前回のブログでも触れましたが、ワインのお好みはお客様により様々ですし、それを売り手がお客様のご希望を聞いて探り当てる作業も難しいですし、販売歴30年の私でも味わいの説明は毎回課題となります。また、皆さんが実際にお店でワインを購入される際にご自分の好みを言葉で表現するのって難しくありませんか?
チーズプロフェッショナル資格試験を終えてから、受験勉強優先でチーズ関連以外の活字に飢えていた私は、ワイン、小説、お金、料理、接客などをテーマにした様々なジャンルの本をまとめ買いして今読んでいるのですが、その中で、「男と女のワイン術」(伊藤博之、柴田さなえ共著 日経プレミアシリーズ出版)という本に、自分の好みを知るスケ―ルになる分かりやすい説明が書かれてあり、私も大変参考になったのでご紹介します。
まず、赤について、ざっくり果実味(飲んだときに真っ先に口に広がる果実風味)が豊かなワインが好きか、果実のトーンは控えめだがドライ感があり余韻が深いものが好きかで分けると、
前者は、チリ、オーストラリアなど南半球国とカリフォルニア(米国)のニューワールドと呼ばれる国々のワイン、後者はフランス、イタリアを中心にクラシックタイプと呼ばれるヨーロッパの国々のワインが該当します。(あくまでも大雑把な分類ですので、この限りではありません。)
ニューワールドの国々は温暖な地域が多く日照時間も多く得られ完熟ブドウ使用のため果実味が豊かな凝縮感の強いワインになりやすく、それに比べヨーロッパは北半球に位置し、比較的冷涼な地域が多いため、酸度も高く辛口タイプのエレガントなワインが多く造られます。
この気候的条件の差以外に、世界のメイン赤品種、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、メルローの品種特性を絡めてまとめると、こうなります。(抜粋)
渋味のあるワイン⇒カベルネ・ソーヴィニヨン、渋味が少なく、酸味の強いワイン⇒ピノ・ノワール、渋味、果実味、酸味のバランスのよいワイン⇒メルロー
赤ワインの代表的な品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンのワインは、フランス産の渋味と酸味が際立つ辛口ワインだが、ニューワールドのものだと飲みやすく感じる。これも果実味タイプのワインと呼び、果物のニュアンスを感じる甘い香りが強く、また口に含んだ瞬間にフルーティーな味わいが広がるため、酸味が感じにくくなる。もし、このニューワールドのカベルネ・ソーヴィニヨンに渋味を強く感じるとすれば、価格はそこそこ。安くても2000円以上だろう。
では、ピノ・ノワールに置き換えてみよう。虫食いの箇所を埋めてみてほしい。
一般的に(➀)の強いピノ・ノワールのワインは、ニューワールドのものは(②)が強いが、フランス産は(③)タイプである。口に含んだ瞬間は(④)は広がらないが、飲み込んでからの(⑤)が長い。また、ピノ・ノワールは総じて(⑥)は少ない。
(答:➀酸味 ②果実味 ③辛口 ④果実味 ⑤余韻 ⑥渋味)
白ワインも、同様な分類をすると、フルーツのニュアンスが少ない辛口ワインがヨーロッパ、フルーツのニュアンスが強いフルーティなワインはニューワールドとなる。
冷涼な気候であればあるほど果実味が減り辛みが増し、温かいほどに果実味が強くなる。(抜粋)
ちなみに、白の代表的な3品種は、穏やかであまり個性を主張しないシャルドネ、味わいを補強するために樽熟成されたものも多い。シャルドネと対比して語られるソーヴィニヨン・ブラン、青草、柑橘系果実の香りと爽やかの酸味、シャルドネに比べ個性を主張する品種といえる。ヨーロッパではドイツやフランス・アルザス地方の代表的品種、リースリング、酸味がしっかりしており、繊細な香の要素が豊か、花、蜜、柑橘系果実の他オイリーなミネラル香が特徴的。
では、このヨーロッパ系とニューワールド系を繋ぐ赤、白の中間的位置付けになるワインとは?
赤は「ボルドーのメルロー」、白は「ブルゴーニュのシャルドネ種から造られるマコン」と著者の見解。なるほど。。。
コンビニや一般的なスーパーでは、安価なニューワールドのワインが圧倒的に多いため、比較的飲みやすいワインが多いかと思います。
一歩深めた本来の品種特性への探求として、またご自分の味わいの好みを探る、ご自分の好みをコトバで表現できるようにするために、ちょっとお値段奮発して、味わいの基準となるボルドーメルロー主体(メルロー100%ワインはブレンド主体のボルドーで探すのは難しいので)、マコンを試してみてはいかがでしょうか?
最後に著者のプロフィールを、
伊藤博之:日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、ソムリエ取得。「わいん厨房たるたる」オーナー兼シェフ。大学卒業後素材メーカーの研究者としてフランス出張をきっかけにワインに目覚め、現在に至る。
柴田さなえ:食あれこれライター。食と旅を得意とする編集・ライテイングユニット「おいしいしごと」を主宰。