☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 二人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」
十一話(Messiah)現在
惑星メサイア
あれから半年が過ぎた。
敵の動きは無かった。
キースが惑星ノアの大統領選に勝利し、元首となり、やがて、ノアでは共和制がしかれた。
大きな問題もなく少しずつ人類が変わりだした。
何年もかけてキース達が準備していた事が、今やっと芽を出しつつあった。
惑星ノアは人類の首都星だが、メサイアから近い事もあってミュウが多く移住していた。
その為、ミュウの戦艦の三隻の内、戦艦エラはノアに常駐していた。
アルテメシアには戦艦ブラウが常駐。
太陽系、木星上空の衛星都市メティスに戦艦ゼルが配置してあった。
スメールで暮らすジョミーの元に、トォニィから空港の完成とツェーレンの妊娠報告がきていた。
そんな嬉しい報告の中、ジョミーはメサイアを赤く染める炎の悪夢を毎晩見ていた。
「まるでナスカのような…」
予知能力はフィシスに渡していてもう無いのに、あの悪夢が浮かぶ…。
「これは、ただの夢だ。僕の不安が見せる夢。予知などでは無い…恐れるな。起こさせやしない。必ず止めてみせる」
そう僕は自分に言い聞かせた。
やがて彼女がタロット占いをはじめる。
ジョミーとフィシスはスメールを飛び立ちメサイアへ向かった。
「メサイアを守って、フィシス」
キースは星間での不穏な動きを察知して軍を動かし始めた。
メサイアを目前にしてジョミーは思う。
問題はメギドを使って我々ミュウをまた虐殺し、再び混乱した世界を敵がどうしてくるか…。いいや違う。そうなってはいけない。
やっと安定し始めた世界を再び動乱の渦に巻き込ませてはいけない。
僕らミュウが虐殺される事、あの星メサイアがメギドで焼かれる事、それがもし起きてしまっても、それはほんのきっかけでしかない。政府転覆を狙う彼らはその先を混沌へと落としてしまう。
メギドを撃たせてはならない。そうなったらもう遅い、それを止めるその為に、僕らは今まで探ってきたんだ。
きっとキースは不安の種を見つけてくれる。
キース、人類は任せた。
敵がメギドを盗んだ訳は、敵として「やっかいなミュウ」の目をそこに向ける為。
メギドは「僕」を釣る餌だ。
メギドが動く時、それがこの戦いの始まり。
大丈夫だ。キース。
僕は今度はちゃんと彼らの罠にかかるから、僕はここで起きる悲劇を止める。それが僕の役目。
メサイアのフィシスの予言によって、トォニィがミュウ達の避難を秘密裏に進める中、軌道衛星ステーションにいる僕にセルジュから連絡が入った。
「お久しぶりです。ジョミー。至急お知らせしたい事があります。惑星ノアでメギドの痕跡がありました。敵の本当の狙いは、やはり首都ノアと予想されます。メサイアの方はどうですか?」
「避難をはじめています。ミュウはトォニィに任せましょう」
「はい。了解しました。それと、今回発見されたのですが…。知っていると思いますが、ノアにはミュウを研究する機関のありました。大戦後、そこは破棄されました。ですが、一部の研究者はそのまま研究を続けていたようです…それで…そこには、戦時中医師として参加していた者がいたという事です」
「セルジュ。それは僕のDNAをそこが入手していたって事ですね。五年前のあの時に」
「そうなります」
「彼のもでしょうか?」
「はい。多分」
「わかりました…予測通りですね」
ジョミーは諦めたように目をふせた。
「あの、ジョミー」
セルジュが心配そうに声をかける。
「…セルジュ」
「……」
「セルジュ。敵の旗艦がこちらに着く時間の計算をお願いします」
「それは彼等がメギドと共にそちらに向かうという…」
「はい。メギドは僕らミュウがとても恐れる兵器です。脅しであればいいが、多分撃ってくる。それでも、メギドと彼らは僕が止めます」
「あの…本当に一人でですか?彼らはタイプブルーなんですよ」
