調査事項 : 三好市における地域資源を活かした歴史観光まちづくりについて
(古民家再生事業について)
私は以前から、アレックス・カー氏の日本の伝統文化への貢献、実行力には関心がありました。
三田は、阪神間のふるさとを持たない人々にとっての擬似ふるさと体験のできるまちというコンセプトで、三田の地域お越し、観光客誘致を考えています。
その実践状況を視察できたことは、私にとって大変有意義なものでした。
まず、アレックス・カー氏は、米国メリーランド州生まれ、1964年来日。
少年期に体験した日本の美しさと失われゆく現状を国内外に訴え、次代へ残すべく、文化芸術活動の推進、講演、執筆活動など幅広く行い、日本各地に残る美しい風景と文化を守り伝える事業を推進しておられる。
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★事業概要
三好市東祖谷地域は、剣山国定公園を含む四国山地の豊かな自然と、その山懐の急斜地に張り付くように江戸期の古民家や石積みの段畑が独特な山岳集落を形成しており、それら「古きよき時代の日本の原風景」と言える。
この地域はその昔、地形が険しく容易に立ち入ることができなかったことから「秘境」といわれ、近年まで他地域との接触が少なかったことから、古く独特な生活様式も残されており、また、「平家落人伝説」に代表される伝説・伝統文化も残っている。
しかしながら近年過疎高齢化の影響により人口の減少が著しく、古民家は空き家に、石積みの段畑は耕作放棄により森林化していき独特な山岳集落の景観の維持が困難な状況になってきている。また同じく、古く独特な生活様式や平家落人伝説などの伝説・伝統文和の継承も危うくなってきている現状である。
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★アメリカ人アレックス・カー氏の助言を契機に、山岳集落を形成している古民家や段畑、古く独特な生活様式、伝説や伝統文化を地域の有力な資源として捉え直し、これらを活用した新たな滞在体験型の歴史観光コミュニティビジネスを構築・実践を通じて、地域の活性化と文化の継承、山岳集落の維持再生を目指しておられる。
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★これまでの取り組み
平成20年度、三好市と地域で活動している各種団体、地域NPO法人、観光振興団体、まちづくりコンサルティング企業等が結集して「三好市東祖谷平家落人伝説歴史観光まちづくり実行委員会」設立し、平成20・21年度の2ヵ年にわたり、内閣府所管の「地方の元気再生事業(提案型ソフト事業)の支援を受け、地域資源を活かした歴史観光まちづくりに関する調査事業を実施した。主な実施内容としては、空き古民家の調査、伝統文化や郷土料理の調査、それらの利活用方法の検討などを調査研究された。
平成22年度に国指定重要伝統的建造物群保存地区「落合集落」内にある空き家3棟の実施設計に着手。
平成23年度には国土交通省所管の社会資本整備総合交付金「空き家再生等推進事業」を活用し、三好市東祖谷落合滞在型観光施設3棟《浮生(ふしょう)、晴耕(せいこう)、雨読(うどく)》を、平成25年度には前述の交付金に併せて、文化庁の国宝文化財等保存整備補助金を活用し3棟《雲外(うんがい)、蒼天(そうてん)、悠居(ゆうきょ)》追加整備された。
平成24年4月1日「浮生」、同年7月1日「晴耕」「雨読」の3棟がオープンし、平成26年6月1日「雲外」「蒼天」「悠居」が追加オープンされた。
また、本年度2等の追加整備もされており、平成27年度には合計8棟での運営を予定されています。
★滞在体験型施設として再生のコンセプトと実際のメニュー
1)再生のコンセプト
空き家再生の基本コンセプトは「昔ながらの趣を最大限に残しながらも現代人でも快適に滞在できる設備を整える」こと。
当該物件は、重要伝統的建造物群保存地区の特定物件に指定を受けている為、外観部分に関しては重伝建保存ガイドラインに沿った創建当時に近づけた改修をした。
建物内部については、古い趣は残しながらえエアコンや床暖房、最新の水回りなど快適装備を整えた。
改修にあたっては、京都の町や長崎県小値賀町の古民家を宿泊施設に再生するプロジェクトで実績のある、東洋文化研究者で国のビジットジャパン大使でもある「アレックス・カー氏」にプロデュースをしてもらっておられます。
アレックス氏の「古い物の中に新しいモノを取り入れる。それが伝統を守る道である」というヨーロッパ的考えを基本に改修した。
2)実際のメニュー
お客様には暮らすように滞在して頂くため、茅葺民家ステイは古民家1棟を1グループ貸切でご利用していただく。
お客様それぞれがご自分の滞在スタイルをお持ちであるので、運営団体の事務局はお客様の要望に合わせた滞在メニューを調整している。
例えば、祖谷のそば打ちを味わいたいというお客様には地元のそば打ち名人を、集落内を散策して歴史を知りたいお客様には集落案内ガイドを手配する。
この様に運営団体の事務局はコンシェルジュ的な役割を果たし、地域住民がお客様の希望を叶えるサービス提供者となっている。
★利用料金
2名利用素泊まり1名あたり
平日で11,000円~16,000円
特定日で14,000円~20,000円
と、お高い料金になっていますが、お泊りになられたお客様の評判は上場で、リピーターも有るとのこと。
◎平成25年度 3棟運営
○利用実績
利用グループ数 409組 利用者数 1086人
1利用あたり 2,6人 平均稼働率 37,4%
○地域別利用者比率
① 関 東 27,5% ⑥ 東 海 5,1%
② 関 西 27,3% ⑦ 九 州 2,4%
③ 四 国 20,2% ⑧ 北海道 2,2%
④ 中 国 6,3% ⑨ 甲信越 2,2%
⑤ 海 外 5,8% ⑩ 東 北 1,0%
*冬季営業はしていますが積雪が多くお客様の来訪が困難で開店休業状態になる。
冬季のタクシー料金の片道負担サービスも検討している。
まだ全体整備計画の7割程度が終わった段階で、運営もプレオープン状態であるとのこと。
ではあるが、今まで宿泊者が0であった地域に1000人を超えるお客様にお泊り頂けた事は一定の成果である。
今後の目標として、8棟運営で年間3000人のお客様をお迎えできればと計画している。
この施設を整備している落合集落は、市の中心部から山間部に向けて車で1時間30分をもかかるアクセス環境の非常に悪い地である。
そのような場所でも、他所になく魅力的な施設を整備さえすれば、全国各地から、ひいては世界からもお客様にお越しいただけるという事が実証できたことも一定の成果であると考えられる。
★所見
三好市のこの事例は、国定公園・平家落人伝説・築二百年以上の古民家等々で、改修資金源においても国の補助金 国宝重要文化財等保存整備費補助や社会資本整備総合交付金事業 空き家再生等推進事業などを活用することができた。
三田市の場合、条件が違いすぎるため難しい面もある。
しかし三田市は、大阪・神戸・阪神間という大消費地に近く、農産品の供給だけではなく、ふるさと体験ができる観光という観点からも需要は多く、やり方次第では観光収入・雇用・地域活性化など大いに期待できると考えます。
三田らしい農業・林業等を活用した観光資源の創造はできると考えます。
是非、地域住民・行政・議会等が協働して前向きに検討すれば、実現可能であると確信しています。
三田市の10年先・20年先を見据え、魅力ある三田市になるために、今、地方創生、一緒に頑張りましょう。