とそっくりな画像が使われたことは捏造(ねつぞう)、画像を切り貼りした加工は改ざんに当たると結論付けている。
小保方さん側は「単純な間違いで不正に当たらない」などと主張している。聞き取り調査や反論の機会が不十分だったと調査方法も批判した。問題の発覚後、初めての記者会見だった。多くの人に迷惑を掛けたと謝罪した上で「悪意をもって論文を仕上げたわけではない」と不正を否定した。論文に多くの不備を生じた原因として挙げたのは、自身の不注意や不勉強、未熟さだ。改ざんとされた切り貼りは「自己流でやってしまった」と述べている。
未然に防ぐことはできなかったのか、小保方さんを指導する立場だった共著者らは研究を進める中でどう対応していたのか。あらためて疑問が募る。論文の不備だけを調べて済む問題ではない。理研は発表に至るまでのいきさつを検証し、説明すべきだ。
STAP細胞が本当にあるのかどうかも、はっきりさせなくてはならない。
小保方さんは会見で「STAP現象は何度も確認された真実」と研究結果そのものの正しさを強調している。自身は200回以上作製に成功しているとも述べた。しかし、それを証明する新たな材料は示せていない。
論文の扱いについては「結論が正しい以上、撤回は正しい行為ではない」とし、取り下げない考えを明らかにしている。
STAP細胞の真偽は、実験で確かめるしかない。理研は作製を再現できるか、1年かけて検証する方針だ。小保方さんはチームに加えず、共著者の一人が実験を担う。新たな万能細胞として世界的に注目を集めただけに途中経過を含め、丁寧な説明を求めたい。
<毎日新聞社説>
なんとも釈然としない状況である。STAP細胞論文の筆頭著者である理化学研究所の小保方晴子・研究ユニットリーダーが、理研の調査委員会による研究不正認定に不服申し立てをし、代理人とともに記者会見を開いた。
理研の調査委はSTAP細胞実在の証拠となる二つの画像について、切り張りされたり、別の細胞の画像が使われたりしたことから、「改ざん」「捏造(ねつぞう)」と判定している。だが、小保方氏側は、これらは「悪意のない間違い」であり、研究不正には当たらないと反論、真っ向から意見が対立している。
小保方氏らの主張の中核となっているのは、「真正なデータ」は別に存在する、というものだ。存在しないデータを作ったわけではなく、理研の規定の解釈からも研究不正とはみなされない、と主張している。
論文自体はあまりに問題が多く、不正とみなされてもやむを得ないが、研究そのものを不正と見なすかどうか。本当のデータの存在はひとつの判断材料かもしれない。
ただし、問題は、その本当のデータが、第三者にも納得のいく方法で示されているかどうかだ。
今回、不服申し立ての文書や記者会見ではSTAP細胞の実在を示す科学的データは示されなかった。しかも、取り違えて論文に使用したという画像は、元をたどると、どのような条件で作った細胞に基づくものか、小保方氏本人もわからないまま使用した疑いがある。これでは、本当のデータの存在を信じることもむずかしい。
小保方氏らは、理研の調査が不十分であった点も問題にしている。中間報告から最終報告に至る期間が短く、調査内容も限定的で、真相が解明されたと言えないのは事実だ。真相が解明されなければ日本の科学界への信頼性が回復できないのではないか。
だとすれば、理研の調査委が委員長をはじめ半数が理研の人間だったことも考え合わせ、外部のメンバーによる徹底した再調査が必要だろう。その際には、理研からの独立性を重んじた人選とし、法的、倫理的側面から検証できる科学者以外の人の視点も加えてほしい。
その上で、野依良治理事長が「未熟な研究者」と指摘した小保方氏を、理研が研究ユニットリーダーとして採用した経緯や、論文発表に至る過程で共著者のチェック体制が働かなかった理由についても、きちんと検証してほしい。既存の試料の分析・検証も進めるべきだ。
「改ざん」「捏造」の解釈の違いを争うだけでは、理研は責任を果たしたことにならない。