「今の僕にとってはタイプは、そう問題ではないんです。問題は、彼等がどう生きているか、彼らが何を思っているかです。そこを思うと人類が到底、無事に扱える代物とは思えない。まぁ、直接会ってみない事にはわかりませんが…」
「…了解しました。くれぐれも無理はしないようにして下さい。無事を祈ります。メギドの計算gs出ました。推測ですが、最短で十五時間後に到達します」
「十五時間…。ありがとう。僕は大丈夫だ。心配はいらない。セルジュ。君は君達の人類を守ってくれ」
「了解しました」
通信はここで終わった。
キースの言った通りにメギドは空港がありメサイアの首都で一番人口の集まるこの場所へ衛星ステーション上空に現れるだろう。
僕は衛星ステーションから下を見下ろす。
「避難はギリギりか…」
今すぐにでも降りて行って一人でも助けたい気分に駆られる。
敵のミュウなら、僕がどこに居るのかは感知出来るはず、僕はここを動けなかった。
「トォニィ、皆を頼む」
ジョミーは祈った。
一時間前、フィシスの予言が出た頃に、キースから通信があった。
「ノアは敵の主力がくる可能性が高い。ノア空域には私が出る。メサイアにセルジュを行かせよう」
「ペセトラ基地でも何か起きるかもしれないのに彼を出しては手薄になってしまう。ミュウが逃げおおせても、人類が崩れたら、勝利はない」
「大丈夫だ。心配はいらない」
「キース。ペセトラには戦艦エラがいる。参加させて欲しい。敵に睨みくらいは利かせられるだろう。こちらは地球の空域にゼル、アルテメシア空域にブラウを配置した。この拠点はこちらで必ず守り抜く。出せる戦力が少なくて申し訳ない…」
「了解した。戦力に関してはお前が謝る事ではない。お前達は戦う為に存在する(いる)わけじゃない。せっかく安定してきたメサイアを捨てるような無理をさせるのはこちらだ。これはもともと、人類の争い。彼等は、ミュウを排除すれば自分達の勝利だと誤解している。そう思われていた方がこちらは動きやすかった。そこを利用させてもらっただけだ。ミュウやお前を囮に使ってすまない」
ジョミーが人間側で暮らして五年。
特に軍事関係に所属してみて思ったのは、大戦中、僕達の時もこうして隠れながら動いていた事が全部では無いにしてもわかっていたんだなと言う事と、宣戦布告をして布陣を広げる僕らに対してそれを打開する手立てもあったという事実。
それをしないで「地球」での総力戦に持ち込んだのはキースの覚悟だっだ事がわかった。
キースは、あの戦いで人類にどう生きていくべきかを教えた。生きる事を自分達で考えるようにと、戦争という残虐な陣取り合戦の末に、自分達の命の価値を知って生きていけるようにとしたんだ。
でもそれは容易ではなく…、結果として僕達の事を戦いの必然性をマザーの意思であると公表したんだ。
『人間はこのままではいけない』と知らせた。
大戦から六年、人類はいまだ混乱の中にある。
マザーという支えをなくし、ミュウはもう人類の敵ではなくなった。
急激過ぎる変革の前には政局を握ろうと思う者が出てくる。
そういう者達が「マザー信奉者」を煽っているのもわかっている。だから綿密な包囲網が必要だっだ。
しかし、キース。
戦況は蓋を開けてみないとわからない。
前の大戦時にスウェナがやっていたような地下放送で人類が蜂起したように。
マザー信奉者がこちらの読みより多かったら、戦場で勝っても負けた事になる。
そうなったら、彼等に組する空域も出るだろう。
何も知らずに、変革を望まぬように飼い慣らされた人類は元の体制に戻る事を選ぶのか。
再び自分達で歩き出すのを選ぶのか。
人類は僕らを受け入れた。
今度はどう生きるのかを選ぶ時だ。
僕達はそれを見守るだけ。
僕達ミュウは囮の役を果たしたら、ただ自分達を守って無事に逃げ切ればいい。
そうさ、僕らは逃げる事には慣れている。
人類が逆行するなら僕達はまた逃げるだけ…。
何か不測の事態が起きてもソル太陽系「地球」は抑えてある。
また僕らは「地球」を目指せばいい。
「薄情かもしれない。だけど、キース。僕は…」
的確なフィシスの予知に助けられて避難が進む惑星メサイア。
僕は前のソルジャー服に着替えた。
「そろそろか…」ジョミーはつぶやいた。
続く
<用語>
木星軌道上の衛星都市メティスのビルレスト 二人が住む建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」
十一話(Messiah)現在
惑星メサイア
あれから半年が過ぎた。
敵の動きは無かった。
キースが惑星ノアの大統領選に勝利し、元首となり、やがて、ノアでは共和制がしかれた。
大きな問題もなく少しずつ人類が変わりだした。
何年もかけてキース達が準備していた事が、今やっと芽を出しつつあった。
惑星ノアは人類の首都星だが、メサイアから近い事もあってミュウが多く移住していた。
その為、ミュウの戦艦の三隻の内、戦艦エラはノアに常駐していた。
アルテメシアには戦艦ブラウが常駐。
太陽系、木星上空の衛星都市メティスに戦艦ゼルが配置してあった。
スメールで暮らすジョミーの元に、トォニィから空港の完成とツェーレンの妊娠報告がきていた。
そんな嬉しい報告の中、ジョミーはメサイアを赤く染める炎の悪夢を毎晩見ていた。
「まるでナスカのような…」
予知能力はフィシスに渡していてもう無いのに、あの悪夢が浮かぶ…。
「これは、ただの夢だ。僕の不安が見せる夢。予知などでは無い…恐れるな。起こさせやしない。必ず止めてみせる」
そう僕は自分に言い聞かせた。
やがて彼女がタロット占いをはじめる。
ジョミーとフィシスはスメールを飛び立ちメサイアへ向かった。
「メサイアを守って、フィシス」
キースは星間での不穏な動きを察知して軍を動かし始めた。
メサイアを目前にしてジョミーは思う。
問題はメギドを使って我々ミュウをまた虐殺し、再び混乱した世界を敵がどうしてくるか…。いいや違う。そうなってはいけない。
やっと安定し始めた世界を再び動乱の渦に巻き込ませてはいけない。
僕らミュウが虐殺される事、あの星メサイアがメギドで焼かれる事、それがもし起きてしまっても、それはほんのきっかけでしかない。政府転覆を狙う彼らはその先を混沌へと落としてしまう。
メギドを撃たせてはならない。そうなったらもう遅い、それを止めるその為に、僕らは今まで探ってきたんだ。
きっとキースは不安の種を見つけてくれる。
キース、人類は任せた。
敵がメギドを盗んだ訳は、敵として「やっかいなミュウ」の目をそこに向ける為。
メギドは「僕」を釣る餌だ。
メギドが動く時、それがこの戦いの始まり。
大丈夫だ。キース。
僕は今度はちゃんと彼らの罠にかかるから、僕はここで起きる悲劇を止める。それが僕の役目。
メサイアのフィシスの予言によって、トォニィがミュウ達の避難を秘密裏に進める中、軌道衛星ステーションにいる僕にセルジュから連絡が入った。
「お久しぶりです。ジョミー。至急お知らせしたい事があります。惑星ノアでメギドの痕跡がありました。敵の本当の狙いは、やはり首都ノアと予想されます。メサイアの方はどうですか?」
「避難をはじめています。ミュウはトォニィに任せましょう」
「はい。了解しました。それと、今回発見されたのですが…。知っていると思いますが、ノアにはミュウを研究する機関のありました。大戦後、そこは破棄されました。ですが、一部の研究者はそのまま研究を続けていたようです…それで…そこには、戦時中医師として参加していた者がいたという事です」
「セルジュ。それは僕のDNAをそこが入手していたって事ですね。五年前のあの時に」
「そうなります」
「彼のもでしょうか?」
「はい。多分」
「わかりました…予測通りですね」
ジョミーは諦めたように目をふせた。
「あの、ジョミー」
セルジュが心配そうに声をかける。
「…セルジュ」
「……」
「セルジュ。敵の旗艦がこちらに着く時間の計算をお願いします」
「それは彼等がメギドと共にそちらに向かうという…」
「はい。メギドは僕らミュウがとても恐れる兵器です。脅しであればいいが、多分撃ってくる。それでも、メギドと彼らは僕が止めます」
「あの…本当に一人でですか?彼らはタイプブルーなんですよ」
「今の僕にとってはタイプは、そう問題ではないんです。問題は、彼等がどう生きているか、彼らが何を思っているかです。そこを思うと人類が到底、無事に扱える代物とは思えない。まぁ、直接会ってみない事にはわかりませんが…」
「…了解しました。くれぐれも無理はしないようにして下さい。無事を祈ります。メギドの計算gs出ました。推測ですが、最短で十五時間後に到達します」
「十五時間…。ありがとう。僕は大丈夫だ。心配はいらない。セルジュ。君は君達の人類を守ってくれ」
「了解しました」
通信はここで終わった。
キースの言った通りにメギドは空港がありメサイアの首都で一番人口の集まるこの場所へ衛星ステーション上空に現れるだろう。
僕は衛星ステーションから下を見下ろす。
「避難はギリギりか…」
今すぐにでも降りて行って一人でも助けたい気分に駆られる。
敵のミュウなら、僕がどこに居るのかは感知出来るはず、僕はここを動けなかった。
「トォニィ、皆を頼む」
ジョミーは祈った。
一時間前、フィシスの予言が出た頃に、キースから通信があった。
「ノアは敵の主力がくる可能性が高い。ノア空域には私が出る。メサイアにセルジュを行かせよう」
「ペセトラ基地でも何か起きるかもしれないのに彼を出しては手薄になってしまう。ミュウが逃げおおせても、人類が崩れたら、勝利はない」
「大丈夫だ。心配はいらない」
「キース。ペセトラには戦艦エラがいる。参加させて欲しい。敵に睨みくらいは利かせられるだろう。こちらは地球の空域にゼル、アルテメシア空域にブラウを配置した。この拠点はこちらで必ず守り抜く。出せる戦力が少なくて申し訳ない…」
「了解した。戦力に関してはお前が謝る事ではない。お前達は戦う為に存在する(いる)わけじゃない。せっかく安定してきたメサイアを捨てるような無理をさせるのはこちらだ。これはもともと、人類の争い。彼等は、ミュウを排除すれば自分達の勝利だと誤解している。そう思われていた方がこちらは動きやすかった。そこを利用させてもらっただけだ。ミュウやお前を囮に使ってすまない」
ジョミーが人間側で暮らして五年。
特に軍事関係に所属してみて思ったのは、大戦中、僕達の時もこうして隠れながら動いていた事が全部では無いにしてもわかっていたんだなと言う事と、宣戦布告をして布陣を広げる僕らに対してそれを打開する手立てもあったという事実。
それをしないで「地球」での総力戦に持ち込んだのはキースの覚悟だっだ事がわかった。
キースは、あの戦いで人類にどう生きていくべきかを教えた。生きる事を自分達で考えるようにと、戦争という残虐な陣取り合戦の末に、自分達の命の価値を知って生きていけるようにとしたんだ。
でもそれは容易ではなく…、結果として僕達の事を戦いの必然性をマザーの意思であると公表したんだ。
『人間はこのままではいけない』と知らせた。
大戦から六年、人類はいまだ混乱の中にある。
マザーという支えをなくし、ミュウはもう人類の敵ではなくなった。
急激過ぎる変革の前には政局を握ろうと思う者が出てくる。
そういう者達が「マザー信奉者」を煽っているのもわかっている。だから綿密な包囲網が必要だっだ。
しかし、キース。
戦況は蓋を開けてみないとわからない。
前の大戦時にスウェナがやっていたような地下放送で人類が蜂起したように。
マザー信奉者がこちらの読みより多かったら、戦場で勝っても負けた事になる。
そうなったら、彼等に組する空域も出るだろう。
何も知らずに、変革を望まぬように飼い慣らされた人類は元の体制に戻る事を選ぶのか。
再び自分達で歩き出すのを選ぶのか。
人類は僕らを受け入れた。
今度はどう生きるのかを選ぶ時だ。
僕達はそれを見守るだけ。
僕達ミュウは囮の役を果たしたら、ただ自分達を守って無事に逃げ切ればいい。
そうさ、僕らは逃げる事には慣れている。
人類が逆行するなら僕達はまた逃げるだけ…。
何か不測の事態が起きてもソル太陽系「地球」は抑えてある。
また僕らは「地球」を目指せばいい。
「薄情かもしれない。だけど、キース。僕は…」
的確なフィシスの予知に助けられて避難が進む惑星メサイア。
僕は前のソルジャー服に着替えた。
「そろそろか…」ジョミーはつぶやいた。
続く